カリフォルニア州北部ポイントレイズ国定海岸のドレイクスビーチ(Drakes Beach)が今月6日、ある生物で埋めつくされた。それは非常に奇妙な形をしており、SNSでは「これはいったい何?」と騒然となった。すると同州バークリーを拠点とするメディア『Bay Nature』が特集を組み、この生物の謎に迫った。

体長25センチ(約10インチ)ほどの乳白色の生物が大量に打ち上げられた、カリフォルニア州北部にあるドレイクスビーチ。野生動物の教育を推進する非営利団体「The Western Section of The Wildlife Society」の生物学者イヴァン・パー氏(Ivan Parr)は『Bay Nature』に、この生物が海産無脊椎動物の“ユムシ”であることを明かし、「通常は干潟などの浅い砂泥地に生息していますが、最近の嵐により海岸に打ち上げられたようです」と語っている。

イヴァン氏によると、ユムシは西海岸のオレゴンからバハカリフォルニア間に生息しており、最もよく見られるのは北カリフォルニアで、砂泥地にU字形の巣穴を掘り、干潮時はその穴に身を潜めているそうだ。細長いソーセージのような形が男性器を彷彿させることから、英語では「ペニス・フィシュ(penis fish)」などとも呼ばれており、寿命は25年と意外に長い。

口、肛門、内臓を持つユムシは、満潮時には身体の先端にある口(吻)から粘膜の網を広げ、蠕動運動をしながら海水を吸い込んでいく。こうすることで粘液にプランクトンの死骸や排泄物などの有機物が付着し、これを食べて生きているそうだ。また余分に付着した有機物は破棄するそうで、奇妙な身体の形は巣穴の中で生きていくのに都合が良いようにできているのだという。

またユムシの化石は3億年前のものが発見されており、その天敵にはカワウソヒラメ、サメ、エイ、カモメ、そして人間も含まれている。

ちなみに日本では北海道ルッツ和歌山でイイ、九州でイイマラなどと独自の呼び方があるという。アミノ酸を多く含んでおり、北海道の一部の地域では刺身や酢味噌和えなどにして食べるようだが、一般的にはカレイヒラメ、マダイなどの釣りエサとして活用されている。また海外では韓国、中国などで食用として重宝されており、「コリコリして美味しい」「ミル貝のような味」「癖がなくて好き」といった声も多数あがっている。この日のドレイクスビーチでは、打ち上げられたユムシをエサに宴を開いていたのはカモメだったようだ。

画像は『Bay Nature 2019年12月10日付「Naturally, 2019 Closes with Thousands of 10-Inch Pulsing “Penis Fish” Stranded on a California Beach」(Photo courtesy David Ford)(Photo by Kate Montana, iNaturalist Creative Commons)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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