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水曜日、午前10時3分、M5号線北行き、グロスター・サービスエリア

助手席に座る英国版AUTOCARの協力ライターマットジョイは今朝のテストのことを「コールスタートテストと呼んでいるが、確かにそうかも知れない。

昨夜泊まったホテルは決して値段も高過ぎずラザニアもまあまあだったが、EV向け充電器は設置されていなかったのであり、全員が各車に乗り込み、午前9時15分ちょうどにミルトンキーンズに向け出発したとき、もっとも短い航続可能距離を示した車両の表示は40km以下に留まっていた。

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初日が終わった時点でのeトロンモデルXそれぞれの走行距離と残りの航続可能距離を合算した数値の差はなぜか18.5kmしかなかった。コースティングを多用したせいでアウディレンジメーターは航続可能距離を過剰に見積り過ぎたのかも知れないが、それでもアウディにとっては印象的な結果となった。

ふたたびメルセデスステアリングを握ることにしたがどうやら正解だったようだ。

午前9時40分にはこのクルマの非常に分かり易く、頼りになるナビゲーションシステムのお陰でグロスターのサービスエリアへと到着しており、オンライン上で充電可能なエコトリシティ社が運営する50kWの交流急速充電スタンドまで見つけていた。

12.69ポンド(1667円)と1時間15分で42kWhまで充電が完了すると、160km弱の航続距離を手に入れることができた。これで余裕を持って最終目的地へと向かうことが出来そうだ。

他のドライバーたちは苦労していたようだ。

アウディのナビが最初に示した急速充電器はまだ設置されておらず、その次には使用不可能充電器を表示している。わたしに遅れること45分、eトロンジョイグロスターのサービスエリアに到着したときには、EQCと同じ充電器からの充電が必要な状況だった。

これが未来? 雨除けは必須

だが、少なくともわたしもあと30分は充電を続ける必要があり、さらには英国版AUTOCARで写真を担当するベン・サマーレル-ユーデがステアリングを握る、明るいオレンジに塗られたIペイスが次に順番を待っていた。

充電器の位置表示を行うzap-map.comによれば、2016年時点では約4500カ所だった急速充電ステーションの数は、いまやその2倍にも達しているという。

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英国の充電ネットワークはまだまだ道半ばだ。

おそらく近隣では唯一の急速充電スタンドに並んでいると、まるで1600km四方にひとつしかないガソリンスタンドにいるように感じるが、充電には普通のガソリン車の20倍もの時間が必要となる。

これが未来だろうか? 残念ながらいまはそうは思えない。

ベンが問題無く充電が行えていることを確認出来たので出発することにした(その前に充電しようとしたマイケルウッドのサービスエリアでは、Iペイスが「初期化」を拒否している)。

この気持ちが単なる思い上がりや他人の不幸を喜ぶようなものなのか、単にヒーター付きシートのせいなのかは分からないが、間違いなく雨に濡れずに済んだことには感謝していた(エコトリシティ社関係者殿:充電スタンドに雨除けを設置するのは素晴らしいアイデアです)。

午後1時8分、ミルトンキーンズ・コーチウェイ

ようやく戻ってきた。他の日や他のクルマだったら、4時間で180km近くを走破する旅はもっとハードなものに感じたに違いないが、今日はそんなことはなかった。

どんなクルマに乗っていてもM25号線であれば、ラッシュアワーに平均時速50km/h近くを確保することは出来るかも知れないが、(ほとんどのEVオーナーはめったに遭遇しないだろうが)ほとんど空のバッテリーという不利を背負ってスタートしたにもかかわらず、EVに乗ってコッツウォルズを横断する旅でこの平均時速を達成したのは、思っていた以上の結果だった。

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テスラ:95kWhのバッテリーによって航続距離は507kmに達する。

そして、ジャガーアウディの2台は、まさに恐れていたとおりの状況に見舞われている。Iペイスの場合、それは3回に2回は拒絶する急速充電が理由の一部であり、eトロンの場合には、不運とナビゲーションシステムが唯一の問題だった。

