リーグ戦の1試合平均得点は歴代ワースト2位、得失点差が二桁マイナスは99年以来

 浦和レッズは今季のJ1リーグを勝ち点37の14位という成績で終えた。今季はオズワルド・オリヴェイラ監督の下でスタートを切り、シーズン途中に大槻毅監督に交代したが、攻守ともに課題を解決しきれないままシーズンを終えた。

 最終成績は9勝10分15敗、34得点50失点で得失点差はマイナス16だった。1試合平均得点「1.00」は1993年Jリーグ開幕初年度、10チームでスタートした年の年間36試合で8勝しかできなかったシーズンの「0.72」に次ぐ低さだった。得失点差がマイナスで終わるのも、今季同様に最終節でJ1残留を確定させた2011年以来のこと。年間でのマイナスが二桁となったのは、1993年、94年、J2に降格した99年以来。クラブ史上でも、相当に苦しんだシーズンだったと言えるだろう。

 攻撃力不足は、5月末の監督交代で就任した大槻監督も「改善しきれなかった」と話した。特に「ボールを握りたい」という意向を反映するだけのビルドアップ時の方法論を、チームとして確立できなかったと言える。今季、欠場の時期が長かったMF柏木陽介は、「距離感も良くないし、コンビネーションもまだ課題が。誰が動いたら、どこに誰が動くとか、そういう共通認識が必要なのかなと。それをやっていければ連動性や攻撃も改善されていく」と話した。これは、11月1日の第30節鹿島アントラーズ戦(0-1)後のことだ。

 シーズン開幕直後の3月や4月、あるいは新監督という点で就任2カ月までの段階でのコメントであれば、どこか仕方ない部分もあるだろう。しかし、残り1カ月強しかない時期にこうした言葉が出てくるというのが、組織としての機能性を高められなかったことを如実に示している。確かに最終局面で、FW興梠慎三を除く選手たちの仕留める質が高くなかったのも事実だが、そもそも決定機、あるいは大きなチャンスと感じられるところまで攻撃が進む回数があまりに少ない。これでは、得点力不足となるのは自然なことだ。

 一方で、その攻撃の質が上がらないことが失点増加にもつながった。選手たちは、大槻監督が「相手の長所を消して、自分たちの良さを出そうとする」指揮官だという印象を話していた。そのなかでも「できるだけ前からプレッシャーをかけたい」という意思は、基本的なものだった。

ACL中国勢の“外国人頼み”が、浦和のバランスの悪さを助けた

 しかし、攻撃の終わり方が悪いうえに、例えば最終ラインのDF鈴木大輔の言葉を借りると「前が制限できていない時でも、中盤が出ていってしまう」ようなバランスの悪さで、裏返されてしまう。最終ラインが、相手のアタッカーがスピードに乗った状態で対応させられる場面が多くなった。この構図はラスト2試合の第33節FC東京戦(1-1)や第34節ガンバ大阪戦(2-3)でも、何度も繰り返された。

 もちろん、相手にボールを持たれるとブロックを作って守ることになるが、そこからは前述したマイボールの質の低さが顔を出す。最終ラインでようやくボールを奪っても、そこから前進させるところに共通理解や質が伴わないことで、相手の中盤までのラインを越えられずに、結果的に自陣で押し込まれる状態を脱しきれない。これは、特に横浜F・マリノス川崎フロンターレヴィッセル神戸といったボール保持が上手いチームとの対戦時によく見られた。

 浦和は今季、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では2年ぶり3回目の決勝進出という結果を残した。東アジア、特に中国勢に対しては国内リーグの3強(北京国安、上海上港、広州恒大)をすべて破った。しかし、彼らの持つ強力な外国人選手たちは、攻守の切り替えや浦和ボール時のプレスに熱心ではない。それが、浦和のビルドアップが機能しないところを助けた面は大きい。

 そして浦和の3バックは、個の1対1で相手を抑え込む能力は非常に高い。中国勢が特に連動することもなく、前に預けて任せるタイプの攻撃だったことも守備面のバランスの悪さを隠した。

 浦和にACL制覇へ懸ける強い思いがあったのは事実だが、低迷するリーグ戦との成績が噛み合わない理由には、ピッチ上の理由もきちんとあったと言える。それは前線の個の能力に加えて、組織力も兼ね備えたアル・ヒラル(サウジアラビア)との決勝では、手も足も出ない試合内容だったことからも明らかだろう。

立ち返るべきチームの“幹”を確立しなくては「危機感」は現実のものに…

 大槻監督は事前のスカウティングから相手の良さを消す、相手の弱点を突こうという準備を各試合で繰り返してきた。しかし、その根本のところにあるニュートラルな状態の時に、チームがどのように試合を進めていくかという部分が最後まで定まらなかった印象が強い。それでは、安定感のある試合運びや成績は望めないだろう。

 浦和はすでに大槻監督の来季続投を発表している。トップカテゴリーにおける正式な監督として、トレーニングキャンプからチームを作るのは初めてのことだ。よく大槻監督は記者会見で「サッカーには相手がある」という言葉を用いた。それは間違いなく、大事な要素の一つでもあるが、立ち戻るべきチームのベース、試合ごとに枝葉を変化させる前の幹の部分を確立しなければ、DF槙野智章が「このままでは来季も残留争いになる」という危機感は現実のものになってしまうのではないだろうか。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

ACLでは決勝に進みながらも、リーグ戦では思うような結果を出せず【写真:Getty Images】