仕事は早いが些細なことにイライラしがち、頼み事を断れずイエスマンになりがち、人前で緊張しやすい……これらは単に性格の問題ではなく、じつは体の不調と密接に関係しています。6タイプの心身の傾向を知って、自分にあった食事をとることで、驚くほど不調が消えて心も楽になると語るのは、テレビでも大人気のダイエット外来ドクター・工藤孝文氏。『心と体のもやもやがスーッと消える食事術』を上梓した内科医が教える「目からウロコの体のはなし」。

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病名のつかない不調のほとんどは6タイプに分かれる

――今回なぜ心身を6タイプにわけた新しいコンセプトを打ち出したのでしょうか。

工藤 私は肥満治療・糖尿病治療が専門の内科医ですが、漢方医でもあるので、一般的な病院で「病名がつかない」とさじを投げられた患者を多く診てきました。これまでのべ10万人以上の患者さんを治療する中、はっきりした病名のつかないもやっとした不調は、ほとんどが表の6タイプに分かれることを発見しました。

――頭イタイタ型、肩ガチガチ・首ロック型、胸バクバク痛む型、喉ツッカエ型、目グルグルor耳キーン型、下痢ピー型の6つですね。

工藤 心身の傾向として、頭痛に出やすいタイプ、胸痛に出やすいタイプ……といった具合に、この6タイプにわけて考えると非常に合理的で、治療をしやすいんです。たとえば頭痛と胸焼けとイライラ感、胸痛と対人不安などはないまぜになって患者さんは訴えますが、多くのお医者さんでは面倒くさがってあまり診たがらない(笑)。喉のツッカエをとる薬なんて西洋薬ではないですしね。

 とくに適応障害の方は、いわゆる「うつ」といった精神面の症状にとどまらず、めまいや喉の違和感などの体の不調を強くともなってしまう場合も多い。なのに、一般的には「軽いうつですね」とか「自律神経失調症ですよ」とすまされてしまうことも多く、ご本人が苦しみます。そうした病名と病名のあいだにある不調を消すには、心と体をクロスオーバーで捉えてはじめて、対症療法ではない根本治療をすることができます。

慢性的頭痛を抱えイライラしやすい「頭イタイタ型」

――このタイプ分けは、野口整体の「体癖」の概念に近いのでしょうか?

工藤 「体癖」という、骨盤によって左右される体のエネルギーの流れ方の癖からその人の性格・気質も含んで体を10タイプにわけた身体観は、後世に絶大な影響を与えましたね。体の不調を表面的にとらえるのではなく、メンタルも含んでトータルで分類したことは歴史的意味がありました。ただ、西洋医学の観点からみると違和感を感じる部分もありますし、現代人の体の実態にそぐわない部分も感じます。21世紀の「使える」工藤版体癖として今回のコンセプトを打ち出しました。使い方は簡単、6つの中でいま一番強く感じている不調、もしくは一番優先的に治したい不調がご自身のタイプです。

――それぞれのタイプについて詳しく教えてください。

工藤 まずAの「頭イタイタ型」は慢性的に頭痛を抱え、イライラしやすいタイプです。仕事がバリバリできる有能な方が多いのですが、頭の疲れと体の疲れがアンバランスで、脳だけがパソコンの容量オーバーみたいな感じになってダウンしています。キャリアウーマンタイプで、手足の冷えが強く、光や音に敏感で、胸焼けしやすい傾向があります。性格的には、仕事ができて決断力がある反面、人の話をあまり聞かずに、自分の意見を曲げなかったりちょっと独善的になりがち。

――このタイプが楽になるコツはなんでしょうか。

工藤 慢性的に頭痛を抱えていると相当イライラしますし、痛みはうつの原因になります。じつは腰痛や脊柱管狭窄症とかヘルニアの人がうつになることってよくあるんですよ。なので、まずは痛みをとる必要があるのですが、頭イタイタ型の人は胃腸の冷えが強く、食事療法としては内臓の冷えをとることが一番大切です。詳しくは本書をご覧いただければと思いますが、体内の冷えが日々の食生活のなかでとれてくると自然と頭痛が消えて、対人関係も温かくゆるんできます。

もっとも太りやすい「肩ガチガチ・首ロック型」

――Bの「肩ガチガチ・首ロック型」についてはどうでしょうか。

工藤 慢性的に首や肩がこり、不安感が強いのがこのタイプですが、パソコン作業が原因かなと思っている疲れ、じつは対人関係のストレスからきている場合も多いんです。とにかく人に気を遣ってしまうタイプで、頼まれごとを断れず、会社ではイエスマンになりがち。人に気を遣うとセロトニンが不足しますから、普段から糖質を多く摂ってしまいやすく、すべてのタイプの中でもっとも太りやすい(笑)。冷えが強くて便秘になりやすく、のぼせやすくて、高血圧を併発していることも多いので、体にこもった熱を逃がして糖質依存を断ち切る食事が大切です。

 私の体質もこのBタイプなのですが、人から嫌われたくないタイプなので、いい面で力を発揮できると聞き上手だったり受容能力が高かったりします。クレーマー処理なんてとてもうまい(笑)。自分で背負いすぎないことが、このタイプが楽になる道です。

「胸バクバク痛む型」「喉ツッカエ型」は?

