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2679年間、一度も途切れず守り抜かれた男系継承の先例は、絶対の掟なのだ

 “あまり”にも頭が悪いから、“甘利”明。辛口の論者からは嘲笑される。政権与党の自民党で、選挙対策委員長という幹部の座にある。とはいうものの、迂闊さを反省して前言を取り消したのだから許してもよかろう。「女系天皇も考慮すべきだ」との発言だ。

 女系天皇の何が悪か? 万世一系を破壊するからだ。では、万世一系とは何か。男系天皇による皇位継承である。これに一度も例外はない。2679年の間、一度も途切れることなく続いてきた先例だ。さすがに甘利氏も、軽々しく「女系も……」などと言えないと理解したようだ。

 現在、次世代の男系男子の継承者は悠仁親王殿下、ただ御一人。これまで続いてきた皇室を、すなわち日本の歴史を御一人で背負われることとなる。だからこそ、いかに皇室を国民が支えていくかを考えねばならない。すなわち、これまで我々の御先祖様が守ってきた先例を、どのようにして守り抜くかを。

 ところが、先例など二の次だと言ってのける者がいる。曰く、悠仁親王殿下だけに負担をかけるのは不合理だ。曰く、そのような状況では、奥方となる女性への重圧は非人道的となる。曰く、そのような状況で殿下と結婚してくれる女性が現れるのか。云々。最後には「もはや先例など守れない」と締める。そして、女系天皇を容認せよ。そこに至るまでに、女帝や女性宮家を認めよと主張する。このような女系論者も大半は、親切のつもりで言っているのだろう。

 では、聞く。先例を守れないなら、何をやっても良いのか?

 女帝や女性宮と民間人が結婚し、その子が天皇になっても良いのが女系論だ。ならば、中国共産党の幹部の息子が内親王殿下の婿となり、その子が天皇となっても良いのか? それが不可だと言うなら、不可とする原理は何か?

 かつて、弓削道鏡や足利義満のように、皇位簒奪に肉薄した逆臣もいた。もし女系天皇が許されるなら、道鏡や義満は女帝や内親王と結婚し、その子を天皇に据えるだけで良かったではないか。ところが、できなかった。先例の壁があったからだ。道鏡や義満を防いだ壁だ。

 朝廷において、新儀は不吉。皇室は吉例を積み重ねることによって、守られてきた。皇位継承において一度も途切れることなく守られてきた男系継承の先例は、絶対の掟なのだ。

 歴史において、多くの王朝が断絶の憂き目を見た。世界で唯一、日本だけが皇室を守り抜いてきた。先例を守り通してきた。後継者がいないから女性皇族と民間人の男性との子供を皇位に就けようとか、外国人を連れてこよう、などと安易な道を選ばなかった。

 悠仁親王殿下がおわすのに、軽々しく先例を捨てるなど、皇室の重みを知らぬ者の言である。

 甘利明氏如き、およそ皇室史に詳しいとは思えない小者が何を言おうが勝手だが、政権与党最大の実力者の言とあらば、聞き捨てならない。二階俊博自民党幹事長である。二階氏は皇位継承に関して、「男女平等民主主義の原則に従って検討すれば、おのずと答えは出る」と言い放った。

 ほう。男女平等民主主義を皇室に持ち込んでよいと、いつ誰が立証したのだ? 寡聞にして知らない。

 そもそも二階俊博とは、どのような人物なのか。

 昭和14年まれの80歳。和歌山県議の息子に生まれ、中央大学法学部を卒業後は、元建設大臣の遠藤三郎代議士の秘書となる。和歌山県議を2期務めた後、闇将軍として権勢を振るった田中角栄の後押しで衆議院議員に当選。44歳の初当選なので、遅咲きだ。

 竹下登が田中派をクーデターで簒奪したときは、大勢が決してから参画。竹下派に属する。その竹下に小沢一郎が謀反を起こした時は、積極的に参加。小沢に従い、自民党を離党した。この間、2度の運輸政務次官を務め、族議員の道を歩む。

 野党暮らしの間は小沢に従い、自由党国会対策委員長として、自民党との連立政権樹立を主導する。この時の交渉相手が、野中広務と古賀誠である。また、この時期に創価学会公明党との結びつきを強める。

 小沢が自民党と袂をわかって下野した時は、保守党(後に保守新党)を結成して与党に残留。運輸大臣となる。その後、保守新党総選挙で惨敗して、二階も自民党に復党する。

 小泉郵政解散の時には、総務局長として選挙実務に当たり、大勝の立役者となる。復帰後は常に主流派で、経済産業大臣・国会対策委員長・総務会長など、要職を占める。

 その間に行われた自民党総裁選のすべてで、勝ち組にはせ参じている。それまで2回連続敗れていた麻生太郎などは、二階が自陣営に現れた瞬間に勝利を確信したとか。

 ’09年の自民党大敗総選挙二階派は二階以外の全員が落選。伊吹派に合流する。

 政権復帰後、派閥領袖の伊吹文明衆議院議長に就任するや、二階派衣替え、安倍内閣では幹事長として今や政権与党最大の実力者となっている。

 二階氏の政治経歴には、特徴がある。まず、田中~竹下~小沢の系統に連なる。建設業界に強い派閥だ。また、野中や古賀、創価学会公明党も加え、親中派と親しい。自身も選挙区に江沢民の碑を建てようとした筋金入りの親中派である。ライフワークは国土強靭化、派閥のパーティーでも「国土強靭化」を前面に打ち出す、土建業者の利益代表である。

 二度も派閥を失っているが、そのたびに復活している。主流派を見分ける嗅覚は抜群で、政界遊泳術は現在の政治家で随一だろう。

 本欄で何度も指摘したが、今の安倍内閣の権力構造で、二階氏は中枢に居座る。「安倍一強」を支えるのは、安倍首相の出身派閥である細田派と麻生、二階派である。この三派が組む限り、自民党の過半数である。麻生財務大臣は財務省の走狗であり、二階幹事長の力の源泉は創価学会とのパイプだ。安倍首相は、法律は内閣法制局、予算と行政は財務省、選挙は創価学会丸投げだから、彼らにだけは逆らえない。

 巷で噂の「桜を見る会」を安倍首相は軽く収めようとしたが、二階幹事長に苦言を呈されると無視できない。その二階幹事長が女系天皇を示唆した。危険だ。

 万世一系を守るべく、国民が監視しなければならない。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」

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写真/日本雑誌協会