死神・リュークデスノートを人間界に落としたことで、翻弄される人々を描いた物語デスノート THE MUSICAL』。3演目にしてキャストが一新される今回、物語の鍵を握るリュークを演じるのはシェイクスピア作品など数々の舞台に出演してきた横田栄司だ。吉田鋼太郎が斜に構えた死神・リュークを立ち上げた初演、石井一孝のパワフルさでミュージカルとして円熟味が増した再演。バトンを受け取った横田に、デスノートの魅力、稽古に向けての意気込みをたっぷりと語ってもらった。

ーー本作への出演が決まって、率直な感想を教えてください。

お声掛けいただいた時は、すごく意外で驚きました。ミュージカルですよ、歌いますよ、本当に僕でいいんですか? ってね。僕は初演時にイチ観客としてこの作品を観て、大いに楽しませてもらったんです。まさか自分が出演することになるなんて、当時はこれっぽっちも思っていなかったからびっくり。再演もすごく観たかったんだけど、僕はちょうど同じ新国立劇場で『ワーニャ伯父さん』(17年)という舞台に出演していて。お隣さんに(浦井)健治も(柿澤)勇人もいるのに行けなくて残念だな、と思った記憶があります。​

横田栄司

横田栄司

ーー初日にご覧になった時、どんな感想をお持ちになりましたか?

まず歌声に圧倒されました。健治も勇人も、濱田(めぐみ)さんもとにかくすごかった。一人ひとりの個性が色濃かったです。あとは、高校生の授業やテニス、家の中の勉強部屋、警察の捜査本部とか、色々なシーンが同じ舞台上で具体的に展開されていくところが、演劇として面白いなって。度肝を抜かれたのはリュークの登場シーンオーケストラピットの中から這い出て(吉田鋼太郎さんのモノマネをしながら)「ウォ〜〜〜〜つまんね〜〜〜〜!」って(笑)。なんだこの人、すげーのが出てきた!(笑)って。

いろいろな問題をはらんだ、すごく現代的な戯曲だなとも思いました。若者の鬱屈がデスノートに象徴されていて、退屈な日常の風穴であり、首をくくるロープでもあったわけで。人間の生死や愛情、親子の問題、国家権力など広く大きい問題を網羅した作品だなと思いました。

横田栄司

横田栄司

ーー横田さんが今考えているリュークの人物像を教えてください。人物と言うより“死神像”でしょうか?

そこは“人物”として捉えています。人間っぽく演じるほうが、結果的に死神っぽくなっていくんじゃないかなって。『デスノート THE MUSICAL』に出てくる登場人物は人間が悪魔に見える瞬間もあるし、その逆もある。逆説的なんですけど、死神を人間臭く演じたほうが悪魔になるんじゃないかと思っているんです。ま、「ワハハハハハハハ」って悪魔笑いはするかもしれないけど(笑)

リュークには「退屈だ」ってセリフがたくさんあるように、とにかく暇なんです。退屈だからデスノートで人を使って人を殺して楽しんでいる。それって相当趣味の悪い遊びじゃない? 古代ローマ時代に大金持ちがコロッセオで奴隷たちに殺し合いをさせて退屈しのぎをしていたけど、それに通ずるものを感じます。リュークが最後「飽きちゃった」って言って物語を終わりにしますが、人間への負け惜しみなんじゃないかなって思ってて。「人間を支配したかったけど、ちょっとうまく行かなかったぜ、人間ってややこしくて面倒くさいな、これは俺の手に負えない」っていう感情をまとめて負け惜しみで「飽きちゃった」なんじゃないかなって。

役をどう深めていくかはこれから考えていくところなんですけど、とにかく楽しそうなリュークがいいなとは考えています。人間の世界でガンガン人間で遊ぶ。でも実はリュークの方が人間に遊ばれているのかもしれなくて……。どっちが弄ばれているのか分からないなっていうところまで盛り上げて行けたらいいですね。

横田栄司

横田栄司

ーーYouTubeで「哀れな人間」のミュージックビデオが公開されています。撮影とレコーディングに挑まれていかがでしたか?

レム役の(パク・)ヘナさんと一緒にレッスンを受けて、レコーディングに臨みましたが、まだまだだなっていう思いです。ここまでのベストは尽くしたんですけど、これからもっと稽古をして、さらに生き生きと歌えるようになりたいですね。ヘナさんはとにかく努力家なんです。ものすごい勢いで日本語を勉強していて、驚きのスピードで上達しています。初めて会った時1歳だった子供が、1週間後には10歳になっているような、それくらいのイメージ。外国でその国の言葉で俳優をするって相当な覚悟ですよ。並大抵ではない苦労と努力をしていると思います。

一緒に歌って、僕の覚悟もより強固になった気がします。正直僕はミュージカルに出演して歌うこと、しかも人気作に出演することにすごく怯えていたんです。だけどヘナさんのハートの強さに、僕がこんなんじゃ駄目だなって大きな勇気をもらいました。ヘナさんと一緒にプレ稽古ができてすごく良かったです。揺るがない心意気を持ったヘナさんのレムなので、僕はリュークとしてヘラヘラしてようかなって(笑)。きっとすごくいいコンビになると思います。

横田栄司

横田栄司

ーー今回フルキャストリニューアルに期待が高まります。初演再演の出演者の方々とは何かお話をしていますか。

キャストが変わっても、このカンパニーには栗山民也さんという作品を知り尽くしている人がいますから。僕は栗山さんに「まだその手があったか!」ってびっくりさせたい。稽古場で僕が見つけることも、周りからエネルギーアイデアをもらうこともあると思うし。栗山さんが驚いたら、お客さんもびっくりするだろうし。

初演でリュークを演じた吉田鋼太郎さんとは、ことあるごとにチラチラっと『デスノート THE MUSICAL』のお話をしています。公式コメントにも「私は『役者の唄』という甘えがあった……横田は唄でドギモを抜いてください」みたいなメッセージをくださって。剥き出しの愛情でプレッシャーをかけられてますね(笑)

僕は幸運にも、柿澤勇人はつい最近まで共演していたし、浦井健治も何度も共演している。どうしても行き詰まってしまった時には、ちょっとだけ彼らの力に頼ろうと思ってるんです。もちろんカンパニー内で解決できるのがベストだけど、ちょっと離れている人の意見が参考になることもありますから。勇人は早速YouTubeに公開されたミュージックビデオを見てくれたみたいで「なんだ〜栄司さんちゃんと歌ってるじゃん、つまんね〜」って愛あるコメントをくれました(笑)

ーー最後に読者にメッセージをお願いします。

僕はいつも舞台が始まる前に「これは観ないと後で後悔するやつ」っていうのが直感で分かるんですが、今回はまさにそれ。チラシの雰囲気とかプロデューサーの方々の熱量なのか、理由は分からないけど分かるんです。初演再演を観た人も、今回初めての人も劇場でしか味わえない『デスノート』を体験しに来て欲しいです。僕たちは楽しませる自信があるので、もし迷っているなら劇場に来たほうがいいと思うな。「Don’t miss it!」どうぞ見逃さずに。

横田栄司

横田栄司

取材・文=永瀬夏海 撮影=山本 れお

横田栄司