今月7日、アメリカのフロリダ州のイベントで展示されていた超高額のアート作品が、公衆の面前で食べられた!というニュースが物議をかもしている。
その作品はダクトテープで壁に貼られた1本の本物のバナナ。なのに価格は12万ドル(約1300万円)もするのだ。
「コメディアン」と題された作品は、素人目には価値を見出しにくいものの、展示初日の5日から多くの人が一目見ようと押しかけるほどの人気だった。
が、その貴重なバナナがあるアーティストにペロリと食されてしまったのだ。
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テープで貼っただけのバナナが1300万円?
これはイタリアの芸術家マウリツィオ・カテラン氏による「コメディアン」という作品で、今月5日からマイアミで開かれたArt Baselというイベントに出展されていた。
出展当時の「コメディアン」
この作品はフランスのパリのギャラリーペロタンが販売し、フランスのアートコレクターが12万ドル(約1300万円)で購入。さらに驚くべきことに同様の2作目も同価格で売れた。
この売れ行きに歓喜していたペロタンのオーナーは、同様の3作目はさらに価格をつり上げ、15万ドル(1600万円)で販売すると豪語。現地メディアも大きく報じていた。
Banana Duct Taped To Wall Selling For $120K At Art Basel
形があるものの価値に疑問を呈する作品
作品は見ての通り、壁にダクトテープで固定された本物のバナナで構成されている。
ギャラリーペロタンによると、この作品の意図は、このオブジェクトが世界をどう移動するのかを鑑賞者に考えさせることだという。
ブースの壁に貼られていようと、ニューヨークポストの表紙に飾られていようと、彼の作品は、形があるものの価値について疑問を投げかけます。この光景はそのバナナと同等な作品の一部なのです
カテラン氏が考え抜いて選んだバナナ
事件が起こる前、わずか2本のバナナを合計2,600万円で売ったオーナーは得意げにこう語っていた。
我々はあのバナナを売り切りました!奇跡です。どうしてこんなことが起こったのかわかりません!カテラン氏はアートの世界でふざけた人物と思われがちですが、現にこのような状況をまねく彼の作品はジョークで片付けられるものではないといえるでしょう。
「コメディアン」はカテラン氏が昨年ひらめいたもので、アートとしての側面を検討するため、バナナの形状や、ダクトテープに貼る際のアングル、壁自体の大きさなど、あらゆる点に多くの時間を費やしたと伺っています。
氏は当初、本物のバナナでなく偽のバナナを使用することも考えました。旅行するたびにバナナを持ち帰り、インスピレーションを得るためにホテルの部屋にバナナを吊るしました。
さらにいくつものモデルを作り、樹脂からブロンズ、塗装したブロンズ製のバナナまで試したのち、本物のバナナという初期の概念を採用したんです。
こっちが気になるのは12万ドルという値段に落ち着いた理由なのだが、彼らにとって最も気がかりだったのは作品のバランスだったようだ。
自撮り客が列をなす人気の展示に
かくして異様な価格に納得できない多くの人をよそに、このアートは脚光を浴びた。
翌日も記録的な人気を博し、自撮り目当ての人々が列をなすほどになったが、主催者はこの高価な作品が盗まれることなど気にしていないようだった。
まさか!?アーティストがバナナを完食!
しかしわずか2日後、そんな目玉が出るほど高価なバナナがなんと公衆の面前で食べられてしまったという驚愕のニュースが報じられた。
今月7日、午後1時にアメリカのパフォーマンスアーティストであるデビッド・ダトゥナ氏が、アート愛好家であふれかえるイベント会場であのバナナを完食してしまったのだ。
しかもその様子をデビッド・ダトゥナ氏自身がインスタでシェア。自称「空腹アーティスト」の彼はこの作品をとても気に入り、パフォーマンスの一環として食べたとのこと。
1,300万円相当のバナナはとてもおいしかったそうだ。
人々の前でダクトテープをはがし
あっという間にバナナを食べるダトゥナ氏
その後、人だかりに撮影されながら
動揺したスタッフなどから事情を聴かれるシーンも
ギャラリーの関係者らしき人物も登場
その場を収めようとしているようだ
バナナは概念。別なバナナで展示続行
さて、ギャラリーペロタンはこの事態をどう受け止めているのか?7日付けの海外メディアによると広報はこうコメントしているそうだ
「バナナは概念」であり、ダトゥナ氏は作品を「破壊したのではない」
そんな流れで騒動はひとまず収まり、展示は終了…と思いきや、なんとその日のうちに代わりのバナナが再び貼られたそうだ。
てか、そんなに手軽でいいのかよ!?っていう…こういう疑問も作品の意図のうちに入るのか?
結局展示は中止。理由は安全性の問題だというが…
ちなみに奇抜で知られるマウリツィオ・カテラン氏の作品がトラブルに見舞われるのはこれが初めてではない。
2017年、カテラン氏は実際に使える18金製の黄金のトイレ「アメリカ」を披露、トランプ米大統領に貸し出すなどとコメントして世間をにぎわせた。が、600万ドル(約6億5000万円)相当とも言われるそのトイレは、今年9月イギリスのブレナム宮殿に展示された際に盗まれたままだ。
てなわけで、未だどこに価値を見出せばよいかわからぬままだった超高額アートは、パフォーマンスアートという芸術の名のもとに(皮以外は)余すことなく昇華され、その後の展示は次のバナナが引き継ぐことになった。
と思いきやさらに翌日、ペロタンギャラリーのインスタに「コメディアン」展示中止の投稿が。
理由は「作品の安全性が損なわれたから」というもので展示を見れない人にも謝罪を行っている。
まあ壊されたり、盗まれるよりははるかにマシだったわけだが、芸術とはこんなに雑で適当でいいもの?ってモヤモヤが当のギャラリーにも通じたのかもしれないな。
References: cbsnews /written by D/ edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52285451.html
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