11月は多くの大学で学園祭が実施されますが、その中でも慶應義塾大学の「三田祭」をご存知でしょうか。約20万人もの来場者数を誇る日本最大規模の学園祭で、4日間にわたって開催されます。今回は三田祭期間中にある面白い取り組みを実施している三田祭実行委員会に取材しました。大学と街をつなぐ、その取り組みとは……?

三田祭と飲食店がコラボした「みたまちぐるぐるグルメ」

取材当日は平日にもかかわらず、グルメやスイーツなど幅広いメニューを揃えた屋台が並び、ステージでは歌やダンスによる圧巻のパフォーマンスに多くの来場者が熱狂。こうした場を支えるのが、三田祭実行委員会です。縁の下の力持ちとして、企画や資金集め、団体との連携、外部への宣伝などを行っています。

タピオカ店「るなちゃ」と三田祭のコラボメニュー”紫芋ラテ”
タピオカ店「るなちゃ」と三田祭のコラボメニュー”紫芋ラテ”

中でも今回は、企業など外部との連携を担当する渉外局が企画する「みたまちぐるぐるグルメ」に着目しました。三田祭と近隣飲食店がコラボし、期間限定メニューが各店舗で販売されるというこの企画。今年は三田商店街の6店舗とタッグを組み、タピオカドリンクや季節にぴったりのスンドブなど幅広いメニューを販売しました。渉外局に所属し「みたまちぐるぐるグルメ」を企画・運営された楫野莉彩さんに、企画の背景ややりがいなど詳しくお話を伺いました。

苦労したことは各店舗との交渉

―― この企画を始めたきっかけは何ですか?

三田祭は、キャンパス内ではとても盛り上がるんですが、せっかくなら街全体を盛り上げたいと考えたのが企画の発端です。渉外局では企業協賛や三田界隈からの協賛も頂いているのですが、今回の企画で界隈のお店の売り上げ向上につながるとともに、協賛もさらに頂ける可能性があったので実施しました。


―― 昨年も行われていますが、今年と昨年でどのような変化がありましたか?

昨年は4店舗でしたが、今年は6店舗に増えました。「るなちゃ」というタピオカ屋さんの紫芋ラテから、肉料理専門店「ONIQUE TOKYO」の1万円のコースメニューまで、高校生からOB・OGまで楽しんでもらえるようにいろいろなジャンルのお店に交渉しました。


―― いつ頃からお店と交渉を始めたのですか?

6月から始めました。昨年は8月からでしたが、今年は昨年より実施店舗数が増えたこともあり、早めに動き出したんです。

「太陽のトマト麺」とのコラボメニュー”HAMON”
「太陽のトマト麺」とのコラボメニュー”HAMON”

メニューは8月に決定しました。お店にもよりますが、「三田祭色を出してほしい」と訴えかけました。「ONIQUE TOKYO」さんは慶應大学についていろいろと調べてくださって、創立者である福沢諭吉がカレー好きだったことなどを参考に、協力してメニューを作りました。「太陽のトマト麺」さんは、今年の三田祭のテーマにちなんで「HAMON」というコラボメニューを作ってくださいました。ちなみに、昨年コラボした「にぎりめし」さんのチャンジャのおにぎりはとても好評だったので、今では定番メニューになっています。


―― 運営、開催する中で苦労されたことはなんですか?

やはり交渉が大変でした。合計30店舗くらいに電話をかけて、お店に伺って資料をお渡しし、その上でご協力いただけたお店が6店舗でした。検討中のお店に再度伺ったりもするんですが、お店にも忙しい時間帯があるので、お手すきになりやすい時間帯に行くなど話を聞いてもらうための工夫をしましたね。私は普段日吉キャンパスに通っているので、週3,4回は三田に通って交渉するのが大変でした。

4年間辞められない⁉ 三田祭実行委員会の厳格な規則

―― 現在は2年生ですが、来年はどのような立ち位置で企画に関わるのですか?

管理する立場に回りますね。基本的に2年生が実働として企画を作るので、3、4年生は企画書のチェックなどがメイン。だから、3年生になったら後輩を見守ります(笑)。


―― 三田祭実行委員に入ったきっかけは何ですか?

大学時代、何か一つのことに集中したかったんです。三田祭実行委員は4年間辞めてはいけないし、きちんとした会議もあるので集中できる環境です。実行委員会に入ったら、「大学時代に何をやったの?」と聞かれたときに、ちゃんと答えられると思ったので入りました。

三田祭がきっかけで定番メニューになった「にぎりめし」のチャンジャのおにぎり
三田祭がきっかけで定番メニューになった「にぎりめし」のチャンジャのおにぎり

―― 学園祭実行委員の楽しさや魅力を教えてください。

団体がキラキラと輝ける場所を作るのが実行委員会です。パフォーマンスが行われているステージを見ているとすごく達成感がありますし、いろいろな団体からお礼の言葉を頂いています。
みたまちぐるぐるグルメでは、実際にコラボしたお店に行ってくれた方が写真を撮って、感想を報告してくれるのもとてもうれしいです。


―― 今後の目標や将来の夢について教えてください。

さらに街を巻き込んで三田祭を盛り上げていくことが私の目標です。同期も別企画で界隈とのつながりを深めていたりもするので、そのように企画をどんどん増やしていきたいです。

将来についてはまだ漠然としていますが、総合商社のような海外と日本をつなぐ、世界の人と人とをつなぐ仕事などに興味があります。
委員会で企業と三田祭、そして店舗と三田祭をつなげる役割、新しいことを生み出す役割を果たし、人と人をつなぐ大切さと新しいことを生み出す面白さをすごく感じました。社会人になっても同じような役割で活躍したいです。



日本最大級の規模を誇る三田祭の背景には、沢山の苦労や努力を重ねてきた実行委員会の方々による尽力がありました。大学時代から社会人の方など外部とやり取りをする貴重な体験は、大変ではありますが将来に生かすことができるでしょう。
大学生になって何か一つのことに力を入れたいという方は、入学後に学園祭を支える運営側に立ってみるのもいいかもしれませんね。

【取材協力】慶應義塾大学第61回三田祭実行委員会
経済学部2年・楫野莉彩