――なるほど! Cの「胸バクバク痛む型」はいかがでしょうか。

工藤 動悸がしやすかったり胸痛を抱えているのですが、周りからすると一見不調があるようには見えないタイプです。胸の脇あたりに苦しい感覚があって、精神不安が強く、円形脱毛症になりやすい。他人の細かい言葉尻が気になって、人前で緊張しやすく、ともすると被害妄想をいだきがちです。物音にも敏感で、自己肯定感が低いのが特徴です。自律神経が乱れているので、「気」と「血」のバランスをとる食事法が肝心になってきます。

 タイプDの「喉ツッカエ型」はつねに喉に違和感・異物感があって、声を出しにくく、よく咳払いをします。心理的には「言いたいことが言えない」感覚をもっていて、気分がふさぎがちです。人と話すときにメモをとるような几帳面さがあって、やせていて神経症的な傾向が強い。滞った気のめぐりをよくする食生活が改善の近道です。

の代謝が悪くむくみやすい「目グルグルor耳キーン型」

――Eの「目グルグルor耳キーン型」の特徴はなんでしょうか。

工藤 漢方用語で「水滞」といって、体のなかの水の代謝が悪いと、めまいや耳鳴りといった症状に出ます。めまいは急性期の症状で、お盆明けとか季節の変わり目とか、職場環境が変わったりとか、何かの節目に出やすく、台風や低気圧が近づくと出るという方もいます。体全体がむくみがちで、対人関係のストレスに敏感な状態です。

 耳鳴りはすべてのタイプのなかでもっとも治療が難しいのですが、どちらにも共通するのが天候によって気分が変わりやすく、朝テンションが低く、顔色が悪いという傾向で、我慢強くて、不愉快な相手と距離をとるのが下手です。妙に我慢強いというか頑固なところがあって。

 めまいと耳鳴りはどちらかの症状で出ることがほとんどで、併発するケースはあまりありません。両者ともに体の水はけをよくする食習慣が重要になってきます。

男性に多い「下痢ピー型」

――最後の「下痢ピー型」だけXなのはなぜですか?

工藤 じつは、A~Eまでの5つのタイプは8割型便秘を併発していて、最後のXはとくに男性に多く見られる体質だからです。腹部膨満感、腹痛があり、冷えをともなって下痢しやすく、過敏性腸症候群だったりします。「腸脳相関」でお腹の調子はメンタルに響きますから、このタイプの方は愚痴っぽく粘り強さに欠けがち。その場しのぎで仕事のストレスを回避しがちで、不測の事態への対応が苦手です。腸内環境と自律神経を整える食事で本来の力を発揮できるようになってくると、繊細なぶん周りへの気配りもできて集中力の高い仕事をします。

オーダーメイド」の食事法により、7割以上の方が改善

――どのタイプの方も職場に確かにいるいる!と思えるから不思議です。

工藤 心と体は密接にリンクしていますから、不調の出方と性格・気質にはパターンがあるんです。そこを切り離して、頭が痛い人にただ頭痛薬だけ出して終わりという治療をしても、その人の生活の質はあまり上がらない。たとえば周りに気を遣いすぎている人だったら「もう少しわがまま言ったほうがいいですよ」とか、メンタル面のケアも同時にやったほうが患者さんは楽になります。その人の体に欠けがちなもの、不調の傾向をふまえて、食事で日々の体質から改善したほうが心身は早く楽になります。実際、本書の推奨食で、どのタイプの不調も1カ月の食事で7割以上の方が改善しています。

 アーモンドがいいとか、ココアが最高だとか、一過性の健康食のブームが来ては去って消えていきますが、万人に効く食事・食材なんてありません。ご自身のタイプを見極めた「オーダーメイド」の食事法こそ、効率的に不調を消して、心身のバランスを整えることができます。最新のエビデンス東洋医学の叡智を踏まえた本書には、長年の治療のなかで培った知見をすべて注ぎ込みました。日々の食事でみなさんの心身は必ず楽になります。本書がその一助になればこれほど嬉しいことはありません。

工藤孝文(くどう・たかふみ)

内科医。福岡大学医学部卒業後、アイルランドオーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行う。糖尿病ダイエット治療・漢方治療を得意とし、NHK「ガッテン!」、日本テレビ世界一受けたい授業」、フジテレビホンマでっか!?TV」などに肥満治療評論家・漢方治療評論家として出演。『緑茶コーヒーダイエット』『疲れない大百科』『やせる出汁』など著書多数。

(工藤 孝文)

工藤孝文氏