『第70回NHK紅白歌合戦』へ初出場するアーティスト・LiSA。2019年、多くのリスナーに聴かれ、そして愛された楽曲「紅蓮華」に続き、16thシングル「unlasting」を12月11日にリリースした。今回は彼女の言葉から、本作収録の各楽曲の魅力について迫っていく。

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■ 私の声は、どう頑張っても前向きなんです

――「unlasting」は、TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のエンディングテーマでもあるんだよね。

「そう。最初、アニメ側のリクエストとして、“明るくない曲”と言われたんです。物語的には希望がないっていうことも言われて。たしかに「ADAMAS」から始まった『ソードアート・オンライン』シリーズの最終章って、主人公がずっと暗くて、喋らなくて、ほとんど活躍しないんです。だから、そこにエンディングテーマを付けるってすごく難しいなと思いながら向きあったんですけど、それと同時に、LiSAとして次に歌う曲として、どういう曲がいいかなぁって話をしていて…。華余子さん(草野華余子 /「unlasting」作曲者)と一緒にメロディに添わせながら言葉をどんどん出して、並べていったんです」

――自分の中で歌いたいと思う言葉はあったの?

「ありました。作品のテーマとして、希望がないというところでもあって。でも、私の声って、どう頑張っても前向きなんですよ(笑)」

――あははは。そうね。泣いてないよね(笑)。

「そう。だから、この曲の中で唯一希望を感じるとしたら、私の声だけっていう。そこでようやく前を向いている感じが見えるけど、それ以外は希望がないっていうのが、2人のイメージの共有としていったんです」

――二胡みたいな音色が切ないよね。

「そうなんです! 二胡の音なんですよ、あれ。編曲の段階で入れてくれたんですけど、すごく印象的ですよね。編曲の時に、不安定な感じを匂わせつつ、旋律を大事にしたいっていうことを、とてもこだわってくれて。個人的には、1番と2番の間のシンセとピアノが絡まるところがすごく切なくて好きなんです。ピアノって不思議ですよね。本当に気持ちが入る。坂本龍一さんみたいな雰囲気をもったピアノだから、1番が終わるあたりで、涙が出ちゃうくらいの歌詞を書かなくちゃって思いました」

■ 開けたくない傷を開けて、その時の自分に向き合ってみたくなる

――“どうか貴方もどこかで泣いていますように”っていう歌詞に、その愛の深さを感じた。

「うんうん。同じ気持ちを共有していてほしいというか。単純に会えなくなってしまった人のことを想うんじゃなくて、大事だった人のことを考えながら自分の気持ちを立て直していく時って、すごく時間がかかるし、辛い。そのことを思い返して書いてみたんです。悲しみって時間が経てば癒えるし、傷口は閉じるけど、もともとそこは、すごい勢いで切れてたなぁって」

――そうだね。パックリ切れる感じでね。

「そう。癒えた傷口をもう一回開けて、この時、私は一体どう思っていたんだろう? どうして欲しかったんだろう?って、見てみたくなる。開けたくない傷を開けて、その時の自分に向き合ってみたくなるんです。それで、“あの時、どうでしたか?”って聞いてみたいんです」

――聞き方が明るいから(笑)。

「アハハハ。今、ちょっと聞き方が明るすぎましたね(笑)。でも、開いてみません? せっかく閉じたのに、開けたくなっちゃう感じ」

――ん〜。なくはないかな(笑)。

「せっかく閉じたのにね(笑)」

――せっかく傷口がくっついたんだから、おとなしくしときなさい! 開けない!って感じなのにね。

「そうなんですよね。わざわざね。何回も開けちゃう(笑)」

――そんな何回も開けなさんなよ!

「はーい(笑)」

――でも、そこで、再び傷口を開けることによって、その時に言ってほしい言葉は見つかったりしたの?

