(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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「党内抗争がない」という危機

 安倍晋三政権が憲政史上最長の在任日数となり、今もそれを更新し続けている。これに公然と反旗を翻す自民党議員はいないのか。かつてなら池田勇人には佐藤栄作がいた。また田中角栄には、三木武夫、福田赳夫大平正芳中曽根康弘など対抗する政治家が存在していた。

 今の自民党はどうだろうか。安倍首相に対抗する政治家が存在しない。

 自民党には7つの派閥がある。衆参所属議員数が多い順に言うと清和政策研究会(会長:細田博之、97人)、志公会(会長:麻生太郎、55人)、平成研究会(会長:竹下亘、54人)、志帥会(会長:二階俊博、47人)、宏池会(会長:岸田文雄、47人)、水月会(会長:石破茂、19人)、近未来政治研究会(会長:石原伸晃、11人)となっている。

 かつては派閥の長は、総理・総裁の座を目指していた。そのための派閥であった。だが今はまったく違う。そもそも安倍首相自身が派閥の長ではない。安倍首相が所属する清和政策研究会の細田会長は、総理の座を目指してはいない。麻生氏、竹下氏、二階氏も同様である。目指しているのは岸田氏、石破氏、石原氏の3人だけである。

 では何のために派閥は存在しているのか。1つは大臣や党の主要役員にありつくためのポスト獲得互助組織としての役割だろう。もう1つは、小選挙区制のもとで党の公認を取り付けるための役割である。いずれにしても党の執行部に対する“ゴマすり集団”と化しているのが現在の自民党派閥である。

 これでは政党としての活力は生まれない。「党内抗争がない」ということこそが、自民党の最大の危機なのではないか。

安倍政権に抵抗するのは石破氏だけ

 唯一、これに対抗しているのが石破派である。だが、そのために石破茂氏は徹底的に冷や飯を食わされている。多くのアンケート調査で、次期首相にだれがふさわしいかという問いに、石破氏を挙げる人が圧倒的に多い。ところが自民党内では応援者が出てこない。すべてが執行部を見るヒラメになっているからだ。

 この点で、11月20日から12月2日までの期間に実施されたロイターの企業調査が非常に興味深い(12月6日付「ニューズウイーク日本版」に掲載」)。約250社程度から回答があったそうである。

 麻生氏や二階氏から安倍首相の任期延長論があがっているが、59%が2021年9月の任期満了が望ましいと回答している。しかも、「2選までというルールをあえて変えて3選したのでここまで。絶対的な権力は腐敗する」(化学)、「すでに腐敗が顕在化している」(食品)との意見も数多く寄せられているそうだ。長期政権の弊害として「ごまかしや隠ぺいが目に余る」(サービス)といった指摘が多数あったという。

 政策面についても「アベノミクスは失敗。日銀のマイナス金利政策ではインフレ率2%を達成できなかった」(卸売)など、経済政策への期待が外れたとの回答もあったそうである。

 次期首相についても、7月の調査では安倍首相小泉進次郎氏が高かったが、今回の調査では石破氏が大きく伸ばしているという。

 シビアな世界で生きている企業経営者は、政治もよく見ているということなのだろう。

あまりにも野放図過ぎた

「桜を見る会」への批判が止まらない。16日にANNテレビ朝日系列)が発表した世論調査によると安倍内閣の支持率は、支持するが40.9%、支持しないが40.6%とほぼ拮抗するまでになっている。59%の人が国会でもっと説明すべきと答えている。「桜を見る会」への批判が反映しているということだろう。

「各界において功績、功労のあった方々を招き日頃の労苦を慰労するため」という基準そのものがどうにでも解釈できるものだ。

 事実、安倍首相の後援会員が多数招かれていたことや、昭恵夫人の“お友だち”が招待されていたことなどは、私物化の最たるものである。首相の地元・山口県から出席していた県議(当時)がブログに「10メートル歩いたら山口県の人に出会う」と書いていたように、よほど多数の山口県の人が招かれていたのであろう。さらには反社会的勢力まで参加していたというのだから、呆れるほかない。

 出席者名簿を1年未満で廃棄する文書としていたことも重大だ。安倍首相の祖父の岸信介政権の際の招待者名簿があるというのに、今年のはないなどというのは言語道断である。内閣の公式行事の文書を1年未満で破棄するという内規そのものを改めるべきである。

 橋下徹大阪市長テレビで「データとか記録の廃棄とかなくなるということについては、国家権力がそういうことをやるというのは本当に怖い。それは共産国家、独裁国家ですよ」と批判していたが、まったくその通りである。続けて野党に対しても、「シュレッダーの前にみんなで押しかけて『何秒です』とか、しようもないことをやるから国民の支持が行かない」などと述べているが、この指摘もまさしくその通りである。

 そもそも1万8000人以上も集めて「桜を見る会」をやる必要があるのか。6年前の1万2000人から毎年1000人ずつ増えて、ついに1万8000人を超えるまでになってしまった。予算も第2次安倍政権になって、ほぼ1700万円組まれていたが、実際の支出額はこの6年間予算を大幅に上回り、今年などは予算の3倍になっている。

 こんな野放図を菅義偉官房長官も、内閣府の役人も誰も止める人はいなかった。まさに暴走と言う他ない。

 安倍首相や菅官房長官が珍しく「反省する」と殊勝な言葉を使ったが、あまりにも野放図ぶりに弁解しようもなかったのだろう。

 桜の名所など日本にはどこにもでもある。わざわざ新宿御苑まで行く必要などない。私の自宅のまわりには、遊水池があってそのまわりを桜の木が取り囲んでいる。川にも、道路にも桜並木が作られている。その美しさは千鳥ヶ淵にも負けないくらいだ。

 基準を見直すなどと言っているが、難しいと思う。招待というやり方で、微に入り細にわたる基準など作れるはずがない。だったらどうするか。中止ではなく、とっととやめることである。

だらしがない野党

 日本共産党は「桜を見る会」問題の追及でよく頑張ったと思う。中止に追い込んだのだから大したものだ。

 それに比べて立憲民主党国民民主党は、存在感がまったくなかった。立憲民主党枝野幸男代表が立ち上げた際には、それなりに魅力的なところを見せ、国民の支持も集まっていたが、急速に色あせてきたように思えてならない。

 恐らくそのことは立憲民主党国民民主党も気づいているはずである。だからこそ、このところ両党に社民党も含めて合流話が出ているのであろう。

 立憲民主党では福山哲郎幹事長が「『鉄は熱いうちに打て』ではないが、早いほうがいいに決まっている」と述べるなど、衆議院の解散・総選挙も念頭に、早期の合流を目指すべきだという声が強まっている。

 立憲民主党はともかく、国民民主党はもともと国民の期待がまったく集まらない中でのスタートだった。小池百合子氏が作った希望の党にまったく希望が持てなくなったので、無理矢理寄せ集めで作られた政党に過ぎない。

 どちらの政党もベテラン議員の多くは、民主党民進党に籍を置いてきた政治家である。それが立憲民主党国民民主党に分かれ、また合流する。こんな政党に国民が信頼を置き、期待をするだろうか。政治不信には政権と与党の責任はもちろんある。だが、少なくない責任が野党にもあるということを両党は自覚すべきである。

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