テレビ東京系「孤独のグルメ Season8」第10話が、12月6日に放送された。師走の忙しい五郎さん(松重豊)には、「ブリ照り焼き」と「クリームコロッケ タルタルソース添え」が染みに染みた。

「孤独のグルメ Season7」Blu-ray BOX

不思議ちゃんな定食屋
12月の忙しい時期に、五郎さんが訪れたのは東京・世田谷区豪徳寺。商談相手の内田良夫(きたろう)は、一見気さくな雰囲気だけど、なんだかやりづらい。五郎さんを持ち上げるだけ持ち上げておいて、自分のミスから難癖をつけてくる。

本来なら10分で終わる商談に時間をかけてしまった五郎さんは、「ドッと疲れて」「ムチャクチャ腹が減った」。まだ外は明るいが、仕事を後回しにして夕食を取ることにした。

「なんだろう、この内装。かるーく不思議ちゃん」

たどり着いたのは定食屋「旬彩魚 いなだ」。バーのような喫茶店のような外観&内装なのに、食べられるものは魚中心の定食だ。かと思えば、「チキンバジル」なんてイメージ通りのメニューも揃っている。カウンターに大皿で料理が並ぶクラシックな食堂の一面も持っていて、かるーく不思議ちゃんだ。

おじさんは焼き魚をオシャレな気持ちで食べられるし、若い女の子はオシャレなふりして焼き魚を食べられる。ちなみに僕はこの店の近くを通ったことがあるが、外観と立て看板に書かれたメニューのギャップに混乱して、入店を見送ったことがある。中も見えないから。

師走らしからぬ定食屋
「銀サケの西京焼き」「上さばの塩焼き」「特上さばの塩焼き」「厚切り銀ダラの照焼き」「特厚とろほっけの開き」など、黒板に書かれているメニューのラインナップは、明らかにこだわっている店だ。1000円〜1500円で、ちょっと何かを付けたら2000円を超える。プチ贅沢と言った感じ。

五郎さんが選んだのは、「ブリの照り焼き定食 月見トロロ付き」と「クリームコロッケ」。「今の気分は焼き魚」としておきながら、洋食もしっかり押さえる辺りはさすがといったところ。心の声で魚ばかり悩んで、「クリームコロッケ」にはほぼ触れていなかったくせに、当たり前のように注文するところから、五郎さんに「定食+一品」という常識が存在することがうかがえる。

厨房の中は映らないことも多いが、今回はがっつり描写している。歴戦を乗り越えてきた壁のシミも、ブリ照りのタレが入った壺も雰囲気抜群で、大将を演じた半海一晃がやたら本物っぽい。壺と皿が当たって、カーンとなる音も生々しい。

「島国日本の食卓、いろいろついてて嬉しい」

定食は、ご飯とトロロを合わせて8品も。「ブリブリに旨い」ブリ照りに加えて、「昆布の佃煮」「日替わり煮物」「味噌汁」「漬物」「ほうれん草の和え物」とわき役が充実していた。

「白い飯に穴が空くほど合う」

バクバクもぐもぐ食べ進める五郎さんだけど、なんだかいつもよりちょっと上品だ。ゆっくりと箸で持ち上げて、大きな口でしっかり味わう。「旬彩魚 いなだ」には、師走らしからぬゆっくりとした時間が流れていた。

それでも五郎さんの食べる量は変わらない。定食だけでもボリューミーなのに、「クリームコロッケ」まで登場。箸でザクって切って、ソースをかけたり、店オリジナルのタルタルソースをかけたりと、"タルタリスト"の五郎さんも満足げ。

「冷めてくるとクリームの良さが、よりわかる」

すごいわかる。

すり鉢でトロロをかき混ぜる音
「良い時間だ。定食、その言葉のかけがえのなさを、人は忘れがちだ」

師走の忙しさにひとときの癒しを定食に感じた五郎さんだったが、結局は「クリームコロッケ」だけではなく、「ライス」「マグロカンパチホタテの刺身」「梅干し」を追加注文。

残していたトロロを使って、「海鮮トロロ丼」を作る。

しゃくしゃくしゃくしゃく……

すり鉢に入ったトロロをかき混ぜる音って、そんな感じだったなぁと、再確認させられた。
(さわだ 沢野奈津夫改め)

孤独のグルメ Season8」
放送時間:金曜24時12分〜
出演:きたろう、半海一晃
原作:原作/久住昌之・画/谷口ジロー
音楽:The Screen Tones
久住昌之フクムサトシShake、河野文彦、栗木健
オープニングテーマ:「Goo,Goo,Goro!」作曲:久住昌之演奏:The Screen Tonesエンディングテーマ:「五郎の12PM」作曲:久住昌之歌:伝美脚本:田口佳宏 児玉頼子演出:井川尊史 北畑龍一 北尾賢人