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 カリフォルニア州ドレイクスビーチを覆いつくすほどの勢いで打ち上げられているのは、肌色をしたスティック状の物体である。

 長さ25センチくらいのそれは、遠目にはサツマイモにも見えなくもないが、近寄ってみれば我が目を疑うほどにイチモツだ。切り取られたイチモツが大量散布されているとかこれどんなホラー?

 実はこれ、ユムシという環形動物の仲間である。日本でも北海道の一部地域で食べられるいわゆるチン味だ。

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これどんな年の瀬ギフト?海岸を埋め尽くす大量のユムシ


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切り取られたイチモツ形状のユムシの仲間

 環形動物であるユムシ科は、世界には4種が知られているが、今カリフォルニアの海岸を占拠しているのはUrechis caupoという種だ。日本近辺にはUrechis unicinctusという種が生息している。

 北海道ではルッツ和歌山ではイイ、九州ではイイマラなどとも呼ばれているが、海外ではスポーンワーム、もしくはストレートにペニスフィッシュと呼ばれる。

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Arrlxx/iStock

ユムシがこんな形状をしているのには訳がある


 ユムシの特徴的なその姿は、地中での生活に適応したもの。ヘラのような吻で砂浜や干潟にU字のトンネルを掘り、そこに身を潜めて暮らしている。

 独特なのがそのエサの食べ方だ。吻にはリング状に腺が並んでおり、これを巣穴の壁に擦り付けてネバッとした粘液を分泌する。

 そのまま粘液を分泌しつつ、自分は巣穴の奥に後退することで、巣穴から口にかけてなんだか腐りかけのクラゲのような粘液ネットを張る。

 ここにデトリタス(生物由来の破片や微生物の死骸など)が付着したら、体をウネウネと蠕動。まるでポンプのように水を巣穴に引き込みつつ、ズズズと粘液をすすり上げるのだ。


3億年前から生き残ってきたすごいやつ


 食べたら出さねばならいのが世の理。しかしユムシの場合、肛門の周りにフンがたまってしまう。そこで、ここでも体をサッと収縮させて水流を作り、まるで天然のウォッシュレットのようにお尻や巣穴のフンを洗い流す。

 また貝やカニのような同居人もおり、巣穴に居候させる見返りに、残ったカスをきれいに食べてもらったりなんて共生関係も観察することができる。

 U字の巣穴の化石から、ユムシは3億年前からの生き残りであることがわかっている。種全体だけでなく、個体としても非常に寿命が長く、25年生きたという記録がある。

 しかし外敵は多く、カワウソヒラメ、サメ、エイ、カモメ、そして人間によって捕食される。


Fat Inn Keeper Worms of Elkhorn Slough

なぜ大量に打ち上げられていたのか?

 ではなぜカリフォルニアの海岸にこんなにも多くのユムシが打ち上げられていたのか?


 この現象はエルニーニョの年などにしばしば起きるもので、砂の中で暮らすユムシたちのリスクを教えてくれる。強い台風が海岸を襲うと、その後に大量のユムシの死骸が砂浜に転がることになるようだ。

 これまでのところユムシ救済計画が発足したという話は聞かないが、さて昨今頻発する大型台風で彼らが苦しい年の瀬を迎えているようなことはないのだろうか?

References:Ask the Naturalist | What Caused this Mass Worm Stranding? - Bay Nature/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52285599.html
 

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