12月7日「おっさんずラブ-in the sky-」テレビ朝日系)が放送された。この第6話で、筆者はやっとフライトできたような気がする。

勝算2パーセントだったお試し期間
「まずは1週間。一生のお願い!」

押し切られる形で、春田創一(田中圭)は四宮要(戸次重幸)と“お試し”で付き合うことになった。春田が1枚カードを引くと、そこには四宮が考えたイベントが書いてある。それを2人が実行する7日間が始まったのだ。

正直、春田は乗り気じゃなかった。理由は、先輩として、友人として四宮が好きだから。恋人として付き合う気はない。けど、向こうの恋愛感情にNOを示し、関係が壊れるのは嫌だ。
「何を今さら……。世の中、そんなもんでしょう!」
根古遥(MEGUMI)の言うことはもっともである。意外にこの人、重要なストーリーテラーとして毎回いい仕事をしている。

もう1人のキーマンは、今回から赴任した新人CA・獅子丸怜二(山崎育三郎)。
「なんか俺、男にばっかモテるんだよな。まあ俺は、男とか女とかはどうでもいいんだけどね。好きになるかどうかって結局、人の問題じゃないかな」

始めはおっかなびっくりだった春田も、次第に四宮との毎日が楽しくなった。何しろ、四宮が用意するイベントは毎日他愛のないものばかりなのだ。1日目「オムライスを作ろう」、2日目「おもちゃを作ろう」、3日目「タピオカを飲もう」、4日目「銭湯に行こう」、5日目「バッティングセンターに行こう」、6日目「まったりDVD鑑賞」。
どれも、大仰にイベント化するまでもない。こんなので恋人に発展するのか? と心配になる内容ばかりだ。何だったら「キスをしよう」とか「ハグをしよう」を混ぜてもいいはずなのに。でも、これが四宮。自分より春田の気持ちを大事にする優しさが出てしまっている。そんな信頼に足る先輩だからこそ、春田は四宮との関係を壊したくなかったのだが。

7日目、最後に残ったカードを引くと、そこに書かれているイベントは「手をつなごう」だった。固まった春田の手を取り、四宮は握手をした。どう見ても握手だった。恋人のようなつなぎ方じゃない。

ババ抜きのようなテイを取っていた、イベント選びの毎日のルーティン。でも、四宮は全カードに同じイベントを書いて春田に選ばせていた気がする。そうして、最終日に「手をつなごう」を用意した。勝算が2パーセントと考えていた四宮は、始めから春田と付き合おうと考えていなかった。だから、「1週間、思い出をありがとう」の気持ちが控えめな手の握り方に表れた。

「シノさんにちゃんと伝えたいことがあります」と切り出した春田に、四宮は「俺もだ」と返した。
「俺は……春田とは付き合わない。1週間、悪かったな(笑)」(四宮)
春田の気持ちがわかっているから、自ら言うことで相手の本心を言いやすくしている。こんなときでも春田のために笑う四宮。強引な押しで始まったお試し期間は、四宮の理性と優しさの詰まった1週間で終わった。

今夜は成瀬が四宮にアピールする
お試し期間の5日目「バッティングセンターに行こう」で、2人は武蔵&成瀬竜(千葉雄大)と鉢合わせした。武蔵から春田とのインスタントラブを追及されてうつむく四宮を成瀬は目で追い、そんな成瀬を見て春田は固まった(だから、四宮はバットを振りながら「こっち向けつってんだよ!」と絶叫した)。大事なものを失わないため、春田は成瀬に伝えに行った。

春田 「俺……シノさんとは付き合えないってちゃんと言ってきたぞ」
成瀬 「……で?」
春田 「あっ……、一応報告」

四宮を責める武蔵に抗い、成瀬は徹底的に四宮をかばった。
武蔵 「お前、なんでそんなに四宮をかばうんだ? 成瀬、それ恋なんじゃないのか?」
成瀬 「えっ? え……? え〜っ!? えーっ! えーー! はあ!? はあ? ない、ない、ない、ない!」

激しく動揺する成瀬。まさか、自覚がないとは思わなかった! 四宮への恋心を武蔵に気付かされ、春田に報告を受けた成瀬は、たまらず四宮の元へ向かった。
「俺は……お試しなんかいらないです。俺が忘れさせてあげるから」(成瀬)

今まで本気で人を愛したことのない成瀬は、四宮に抱きついて暴走する。そんな成瀬のことを四宮は信じられない。
「本気だよ。だけど……どうしてあげたらいいかわかんないんだもん」(成瀬)
本気の相手に何をしていいかわからないから、距離の詰め方はたどたどしくなる。前回、春田に「俺じゃダメか?」と迫られた成瀬が、今度は四宮にそのまま同じことをしている。

次回予告を観ると、「いいかげん諦めてくれ、迷惑だ!」と激昂する四宮の姿があった。冷たくすることで成瀬を春田に向かわせようとする……という態度は、あまりにも四宮である。想像しやすい三角関係だ。
5話は春田が成瀬に告白し、6話は四宮が春田にチャレンジした。結果は、どちらも玉砕。そして、7話は成瀬が四宮へアピールする回だ。ここで成瀬がふられたと仮定する。でも、「もう、あんたとしかキスしたくない」と言うほどの彼の気持ちが春田へ向かうとは考えづらいのだ。in the skyは、もうあと2話しか残っていないのだから。

ようやくだ。脚本では描かない余白部分を観ている者が想像し、1人1人の登場人物に感情移入していく「おっさんずラブ」の醍醐味が、やっと生きてきた気がする。
(寺西ジャジューカ)

土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
音楽:河野伸
主題歌:sumika『願い』(ソニーミュージックレーベルズ)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
※各話、放送後にビデオパスにて配信中

イラスト/サイレントT