「シゴトを知ろう」和菓子職人編では、東京屋製菓の古屋めぐみさんにお話を伺いました。パティシエと迷いながらも、専門学校でお菓子を深く学んだことで和菓子の道を選択された古屋さん。この番外編では、和菓子職人の日常や、古屋さんの職場の様子にスポットライトを当ててみましょう。

職人さんは、真面目でひたむき

―― 業界内にはどんな性格の方が多いですか?

当たり前かもしれませんが、お菓子好きが多いですね。そして、真面目でひたむきな姿勢を持った人ばかりだと思います。素材へのこだわりを持っている職人さんが多いのも特徴。和菓子素材の味がそのまま商品に影響してくるので、ごまかしが利きません。店の味を守るためにも、素材の質を落とさないという信念を持っているんです。


―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか?

専門学校に進んで職人を目指すパターンが多いと思います。高校などを卒業して、すぐに現場に入ると、思い描いていたイメージとのギャップが大きく、続かないことがあります。
専門学校では一定の技術が学べますし、就職のサポートも受けられるので、業界に入っていきやすいのではないでしょうか。

私の通っていた学校には、大学を卒業してから入学してきた人もいましたね。奥さんの実家の和菓子屋を継ぐために入った30代の人や、日本に観光で訪れたときに和菓子に魅了されて入学した留学生など、いろいろな経歴を持った人がいました。

素材と向き合って、良い「塩梅」を目指す

―― 業界や職務内での、一般人が知らない業界用語はありますか? 

業界用語といえるかどうか分かりませんが、「塩梅(あんばい)」という言葉はよく使いますね。お菓子は材料を計量して製造するのですが、きっちり計量すれば同じものができるわけではありません。例えば鶏卵。夏場はニワトリもお水をたくさん飲むので白身がサラサラになりますが、冬場は少しもったりしてきます。素材の状態を目や耳などの感覚で判断して、良い「塩梅」になるように分量などを調整しなければいけません。

―― その他、一般の方に言うと驚かれる業界の常識はありますか?

和菓子と呼ばれるものの範囲は、「明治維新より前に日本に入ってきたもの」と決まっています。それぞれポルトガルがルーツの金平糖カステラ、ボーロは16世紀ごろ日本に入ってきたので「和菓子」です。

また、中国から入ってきた「羊かん」は、もともとは羊の肉を使ったあつもの(汁物)でした。日本ではそれを真似て、小豆でつくったものが定着しました。和菓子の歴史をたどると面白いですよ。


―― 業界内で働くにあたって、特に意識したり、制限されることはありますか?

特に冬場は手荒れが気になりますね。お菓子に直接触れるので、ハンドクリームも塗れません。ただ、和菓子は油脂をほとんど使用しないので、洗い物に洗剤は不要。だから、パティシエよりは手荒れが軽くて済むんです。

壁にぶつかっても、やりがいを持って働くことが大切

―― 業務をされてから、一番驚かれたことは何ですか?

3年前に入社したのがお彼岸の中日で、おはぎが一番売れる日だったんです。社長にレシピを教えてもらって、いきなりおはぎを製造させてもらいました。入りたての新人はあんこにすら触らせてもらえない店も多いと聞いていたので、びっくりしました(笑)。今でも鮮明に覚えています。学校で学んだ技術を、現場で生かせたのは良かったと思います。


―― 職人として4年目を迎えられて、気づいたことはありますか?

入社した頃から思うと、作れる商品も増えて、製造スピードも上がりました。つまずいたり、壁にぶつかったりすることもありましたが、やりがいを持って働いていたので乗り越えられたんだと思います。これからも、できることを増やして、仕事の幅を広げていければと思います。
 
感覚を研ぎ澄ませ、素材と向き合いながら日々和菓子をつくる職人たち。その仕事は決して楽なものではありませんが、やりがいを持つことで成長していけることを古屋さんは教えてくれました。若手職人として着実にステップアップしていく古屋さんの姿から、勇気をもらえそうですね。
 
 
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