「みつかりました。私自身、すごく依存してしまうから、この歌詞のように、相手にも同じ気持ちでいて欲しかったんだなって。依存しちゃうタイプなのに、素直に“側に居てよ”と言えないから。“私だけのことを思っててよ”って言えなく、“頑張ってね! 行ってらっしゃい!”と言っちゃうから。でも、本心はそうじゃなくて。自分と同じ気持ちで居て欲しかったんだなって。ただ、それだけだった。2番にも書いたんですけど、その人が居てくれてすごく幸せなはずなのに、なんで寂しかったんだろう?って。欲張りだったのかな?って考え直してた時、気づいたんです。あ、私のほうが好きだったんだなって。その気持ちに気づいた時、またより悲しくなっちゃって」

――あーそれ切ないね。

「そう。切ないんです」

――でも、この歌詞の中で成長を感じるのは、最後に“貴方が幸せでありますように”って歌えているところ。

「ちゃんと相手の幸せを願えているからね」

■ ライブに来てくれるみんなを肯定する曲をつくりたかった

――(シングル2曲目収録の)「ハウル」は、今回の楽曲の中ではアップかな。でも、ちょっとやっぱり大人な雰囲気で。フロアタムの使い方が大きく包み込む感じね。

「そうですね。ドコドコしてない感じ! 言葉もいつもより詰まってはいないけど、ポイント的に詰まってる感じで。そこもちょっと大人な魅せ方かな。抜き差しな感じがね。この曲も、悲しみや傷を持った人たちが、強くなれるような、みんなの歌にしたかったんです。1番の歌詞を書いてる時期に「紅蓮華」のツアーが始まったんだけど、そのツアーの後にみんなに伝えられる歌をつくれたらいいなって思いながら書いたんです。「紅蓮華」が無かったら生まれていなかった曲。「紅蓮華」は、TVアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマだったんですけど、原作を読んで、すごく感動して、一生懸命に行きているみんなが素敵だなと思ったんです。それでいて優しいのって、素敵だなって。その姿が、私のライブでいつもフロアに居てくれるファンのみんなと重なったんです。私が歌う曲は、頑張ってる人にしか刺さらないと思うから。フロアに居てくれるみんなを肯定するっていうか、支えるような、一緒に駆け抜けていけるような、そんな歌がつくりたくてつくったんです」

――歌詞のがむしゃらな強さが完全にLiSAだもんね。

「そう。でもね、ちょっと「ADAMAS」とは趣向が違うんです。一人ならそれでしょうがないから、一人で戦え!っていうのが「ADAMAS」で、一人だけど、一人じゃないんだよ!っていう気持ちが加わったのが「ハウル」なんです。最後の最後に、この人生が良かったか良くなかったかの答え合わせをするしかないなって思ったから、そんな想いをBメロの最後のほうに入れたんです」

――「紅蓮華」を書いている時の心持ちとも少し違うの?

「うん。違いますね。ライブをしてても、根拠ないけど“大丈夫!”って言えるの。本当に、フロアに居てくれる人に向かって、みんなに“大丈夫!”って言えるの。だって、ここに来てて、みんな今、こんなに最高なんだよ! すごくない!?って、言えるの。だからね、たぶん、きっとみんなには楽しくて素敵な未来しか待っていないと思うよ!って、胸張って言えるの。「ハウル」は、そんな想いを綴った置き手紙みたいな感じかな。それぞれの好きな人生を歩んだ後に、もう一回みんなで相談しよっか!って感じかな(笑)」

――なるほど、だから答え合わせなんだね。

「そう。みんな死ねないから生きてるの。楽しくなくちゃね」

■ みんなは私のドラえもんで、私はのび太くん

――「KALEIDO」(「unlasting」初回生産限定盤・通常盤のみ収録)は歌唱が難易度高い気がするね。

リズムがすごく難しかったです。曲はみんみん小南泰葉)が書いてくれたんですけど、メロディ聴いてるだけで泣けちゃうんです。すごく繊細で、大事なことを伝えてくれる旋律で。すごく愛情が深いのがメロディから伝わってくる。このメロディには絶対に薄い覚悟は乗せられない!って思ったというか」

――たしかに、この曲の歌詞はLiSAの作詞じゃないよね。

「そう。秀さん(田中秀典)。自分で書くよりも、素直な気持ちを真っ直ぐに伝わる言葉で書いてくれるのは、秀さんだなって思ったのでお願いしたんです。秀さんには「1/f」(シングル『赤い罠(who loves it?) / ADAMAS』収録)の歌詞も書いてもらっているんですけど、“この気持ちを言葉にするとしたら、どういう言葉にするの?”っていう言葉を秀さんはすごく明確に言葉にしてくれるんです。どうしても伝えたい大切な想いはあるのに、上手く言葉にできないと思ったから、秀さんに一生懸命お手紙書いたんです! 私ね、いつも終わりを常に意識しながら生きているんです。とにかく、いつ終わってもいいっていう覚悟でいつも生きてるから、ファンのみんなから、“突然いなくなっちゃうんじゃないか”って心配してくれるお手紙をよく貰ったりするんです。すごく心配みたいで。だから、安心させてあげたいと思ったというか。大丈夫だよ、安心してねっていう歌にしたかったんです。それを秀さんに伝える時、『すごく信頼している人に歌いたい歌詞を書いてほしいです』と言ったんです。そこで、例にあげたのは『ドラえもん』だったんです」

