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Ewa Urban from Pixabay

 プラセボとは偽薬や偽治療のことで、薬効成分が含まれていない薬を処方したり、治療をしていないのに治療したかのように見せる行為である。

 人間とは不思議なもので、プラセボ(偽薬・偽治療)にもかかわらず実際に健康状態が良くなる場合がある。これはプラセボ効果と呼ばれている。

 病は気からというが、治療をしているという事実が症状を緩和させていることもあるのだろう。実際に海外の医師は、患者の不安を和らげるためにプラセボを処方することがよくあるのだそうだ。

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オーストラリアでは多くの医師がプラセボを処方

 『The Australian Journal of General Practice』(12月付)に掲載されたオーストラリアの調査研究では、130名以上のかかりつけ医に対して不活性プラセボ(医学的な作用のないもの)か、活性プラセボ(医学的な作用があるが、患者の症状とは関係のないもの)のいずれかを処方したことがあるかどうか質問した。

 すると医師の39パーセントが1度以上不活性プラセボを処方したことがあると回答し、その多くは生理食塩水入りの鼻腔スプレーとスキンクリームであることがわかった。

 さらに活性プラセボとなると、なんと77パーセントが「ある」と回答しており、そのうち40パーセントは月に1度以上定期的に処方していることまで判明した。

 なお、活性プラセボとして処方されるのは、抗生物質(42パーセント)、ビタミン/ミネラルサプリメント(17パーセント)、ホメオパシーのような代替医療(10パーセント)がもっとも一般的だった。

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Image by Alla Bondarenko/iStock

アメリカやドイツでは更に多くのプラセボが処方されていた


 だが、これは事実のほんの一部分に過ぎない。他の国でもプラセボは多用されているのだ。

 たとえばアメリカの内科医とリウマチ専門医を対象にした2008年の調査では、ほぼ半数が定期的にプラセボを処方していることが明らかになっている。

 さらに2012年のドイツの蝶さでは88パーセント、イギリスの2013年の調査では、じつに97パーセントの医師が1度はプラセボを処方したことがあると答えているのだ。

 全体としては、地域やプラセボの種類にもよるが、17~80パーセントの医師がプラセボを使用しており、プラセボとは想像以上に一般的なものであることがよくわかる。

病は気からは本当だった?

 オーストラリアで調査を行ったシドニー大学のグループは、プラセボの使用について理にかなったことだと指摘している。

 単なる風邪や胃の痛みといった症状は、どのような治療を行っても治りが早くなったりはしないのがしばしばだ。ところが、プラセボを使うと実際に気分を良くすることができるのだ。

 だが、事前にわざわざプラセボと伝えてしまえば、患者はそれを飲んでくれないかもしれない。効くと信じているからこそ効くのがプラセボ効果というものだろうからだ。

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Image by megaflopp/iStock

わかっても効いてしまう不思議なプラセボ効果


 一方で、患者に嘘をつくのは医療倫理の観点から望ましいこととは言えない。実際、オーストラリアの医師たちの80パーセントが、プラセボの処方は患者に効果がないだろう旨を伝えてある場合に限ると回答している。

 またアメリカの医師会では、プラセボの処方に関するガイドラインを策定しており、それを処方する際は患者にきちんと伝えるべきで、厄介な患者をなだめるための目的で使用してはいけないとしている。

 それではプラセボなど意味がないではないかと思うかもしれない。だが、世界中の製薬会社を悩ませるプラセボ効果はそんな生やさしいものではない。

 というのも、驚いたことに、少なくとも特定の症状については、プラセボと知りながら飲んでもちゃんと効くという証拠がどんどん増えているからだ。

 ではなぜ偽薬なのに効果があるのだろう?その具体的なメカニズムは不明だ。

 だが、騙されたつもりでプラセボを飲んで、本当に効いてしまうのなら、薬を飲むよりなんの変哲もない砂糖の錠剤の方が大いに結構と思ってしまうのだが、どうだろうか?

References:eurekalert/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285415.html
 

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