いや、ビックリしました。「桜を見る会」でマルチ商法の会社会長を招待したり(とされる)、それどころか、反社会的勢力らしき人物と昭恵夫人とのツーショットで撮られたのをあやふやにしようとしたのか、壮大なごまかしを安倍政権はやってしまいました。これが、刑事事件を取り締まる警察庁のさらにトップにある、総理大臣たる人の決定でしょうか。

 

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【政府は10日、「反社会的勢力」の定義について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定した。政府による「反社会的勢力」の過去の使用例と意味については「政府の国会答弁、説明資料などでの使用のすべての実例や意味について、網羅的な確認は困難」とした。】(毎日新聞12月10日より)

これで警察がヤクザを取り調べる時、その人が「俺たちは反社会的勢力ではない。総理大臣が言っているのだから」とでも言ったら安倍総理はどうするのでしょうか。

最前線で身体を張っている「現場の警察官の心根」を完全に無視した、閣議決定です。自分の保身か、あるいは自分の妻の保身の為に、警察行政をないがしろにしていると言わざるを得ません。

現に各地で起こっている山口組抗争事件ですが、流れ弾に住民が被害に遭う可能性もあります。それは「反社会的勢力」ではない、すなわち「一般人」が起こした事件にでもなるのでしょうか。

この閣議決定は警察行政を無茶苦茶にしてしまいました。法治国家ではないのでしょうか、この日本は。先進国ではないのでしょうか。

 

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暴力団排除条例というものが全国に施行されました。これはヤクザの人権・生活権を奪うものだという事で、田原総一朗さんや故西部邁さんらが反対しました。僕も反対です。ヤクザは銀行口座を作れない、マンションに住めない、車も持てない。まさに生活権を奪われました。後にどうなったのか。

ドラッグでは覚醒剤ヤクザの商売だったのに、大麻やほかの危険ドラッグにまで商売の触手を延ばす。特殊詐欺暴走族OBのシノギだったのに現役のヤクザシノギになっていきました。「お年寄りを騙すなんぞ何が任侠だ」。そういうヤクザもいました。が、大部分は背に腹は代えられぬ、の心境です。

またヤクザにはならずとも準暴力団半グレの立ち位置に自分を置き、警察的には一般人だがやっている事は現役の組員と変わらない状況が生まれました。

暴排条例は現場の警察官を混乱させました。「関東連合って何ですか?」「暴走族? 暴走族がなぜ歌舞伎役者と飲んでいるんですか」etc。が、施行されて数年、現場警察官は何とか取り締まりを強化しています。施行当初は「よけいヤクザヤクザでないか分かりにくくなる」と現場の刑事は悩んでいました。それで、「準暴力団」という概念を警察庁は産み出しました。ヤクザの次に罪が重くなるのが準暴力団という位置づけです。

しかし、今や閣議決定により、この暴力のパワーバランスが崩壊してしまったも同然です。額面通り受けるなら。

実際にこの閣議決定を聞いて現役の組織犯罪対策本部の刑事(ご存知ない方に分かりやすく言うと暴力団を取締まる部署)に聞いてみました。怒っていました。

反社会的勢力に関しては、警察庁が定義付けしていますよ。また暴排条例制定の時も、反社の定義は全国警察で掲げています」

――「政府の言う反社」を分かりやすい例を出して頂けますか。

「これは読者の皆さんも銀行で口座を開こうとすれば経験があると思いますが、銀行口座の開設、自動車購入や不動産売買等の各種契約に反社条項が盛り込まれていますよね。それをなぜ総理が反社の定義が出来ないなんて言えるのでしょうか」

そしてこう結びました。

「反社の定義がないというのは、単なる言い逃れに過ぎず、私達が取り調べてる被疑者の幼稚な否認と何ら変わりません」

幼稚。そう余りにも幼稚な決定です。というより、もし安倍総理の個人的保身の為に、今現在取り調べや逮捕に奔走している現場警察官の足をすくうかのような対応をしているのなら、是非とも現場の第一線の警察官の声に耳を傾けて頂きたいと言っておきます。というか、もう暴力団排除条例とかは不必要ではないですか? 反社の定義がはっきりしないのなら。とも言っておきましょう。(文◎久田将義)

 

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冗談みたいなキャッチフレーズ(撮影=編集部)