――え!? ドラえもん

「『ドラえもん』の結末は、誰も知らないんだけど、いろんなエンディングが想像でつくられてて。その一つに、ドラえもんがある日壊れちゃう話があって。大切なドラえもんが壊れちゃったから、落ちこぼれののび太くんは、必死で勉強してドラえもんを直すの。最近、(映画)『STAND BY ME ドラえもん』を見たんだけど、そのストーリーがすごく好きで。その中で、おじさんになったのび太くんが、子供ののび太くんに、“ドラえもんはまだいる?”って聞くんです。そしたら、その言葉に子供ののび太くんは、“うん、まだいるよ!”と答えるんです。その言葉に大人ののび太くんが“今を大切に生きるんだよ”って言うんですよ! もうね、その言葉だけで私、大号泣(そして、ここでも思い出し泣き)」

――泣かないでーー。

「思い出したら泣けてきちゃった! 未来にドラえもんがいないのを知ってる大人ののび太くんは、だからその言葉を子供ののび太くんに言ったんだって思ったら、涙止まらなくて」

――自分に重ねたんでしょ。

「うん(泣く)。私もそんな気持ちなんですよ。普段は何もなくて、面倒くさがり屋だし、泣き虫だし、心配性だし、不安性だし…ふぅ(泣くのを必死で我慢するLiSA)」

――泣かないで〜。

「すみません(笑)。私、のび太くんだなって思ったの」

――自分が?

「そう。普段は怠け者で、何にも頑張れないのに、みんながピンチだって思ったら、自分でもびっくりするくらいの力が出るから。みんなは私のドラえもんで、私はのび太くん。助けてもらってるのはいつも私なのに、みんながピンチの時だけは頑張れる。“大丈夫だよ!”って言ってあげられる側に立てる。絶対に助けるって思うの! ドラえもんはいつものび太くんの味方だから。そういう歌にしたかったんです」

――なるほどね。LiSAっぽいね。

「そう。そのまま秀さんが言葉にしてくれているから! 本当に伝わったんだなって思いました」

――そうだね。でも、楽曲が大人っぽいところが、第二のLiSAだなって感じさせるね。

■ “MAXさんにしてください!”とお願いしました

――「Chill-Chill-Dal-Da」(「unlasting」期間生産限定盤のみ収録)は?

「ぶっ飛んでるでしょ、「Chill-Chill-Dal-Da」」

――そうね(笑)。でも、楽曲的にはすごく懐かしかった。

「でしょ! 歌詞は田淵先輩(田淵智也)、作曲は伊秩弘将さんなんですけど、田淵先輩に“MAXさんにしてください!”とお願いしたんです!」

――なるほど、納得。その辺の懐かしさだった!

「でしょー! 私、その時代のポップスって本当に素晴らしいと思うんです。だから、それを今の時代に持ってきて、音楽で遊べたらいいなと思うた」

――“思うた”(笑)。

「アハハハ。そうそう、思うた(笑)。これで真剣なことを歌うというより、音楽の楽しさだったりワガママな感じだったり、この音楽に乗せてだったら言えそうだなっていう歌詞を乗せてみたりしたいなと思って」

――欲望が出まくっているもんね。

「そうなんです! パンクってこういうことなのかなって。先輩の脳みそってどうなってるんだろう?って思いました。瞬殺で書いてきてくれましたからね。ビックリ。本当に頭を切って見てみたいかも。曲のせいにして好き勝手歌えるこの曲は、本当に歌ってて楽しいんです。歌わせてくれるって感覚。とにかくライブで歌っている時、楽しいんです! 歌を通していろんな想いを伝えられるって最高だなって。これからも、こういう曲はたくさん歌っていけたらいいなと思ってます」

(取材・文 / 武市尚子)(ザテレビジョン

2020年3月からアコースティックツアーを開催するLiSA