噴火時のホワイト島。/Credit:New Zealand Police Media Centre
point
  • ニュージーランド・ホワイト島の突然の噴火は、マグマの熱により地中に溜まった水蒸気の圧の変化が原因
  • この水蒸気噴火は予兆がなく、予測することが難しい
  • 数年前に日本で発生した御嶽山や白根山の噴火も同様の原理だった

火山地帯は危険がある一方、魅力あふれる自然の景色を生み出していて観光地にもなっている場合が多くあります。

ニュージーランド・ホワイト島もそんな魅力的な活火山の1つで、世界中から多くの観光客を集めていました。

しかし、このホワイト島火山は、12月9日に予兆もなく突然の噴火を起こしました。11日時点の海外メディアの報道では、このとき島には50人近い観光客がいて、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷しているといいます。

噴火の瞬間は多くの観光客が写真に捉えていて、ツイッター上でも確認できます。

こうした活火山は観測所によって常に監視されていて、噴火の予兆がないかチェックされています。しかし、今回の噴火は何の予兆もなく突然起きたと言われています。

一体なぜ、何の予兆もない噴火が起きるのでしょうか?

地中の水蒸気による爆発

Credit:national geographic,藤田英輔

火山噴火というと、マグマがどーんと吹き出すようなイメージを持ちますが、マグマが直接関与していない場合でも、間接的な影響で噴火することがあります。

今回突然の噴火を起こしたホワイトアイランド火山はマグマの流れる位置が浅く、地表に近い場所の岩が非常に熱せされている状態になっていました。

こうした火山では、地下水や地表の水は活発な熱水系を形成し、一部の水は加熱された岩の細孔に捕らえられています。これは非常に微妙なバランスで状態が保たれています

ここに地震や地下のガス圧力の変化などが起きると、一気に閉じ込められた水の圧力が開放されるのです。

こうした間接的なマグマの影響で起きる噴火を水蒸気噴火、または熱水噴火と呼びます。この水が蒸気に変換される現象は、音速を超える速度で起こり、液体の体積は一気に1700倍に膨張します。

これが岩盤を数百メートルにも渡って粉砕し吹き飛ばします。ニュージランドの今回の噴火では、火口から3キロメートルも離れた場所まで、この噴火による物質が吹き飛ばされました。

水蒸気噴火は、マグマの流出が伴いませんが、非常に熱い濡れた灰を撒き散らします。これは噴石による危険の他に、火傷や呼吸器を損傷させる恐れも生み出します。

予兆がない

この水蒸気噴火のもっとも恐ろしい点は、噴火を事前に感知するための予兆がないということです。現状、この種の噴火を予測することはできません。

水蒸気噴火については、地下で水蒸気が活性化することで低周波の微振動が発生し、その予兆を捕らえられる場合もありますが、それが観測できるのはほとんどの場合、発生の数秒前から数分前程度だと言われています。

日本の例でみると、御嶽山噴火は水蒸気噴火でした。これは2007年の小規模な噴火の際は、50日前にこの微振動が観測されていたと言いますが、多くの犠牲者を出した2014年の噴火時には、この予兆が観測されたのは噴火の直前でした。

2018年に起きた草津白根山の噴火も同様で、こちらは火山活動が低下したと考えられ噴火警戒レベルを2から1へと引き下げた後に水蒸気噴火が発生しています。

もし水蒸気噴火を事前に予測するとしたら、熱水系の持つ蒸気や水の圧力を正確に監視し、長期的な変化の挙動を理解するしかありません。

しかし、蒸気の挙動を追跡するという監視システムは非常に実現が難しいと言います。

水蒸気噴火は比較的小規模な噴火に留まりますが、山体の崩落などにより大きな被害を生む場合もあります。また、火山は周辺はその特殊な環境のために、独特の景観を作り出していて観光地になっている場合もあるため、今回のような被害を生む場合もあります。

ホワイトアイランド火山。ニュージーランドの研究機関によるライブカメラの映像。現在は公開停止されている。/Credit:GNSサイエンス

ホワイトアイランドの火山も監視を行う研究機関GNSサイエンスによりライブカメラ映像が公開されていて、噴火直前には、この場所を歩いている観光客の姿も映っていました。現在その画像は被害者に配慮して削除されています。

太平洋火山帯/Credit:CIA World DataBank II – UIC/EVL/Wikipedia Commons

このホワイトアイランド火山は環太平洋火山帯に属していて、日本もこの火山帯の上にあります。

自然の監視システムも発達してい、情報が溢れる現代、火山のような大規模な自然災害には何かしらの警告が事前に見つかるだろう、と思ってしまいますが、まだまだ人間に予期できない災害は多く存在しています。

いくら美しい景観の観光地であっても、現代のテクノロジーで全ての安全が確認できるわけではありません。危険な場所に足を運ぶ際には、ある程度覚悟していく必要があるでしょう。

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reference:sciencealert,stuff,BBC/ written by KAIN
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