世界保健機関WHO)の推計によると、北朝鮮の10万人あたりの殺人発生率は4.4件。主要国で最悪の米国の5.3件に比べると低いが、日本やシンガポールの0.2件、韓国や中国の0.6件、アジア平均の2.9件、ヨーロッパオセアニア平均の3.0件などに比べると極めて高い。

海外情報の入手など、他の国では犯罪とならないことでも処罰の対象となることを考えても、北朝鮮はかなりの犯罪大国と言っても過言ではないだろう。

北朝鮮の北東部の清津(チョンジン)では最近、未成年者による凶悪事件が発生し、市民の間に動揺が走っていると、米政府系のラジオフリーアジアRFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、今年10月初め、朝鮮労働党創建日(10月10日)の記念行事で慌ただしい清津(チョンジン)市内中心部、浦港(ポハン)区域の南江洞(ナムガンドン)で、幼い子どもバラバラ死体が発見された。

容疑者として逮捕されたのは、市内の高等中学校(高校)に通う16歳の男子生徒だった。明らかになった事件の概要は次のようなものだ。

男子生徒は、盗みを働く目的で町内の住宅に侵入したが、ちょうど家にいた顔見知りの子どもに顔を見られてしまった。それに動揺したこの生徒は、とっさに子どもを鈍器で殴って殺害した。

遺体をバラバラにして埋めようとしていたが、挙動を不審に思った住民が通報したことで、逮捕に至った。

当局は当初、事件のことを非公開にしようと考えていた。社会を動揺させる事件や災害のことは隠蔽しようというのが北朝鮮当局の体質だ。しかし、事件のあまりもの残酷さに加え、すでに一部の市民に知れ渡っていたことを考慮し、公開に踏み切った。

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もう一つ、当局が気にしているのは犯行の動機だろう。

「犯人はあまりの貧しさに、食べるものを確保するために民家に空き巣に入ったが、殺人まで犯してしまった」(情報筋)

国際社会の制裁、燃料不足などによる停電、資材不足、鉄道の運休、非効率な集団農業などで、北朝鮮庶民の暮らしは苦境に追い込まれている。生活の苦しさゆえの犯行であることが知れ渡れば、耐乏生活を強いている金正恩委員長と現体制に対する不満の声が上がることは間違いだろう。

また、被害者の詳細について情報筋は言及していないが、生徒が食べ物を狙って空き巣に入ったことを考えると、裕福な家だった可能性もある。もし、幹部の家だったとすると、市民の怒りの矛先が犯人ではなく、当局に向かうことも考えられる。

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実際、司法機関はいかなる処罰を下すべきか悩んでいるという。

「殺人者は銃殺刑を下すのがわが国の法律だが、未成年者ということもあり、裁判でいかなる判決が出るか市民の関心が高い」(情報筋)

治安が今以上に乱れていた金正日時代には、些細なことで銃殺刑にしたり、射殺したりすることが多かったが、今ではそうもいかないようだ。

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別の情報筋によると、この生徒は現在、咸鏡北道保安局(県警本部に相当)の留置場で勾留されている。未成年者は、日本の少年院にあたる少年教化所に入れられるが、凶悪犯罪であるため、民法が規定する成人年齢の17歳に達する来年まで待ってから公開処刑するのではないか、とのことだ。ただ、処刑したところで根本的な問題が解決するわけでは決してない。

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殺人、強盗、詐欺などの犯罪が相次いで起こり、ほとんどが生きるための生計型犯罪である上に、未成年者が加担している事件が増え、社会不安の要因になっているとのことだ。

金正恩(キム・ジョンウン)氏