大阪府に住む小学6年生の女児が栃木県で保護され、同県在住の35歳の男が逮捕された誘拐事件。報道によると、女児がTwitterで家庭や学校での悩みを発信し、男からのダイレクトメッセージをきっかけに直接会い、犯罪に巻き込まれたそうです。

Twitter 上では、家出をしたい少女らが「#家出少女」「#神待ち」などのハッシュタグで、宿泊先を探す投稿が数多くあります。中には、少女らを自宅に誘う「泊め男(お)」と呼ばれる、大人の男性と思われる相手からのリプライ(返信)も。

近年、SNSを介した犯罪の被害に遭う未成年者は増加傾向にあります。スマホを持つ子どもの低年齢化が進むとともに、子どものSNS利用も当たり前になってきています。SNS犯罪から子どもを守るために、親ができることは何でしょうか。小中学校で、携帯やインターネットの利用法などについて講演を行う、ITコンサルタントの目代純平さんに聞きました。

SNSが原因で性的被害などを受けた児童の約6割が保護者から注意を受けていなかったという調査結果も。子どもがスマホで何をしているかを知り、親子でルールづくりを

                                               
Q:最近の子どものスマホ所有率やSNSの利用状況を教えてください。
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内閣府の調査によると、10歳~18歳未満の青少年の93.2%がインターネットを利用。そのうち、自分専用スマートフォンの所有率は、高校生99.4%、中学生78%、小学生35.9%です(「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」)。

地域差があり、東京や大阪、福岡などの大都市では、さらに所有率が高くなる傾向があります。また、小学校低学年では、携帯電話を持っていない子どもも多く、持っている場合も、子ども向けの「キッズケータイ」が多いです。
高学年で、通塾などをきっかけに、保護者が「連絡がとれるように」「GPSで居場所がわかるように」と、防犯目的で持たせるようですが、「小学生でスマホは早い」と考える人も少なくありません。

最近では、中学生から「スマホデビュー」という家庭が多くなっています。今では部活の連絡もLINEで行うようになっており、友だちとのやりとりは、LINEが当たり前です。スマホを持っていない子どもは、「連絡が面倒だから呼ばなくていいか」などと敬遠され、リアルな人間関係まで希薄になるという問題も起こっているようです。

Q:今回の誘拐事件では、SNSが原因で犯罪に巻き込まれました。増加傾向にある未成年者のSNS犯罪被害の実態は。
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警察庁の調査では、SNSが原因となる犯罪被害を受けた18歳未満の児童・生徒は、平成30年1811人に上り、高校生の被害が増えています。全体の約4割が、Twitter利用による被害です(「平成30年におけるSNSに起因する被害児童の現状」)。

近年、Twitterは「無法地帯」となっており、大人として責任をもてるようになる18歳までは、使わない方がいいのではとないか思うほどです。

「#神待ち」「#JC(女子中学生の意)」などで検索し、家出少女を物色する大人の男性、大麻や覚せい剤、密売人などを示す隠語のハッシュタグを使い、客を待ち構える違法薬物の売人など、犯罪に直結するつながりを簡単に築くことができます。

膨大な情報量に、警察の取り締まりも追いつかない状況だそうです。

また、学校の相談で多いのは、修学旅行中の寝顔など望まない画像が勝手にインターネット上で拡散されてしまったケースです。Instagramのストーリー機能を使い、「データは24時間で消えるから」と、不適切な動画を気軽に投稿し、消去される前に拡散され炎上する、というケースもあります。

Q:子どものSNS利用。いつから・どんな形で始めるのがおすすめですか。
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だまされたり脅されたりして、裸などの画像や動画を送信させられる「自画撮り被害」の被害者は、大多数が女子中高生です。警察庁の調査では、平成28年の被害者のうち、中学生が一番多く52.7%、高校生が39.2%、小学生が5.8%です(平成29年6月発表)。この結果から、高校生になれば、ある程度危険を察知する力がつくようになるといえます。

だからといって、中学生に「スマホを与えなければいい」という考えは、もはや難しい時代になっています。最初は、LINEで家族だけ、友達だけ、など、利用範囲を限定しておくことも必要でしょう。

Q:子どもがSNSを利用する際に、あらかじめ機種選びやスマホの設定上で、できることはありますか。
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小学生ではキッズケータイ、中学生でスマホと、成長に応じて利用できる範囲を広げることは有効です。

また、携帯電話会社には、子ども用の携帯電話やスマホを契約する際、店頭で「フィルタリング機能」の設定が義務付けられています。アダルト系や出会い系などの有害・不適切なサイトの利用や、TwitterやInstagramなどSNS利用を制限することができます。

また、保護者が端末を管理できる「ペアレンタルコントロール機能」は、フィルタリング機能に加え、利用時間の制限やアプリの管理などを行うことができます。

ただ、どの機能にも、「抜け道」はあります。

例えばLINEを経由して、フィルタリングの対象である有害なサイトの閲覧ができたり、13歳未満は利用禁止としているTwitterも、実際は簡単に登録できたりと、完全に管理することは難しいといえます。

Q:家庭でのルールはどのように決めるといいですか。
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大切なのは、子どもと一緒にルールをつくることです。親が「防犯用」に持たせたとしても、子どもが持ちたい理由は「ゲームがしたい」「LINEがしたい」などが多く、頭ごなしに「これはダメ、これは守るように」と言っても、反発心が生まれるだけです。

特に、「スマホデビュー」となることが多い中学生は多感な時期でもあり、最初が肝心です。「夜10時以降はメールやLINEを送らない」「フィルタリング機能を勝手に外さない」など、子どもと一緒に、子どもも納得する具体的な項目を決めましょう。

Q:SNSでのトラブルを防ぐために、普段から親ができることは。
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子どもがSNS犯罪に遭うかどうかは、親の関わり方が影響するといえる調査結果があります。警察庁の調査では、SNSが原因で性的被害などを受けた児童のうち、サイト利用について保護者から注意を受けていなかった児童は58.3%と約6割を占めます(「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について 平成25年下半期」)。

自ら「痛い目に遭いたい」と思う子どもはいません。SNS上で「#神待ち」を投稿する少女の中には、「殺される可能性があっても、それでも家から逃げる方がいい」という覚悟で、見知らぬ大人に助けを求めている子もおり、複雑な家庭の事情が絡んでいる場合もあるようです。

ただ、SNSで知り合った人と会うことは、重大な犯罪に巻き込まれる可能性も大いにあるということを、過去の事件などを例に、筋道をたてて、子どもに伝えておくことは必要です。

スマホやSNSは、どの家庭にもある包丁と同じで、使い方を知らなければ危険が及ぶ可能性があり、正しい使い方をすれば便利なツールとなるものです。

親が「難しくてよくわからない」とSNSに無関心であったり、親自身がスマホを片時も離せない毎日を送っていたりしては、子どもは正しい使い方を身につけることはできません。日ごろから親子でコミュニケーションをとり、子どもが「スマホやSNSで今、何をしているのか」を知っておきましょう。

(目代 純平/Webコンサルタント

「#家出少女」を狙う泊め男 SNS犯罪に遭った児童・生徒の約4割がTwitter利用者の現実