皆さんは『8020(ハチマルニイマル)運動』をご存知でしょうか。「80歳で20本以上自分の歯を残す」¹⁾ことを目標に平成元年より続けている啓蒙活動です。平成28年の時点で、8020運動の達成者は5割以上と言われています。

今回は、自分の歯を残すことのメリットやお口の健康が衰える「オーラルフレイル」とその予防方法についてご説明します。



8020運動¹⁾とは、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。



自分の歯を残すメリットとして、「20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができる」と言われています。具体的には、よく噛むことができる、味がよく分かる、唾液の分泌が良くなる、良く噛むことであごや筋肉が動き血液循環が良くなる、脳の働きが活発になり認知症の予防につながる、などの効果があると言われています。



平成28年の歯科疾患実態調査²⁾では、8020運動の達成者が51.2%と発表されました。さらなる今後の目標として、令和4年までには60%に向けて取り組む動きになっています。



歯を失う原因は、虫歯と歯周病と言われています。特に、歯周病は成人の7割³⁾が罹っていると言われ、歯周病は生活習慣病の1つとして考えられています。歯周病は、歯と歯茎のまわりにある歯の周囲を支えている組織が壊れていく病気です。歯周病の症状⁴⁾として、歯ぐきが赤くはれる、口臭が気になる、歯ぐきがやせてきた、歯の間に食べ物がつまりやすい、歯磨きの後に血が出る、歯が浮いたような感じやぐらつきがある、などがみられます。気になる症状があれば、速やかにかかりつけの歯科へ受診しましょう。



高齢者の健康を守る上でキーワードとなるのが「フレイル(虚弱)」です。フレイルの1つである「オーラルフレイル」⁵⁾とは、お口の機能が衰えることのことを言います。



オーラルフレイルの最初に起こる症状は、食べ物が噛みにくくなる、噛む力が衰えてくると言われています。そのため、硬い物や食物繊維の豊富な食べ物が食べにくくなり、柔らかい物や噛まなくても良い食べ物を摂るようになります。すると、舌の力が弱くなったり、舌が回らなくなり滑舌が悪くなる、むせたり食べこぼしがみられる、飲み込みに時間がかかる、食欲がない、口が乾きやすい、口臭が気になる、などの症状が進行します。その結果、十分な栄養が摂れなくなったり、筋肉の衰えが起こる身体的フレイルや、外食や人と一緒に食事をする機会が減る、閉じこもりなど社会的フレイルにつながります。



筋肉トレーニング(無酸素運動)で認知症予防>フレイルとは?

オーラルフレイルは、気づかないうちに症状が進みます。予防方法⁵⁾として、①定期的にかかりつけの歯科医へ受診をすること ②ささいなオーラルフレイルに気づくこと ③バランスのとれた食事をすることを心がけましょう。



食事は健康を保つだけでなく、自分の歯で食べること、美味しいと感じることや、「美味しかったね」と誰かと楽しみながら食事をすることは、生きがいにもつながります。



オーラルフレイルのささいな症状に気づいて対応すれば、改善することができます。日々の変化を見逃さず、楽しく食事を摂りましょう。




1)日本歯科医師会 8020運動(2019年8月13日アクセス)
2)厚生労働省 “平成28年歯科疾患実態調査”(2019年8月13日アクセス)
3)厚生労働省 “歯科口腔保健に関する最近の動向”(2019年8月13日アクセス)
4)8020財団 歯を失ってしまう原因と対策(2019年8月13日アクセス)
5)日本歯科医師会 “オーラルフレイル当てはまるものはありますか?”(2019年8月13日アクセス)