何度か失敗はしたもののA40号線での急速充電のあと、午後2時50分にジャガーは今回の旅の出発点へと戻ってきたのであり、アウディは10分差で最下位に沈んでいる。

信頼性と実際の公道上での安心感、そして2地点間を移動する速さに関して、午後12時33分にミルトンキーンズへと帰還することに成功したテスラに敵うモデルはいない。

マイケルウッドのサービスエリアにあるテスラスーパーチャージャーで、このクルマは30分以内に225kmもの航続可能距離を回復することに成功しており、この充電速度はEQCの3倍にも達していた。

これほどのペースで充電を行うことができるテスラスーパーチャージャーは現在英国中に55カ所あり、さらにこのスーパーチャージャーネットワークを補完するように、約300基の充電スタンドが設置されている。

オールラウンドな魅力 充電ネットワークの重要性

こうしたテスラ製充電ネットワークの充実ぶりや、この24時間で実際に目撃したテスラ以外の充電ネットワークの脆弱さを知れば知るほど、もし日常的に自宅以外の充電ステーションを使用せざるを得ないような場合、現時点でテスラ以外の選択肢などほとんど考えられないだろう。

それでも、モデルXが今回の勝者ではない。もし、その素晴らしい充電ネットワークほどの出来栄えをこのクルマが見せてくれたなら、間違いなくテスラは勝者に値するだろう。

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モデルX:ソーンダースの顔に浮かぶのは本物の笑顔? それとも苦笑い?

だが、自宅と職場周辺に素晴らしい充電設備があるなら、そして長い休みに備えたセカンドカーを所有しているなら選ぶのはジャガーであり、さらに、もし今回のテストが通常のグループテストのようなものだったなら、傑出したダイナミクス性能を誇るこのクルマこそが勝者だったに違いない。

アウディも称賛に値するモデルであり、最下位に沈むなど厳しすぎると思うかも知れない。だが勝者とするには航続可能距離が短すぎた。

だが、勝敗を分けたのは航続距離ではない。

ドライバーアピールではIペイスに匹敵し、快適な乗り心地と高級な室内空間はアウディに引けをとらず、そして、今回の旅でもっとも効率的に充電ステーションを活用することに成功したEQCこそが勝者だ。

運転が楽しく、広々として、十分な航続距離を備えるとともに、興味深いモデルでもあるEQCは、今回の電動高級SUVを集めた旅で一度もミスを犯すことはなかった。

そして、われわれが経験したとおり、2019年現在、EVにとっては、「問題無く使える」ということがなによりも重要な点なのかも知れない。

最終評価

1位:メルセデス・ベンツEQC

見事な速さとキャビンスペース、高級感と洗練が、現行のライバルたちのなかでこのメルセデス初の電動モデルを、もっとも完成度の高い魅力的なラグジュアリーEVにしている。

2位:テスラ・モデルX

長所と短所がハッキリしているものの、そのスーパーチャージャーネットワークがこのクルマをこの種のモデルとしてはもっとも使い勝手の良いEVにしている。長距離走行が多いEVドライバーにとって他の選択肢は考えられない。

3位:ジャガーIペイス

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電動ラグジュアリーSUV対決

その見事なデザインドライビング性能がこのクルマを他のEVのなかで傑出した存在にしている。公道上でのさらなる航続距離と充電性能の向上が望まれる。

4位:アウディeトロン

4台のなかでラグジュアリーモデルとしてはベストであり、高い洗練とキャビンスペース、十分な航続距離を確保しているが、ドライバーアピールが足りない。

各車のスペック

メルセデスEQC 400 AMGライン・プレミアムプラス4マチック

価格:7万4530ポンド(979万円)
エンジン:非同期式フロント/リア電動モーター
バッテリーリチウムイオン式、実容量80kWh
パワー:408ps
トルク:77.6kg-m
ギアボックス:フロント/リア別置きプラネタリー式シングルスピード
乾燥重量:2495kg
最高速180km/h
0-100km/h加速:5.1秒
航続可能距離:373~417km(WLTP複合基準)

