可変機体ってかっこいいよね

1985年に放送された『機動戦士Zガンダム』。今でも人気が高いが、僕もすべてのガンダム作品の中で一番好きなのが『Z』だったりする。

なにせ音楽がいい。キャラクターがいい。そして何よりMS(モビルスーツ)のデザインがどれもこれもいい。今回はこの作品のMSについて、ちょっとした仮説を立ててみようと思う。(文:松本ミゾレ)

エゥーゴよりもティターンズの機体のほうが人気か


先日、2ちゃんねるに「Zガンダムに出てくるMSで一番好きなのは?←通ぶった回答したいんだが」というスレッドが立っていた。スレ主は「何て答えればいい?」と質問を投げかけている。

これに対して、まあいろいろと意見が寄せられている。全体を俯瞰してみるとエゥーゴのMSより、ティターンズの機体のほうが人気なのか、やたらと敵側のMSの名前が挙がっている。

ハイザック
バイアランメッサーラって言っとけばええで」
ガブスレイはアカンですか」
ジ・Oは最初なんやねんこのデブとしか思わなかったけど最近になって良さがわかった。あれは素晴らしい」
ガブスレイが一番完成されとるよな」

こんな感じで、もちろん百式やZガンダムなどの名前も挙がってはいるんだけど、妙に敵MSが目立つ。いわゆる通に見せかけるためだけの方便としての「ティターンズMS」って考えもあるってことなんだろうけど、単純に機体のデザインを評価する意見もあって、本当に好きな人もいるようだ。

僕としてもシンプルにジ・Oが大好き過ぎて、平成になってリリースされたプラモデルの余計なアレンジが許せなかったタイプである。次点でバウンド・ドックを挙げたいが、どちらもデザイナーは小林誠氏という共通点がある。あの人は天才だ。

Zガンダムを惜しいところで倒せないジェリドの業

今回のスレッドにおいて名前が複数挙がっていたMSの多くはティターンズ製のものであったことは前述のとおり。そしてもう一歩踏み込んでみると、そのMS群の中には『Z』においてなかなか不遇な扱いのエースパイロット、ジェリド・メサの乗機が目立つ。

ジェリドは作中前半から出ずっぱりの、カミーユのライバルである。ハイザックに始まり、最終的にはロザミアの乗機であった強化人間用の可変MAバウンド・ドックまで、実にさまざまな機体を乗りこなしていた。

いわゆるやられ役なので肉薄はするもののカミーユを倒すことはできないままだったが、時折奮起しては主役を撃破寸前にまで追い込んだことはある。特にガブスレイに搭乗していた際の鬼神のような活躍はよく知られている。

また、彼の中盤からの乗機となったバイアランもなかなか強い機体であった。TV版でカミーユと心を通わせたフォウを死なせ、乗機のサイコガンダムを行動不能にしたのもジェリドバイアランであったし、アクシズの旗艦グワダンに損傷を与えた。さらにはエゥーゴのアポリーを戦死に追い込んだのもジェリドバイアランであった。

……思うに彼は、視聴者にとってはティターンズにおけるMSの数々の性能を画で見せてくれるデモンストレーションのための存在だったような気もする。だからこそ、通に思われたいという声に呼応して「だったらこれはどうだ」と、ジェリドが運用していた機体名が挙げられているのではないだろうか。

ジェリドの最期はかなり惨めな終わり方をしていた。彼は劇中においてカミーユの母を殺し、同僚を殺し、心を壊す一因にもなった。しかし彼はまた、カミーユに全てを奪われた男でもある。僕ら視聴者はどこかで無意識に、そういうジェリドの非業めいたものに共感し、彼の乗機に特別の愛着を感じているのではないだろうか。