通算6度目のアニメ化となる『ゲゲゲの鬼太郎』(フジテレビ系にて毎週日曜朝9時~放送中)。子供向け作品でありながら、“ブラック企業”、“整形依存”、“ハラスメント”など現代社会の問題に積極的に切り込む姿勢は、視聴者から“今期の『鬼太郎』は攻めている!”と評判だ。刺激的な脚本がいかにして出来上がるのか、シリーズ構成の大野木寛にたずねた。

妖怪を今の社会問題と結びつける

 ――今回の『鬼太郎』は、通算6度目、1期の放送開始から数えると50年目のアニメ化にあたります。作品作りにおいて、どのようなことを意識されましたか?

 大野木 水木先生の世界を守りつつも、今風にしなくてはならない、と意識しました。原作自体が古いものですから、今を生きる子どもたちに観てもらうためには、いかに現代的なテーマと結びつけるか、ということを考えなければなりません。

 ――具体的には、脚本のどのようなところにその意識が現れていますか?

 大野木 妖怪を今の社会問題と結びつけるようにしています。例えば、原作の連載が始まった1960年代は、地方は常に開発の対象で、話の中でも、開発によって、なにかの封印が解かれてしまって、妖怪が出てきて暴れるというパターンが多かった。しかし現代では、ある程度開発は終わっていて、そのような状況は考えづらい。

 いい例が、田んぼに住む妖怪の泥田坊ですね。原作では、泥田坊は開発ですみかを奪われて、「田を返せ」と言って暴れていたのですが、今回のアニメでは、田んぼだったところがゴルフ場になって、そのあとメガソーラー発電所になって……と、社会の変化によってどんどん使われ方が変わっている。でも、泥田坊が出てきて「田を返せ」と言うところは変わっていない。

 ――鬼太郎をはじめとするメインキャラクターたちの性格も若干変化しているように見受けられます。

 大野木 これまでの鬼太郎は、熱血ヒーローとして描かれがちだったのですが、今回の鬼太郎はやや冷めているというか、一歩引いたところで物事を見ています。これまでは、鬼太郎が常に人間の味方だったから、熱血ヒーローたり得たのですが、今回の鬼太郎は、人間と妖怪の間に立つ者として描きたかった。なので、人間の味方をするときもあれば、そうではないときもある。それで一歩引いているキャラクターにしています。

 ねこ娘は頭身を伸ばしましたし。常に〝今風〟は意識していますね。

 ――電子書籍ねずみ男大全』の主役であるねずみ男に関してはいかがでしょう?

 大野木 これが面白いことに、他のキャラクターはいじれるのですが、ねずみ男は変えられないんですよね。もちろん、アニメシリーズや、各話を担当するライターによって微妙な差異はあります。でも、鬼太郎なんかに比べると変更は小さな幅にすぎません。ねずみ男は、やっぱりねずみ男なんです(笑)。ずるくて、金と権力に弱くて、ある時は鬼太郎大親友、ある時は敵にこびへつらう。この〝どっちつかずな感じ〟をいじると、なんだかねずみ男ではなくなってしまうんです。

子どもの感受性を信じる

 ――今回の「鬼太郎」は、怖い話はひたすら怖く、ギャグ回はコミカルに、人情話は全力で泣かせにくる、と話の振り幅が大きいですよね。各シナリオはどのようにして出来上がっているのですか?

 大野木 各回のシナリオ会議の前に、シリーズ構成の会議があって、怖い話のあとは明るい話にしたり、社会問題を扱った話にしたりなどして、全体のバランスをとるようにしています。あとは、この辺りはねこ娘の登場が少ないから増やそうとか、そういう話をします。この段階で、その回に出てくる妖怪を決めるときもあれば、決めないときもあります。

 それで、ギャグ回はギャグが得意なライターに、怖い話怖い話が得意なライターに割り振っていきます。ひどいときは、妖怪も決まっていなくて、「お笑いでなにかやって」とアバウトな発注をするときも。そうかと思えば、「この社会問題はぜひ採り上げるべきで、原作で似たようなテーマの妖怪がいるから、この妖怪を使って書いて」と具体的に頼むときもあります。

 ――発注と異なる、予想外シナリオライターさんからあがってきたときはありますか?

 大野木 ほぼ全話です。ライターには口頭で要求を伝えますけど、詳しいメモを作って渡すわけではないので、どういうプロットになるかは全く読めない。あがってきたプロットを見て、「おっと、こうきたか」と驚くのは毎度ですね。

 ――子ども向けのアニメにしては、バッドエンドで終わる話も多いです。

 大野木 ええ。今回はバッドエンドもOKとプロデューサーの永富大地さんから言われているので。

 僕は、子ども向けの話だからバッドエンドにしないという考え方は、あまり好きではないですね。子どもはもっとちゃんと物事を感じていると信じているんです。いい結末を見せたから子どもの性格がよくなる、悪い結末を見せたから悪くなる、という単純なものではなくて、いいものと、悪いものや怖いもの、両方を見せることによって子どもたちの感性は広がる。僕はそう信じています。

おおのぎ・ひろし 1959年生まれ。アニメーション脚本家1983年、「超時空要塞マクロス」でプロデビュー。数々のロボットアニメの脚本を手がけ、近年は「あたしンち」「ドラえもん」など日常アニメシリーズ構成をつとめる。2018年より「ゲゲゲの鬼太郎」のシリーズ構成を担当。

※このインタビューの全文は、2019年12月13日発売の電子書籍ねずみ男大全』に掲載されています。また、発売を記念して、ねずみ男年賀状キャンペーンを実施。詳細はこちら

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水木プロ (監修), 東映アニメーション (監修), 岩佐陽一 (監修)

文藝春秋

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(「文藝春秋電子書籍」編集部)

現在「最終章ぬらりひょん編」が展開中。妖怪ぬらりひょんはアニメ3期以来おなじみとなっている鬼太郎の好敵手だ ©水木プロ・東映アニメーション