テスラ・モデルX ロングレンジ

価格:8万5700ポンド(1126万円)
エンジン:非同期式フロント/リア電動モーター
バッテリーリチウムイオン式、実容量95kWh
パワー:476ps
トルク:76.5kg-m
ギアボックス:フロント/リア別置きプラネタリー式シングルスピード
乾燥重量:2459kg
最高速249km/h
0-100km/h加速:4.4秒
航続可能距離:507km(WLTP複合基準)

ジャガーIペイス EV400 HSE

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eトロンの優先事項は洗練された乗り心地であり、ドライバーアピールではない。

価格:7万4995ポンド(985万円)
エンジン:非同期式フロント/リア電動モーター
バッテリーリチウムイオン式、実容量85kWh
パワー:400ps
トルク:70.9kg-m
ギアボックス:フロント/リア別置きプラネタリー式シングルスピード
乾燥重量:2133kg
最高速:200km/h
0-100km/h加速:4.8秒
航続可能距離:470km(WLTP複合基準)

アウディeトロン55クワトロ

価格:7万1520ポンド(940万円)
エンジン:非同期式フロント/リア電動モーター
バッテリーリチウムイオン式、実容量84kWh
パワー:408ps
トルク:67.7kg-m
ギアボックス:フロント/リア別置きプラネタリー式シングルスピード
乾燥重量:2490kg
最高速:200km/h
0-100km/h加速:5.7秒
航続可能距離:417km(WLTP複合基準)

番外編:充電のヒミツ

サイモン・デービス

ベンやマットミルトンキーンズへの帰路で経験した充電における災難を聞いても、モデルXに乗っていると思わずにやりとしてしまう。

なによりもテスラが誇る素晴らしいスーパーチャージャーネットワークこそがモデルXでもっとも印象に残ったポイントだった。簡単に使うことができ、その充電スピードは驚きでしかなかった。

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サイモン・デービス

それでも、クルマそのものの出来にはややガッカリさせられた。乗り心地は洗練されているとは言い難く、これほどの価格を掲げたモデルとしてはキャビンに侵入してくるロードノイズもまったく許容できるレベルではなかった。

EQCは運転していないが、ステアリングを握った3台のなかでどれか1台を選ぶとすれば、アウディの心休まるキャビンと快適さを優先したシャシーセッティングに心惹かれることになるだろう。

ベン・サマーレル-ユーデ

実際に運転してみればIペイスが他の3台を大きく凌ぐモデルだと考えられていたが、ミルトンキーンズへの帰路を経験した後では、このクルマに7万5000ポンド(985万円)を支払う気には残念ながらなれない。

最初は単に自分が不幸にも故障した充電スタンドに出くわしただけだと思っていたが、毎回必ず充電を終えるまでに最低1回は「初期化失敗」に見舞われ、何回かはまったく充電できなかったことを考えると、車両そのものに電気的な不具合が発生していたと考えざるを得ない。

今回参加したのは長期テスト車両でもあり、担当しているクロプリー編集長には、もう誰も雨の中でバッテリー切れに見舞われることの無いよう是非この不具合を解消して欲しいと願っている。

マット・ジョイ

eトロンのナビが自信満々に宿泊したホテルから30数キロ離れたグロスター郊外にあるエコトリシティ社の充電ステーションへのルートを表示したのは、ミルトンキーンズへと戻る最後の145kmへと出発する前だった。

残念ながらこの充電ステーションはまだ設置されておらず、これがこのクルマの最大の問題を表していた。

eトロンは同じような内燃機関モデルに匹敵する素晴らしいドライビング経験を楽しませてくれたが、充電ネットワークに関しては依然として運任せであり、まったくストレスフリーとは言い難い状況だった。

今回の4台のなかで、テスラは決してクルマとしてベストな出来栄えという訳ではなかったが、その充電ネットワークの充実ぶりは群を抜いており、この状況が変わるまで個人的に選ぶべきモデルは決まっている。


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