16世紀から18世紀の始めまでヨーロッパ(主にスペイン)を統治していたハプスブルク家の王や王妃には、特徴的な顔の変形がある者が多かった。のちに「ハプスブルクの顎(あご)」と呼ばれるようになる長くしゃくれた顎だ。
最新の研究によって、この特徴は長きに渡る近親交配の影響が大きいらしいということがわかった。
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近親交配が繰り返されたハプスブルク家
スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の発生学教授のローマン・ヴィジャスは言う。
「ハプスブルク王朝は、ヨーロッパでもっとも影響力のあった家系のひとつでした。でも、この家系は近親結婚で有名で、その結果、凋落することになったのです」
1700年、ハプスブルク家最後のスペイン国王、カルロス2世の死により、その栄華は終わりをつげた。近親交配のせいか病弱な王が多く、カルロス2世には跡継ぎがなかったのだ。
近親交配は外見に現れていたのか?ハプスブルク家の肖像画を調査
近親交配の影響は外見にも表れていたのだろうか?その特徴的な顎と関係があるのだろうか?
「ハプスブルク家の顎」が近親交配の結果かどうかを確かめるために、ヴィジャスらの研究チームは10人の顎顔面外科医にハプスブルク家の15人の66の肖像画を分析してもらった。
医師たちは、下顎前突症の11の特徴をあらい出した。また、上顎を形成する骨が未発達の上顎欠損症にみられる7つの特徴も探した。このふたつの条件は関連していて、同じ遺伝子基盤をもつことで「ハプスブルクの顎」が形成されたという仮説は立証された。
さらに、ハプスブルク家の者のそれぞれの顔の変形の程度を数値で表した。1477年に婚姻によりハプスブルク家の一員となったブルゴーニュのメアリ、ブルゴーニュ公爵夫人は、少なくとも下顎前突症だったし、1621~1640年までスペイン、ポルトガルを支配したフェリペ4世も同様の顎の特徴が顕著だった。
上顎欠損症がもっとも見られたのは、1493年から神聖ローマ帝国を皇帝として治めたマクシミリアン一世、彼の娘、甥、甥のひ孫、王家最後のカルロス2世も同じ特徴をもっていた。
近親交配と特徴的な顎に関連性があることを確認
研究チームは、ハプスブルク家の20世代、6000人に渡る巨大な家系図の情報を使って、数世紀の間に起こった近親結婚の数を計算した。
そして、肖像画に見られる顔の変形の程度と近親交配を関連づけて、近親交配と下顎前突症の間に強い関連があることを発見した。
つまり、血のつながりの近い者同士で子どもをつくると、顔の変形がもっとも顕著に表れるということだ。さらに、近親交配は上顎欠損症の高い発生率にもつながることも判明したが、7つの特徴のうち、はっきり診断されたのは2つだけだった。
とはいえ断定はできない
近親交配が、「ハプスブルクの顎」につながりやすいのは、両親の同じ遺伝子の型を受け継ぐ遺伝的同型接合性といわれるもののせいだという。
遺伝的同型接合性は、血のつながりのある者同士で交配することで、より頻繁に発生する。遺伝子を共有する割合が多くなるからだ。
そうはいっても、研究の規模は小さく、必ずしもハプスブルクの顎が明らかに近親交配のせいだとは断定できないという。
この研究は『Annals of Human Biology』に掲載された。
追記(2019/12/12)本文を一部修正して再送します。
References:Facial deformity in royal dynasty was linked to inbreeding, scientists confirm | EurekAlert! Science News/ written by konohazuku / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52285481.html
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