(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

連続テレビ小説「スカーレット」 
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第12週「幸せへの大きな一歩」68回(12月17日・火 放送 演出・中島由貴
何度もレビューで書いているが、劇伴がすばらしい。
喜美子(戸田恵梨香)が恋愛と創作意欲がまぜこぜになった感情をやみくもに噴出すると、八郎(松下洸平)が黙って外に出ていってしまう。
残された部屋のなかに、鳥の声が寂しく響く。一瞬、コオロギか何かの虫と思ったが真冬だしなあと思い直した。

しばらくして、八郎が戻ってきて、信作(林遣都)に電話して喜美子も手伝うことを了承してもらったと言う。
八郎、どこまでもいい人だ。

「とやあ」と草間流柔道の掛け声を小さくつぶやき、電動ろくろを回し始める。

「とやあ」と喜美子が可愛く言ってみて、八郎が「ふふ」と笑うのが、戸田恵梨香も松下洸平もだいぶいい大人なので、なんか気恥ずかしくなった。そのあとの小さく跳ねまわるようなピアノと弦楽器のからみあうような曲の勢いで、違和感をすぐ忘れてしまったけれど。曲が良いから、朝の眠い目も覚めた。

陶芸の神様と勝負
冬野ユミの楽曲は素敵だが、喜美子はまだうまくつくれない。
人が作ったものと同じものを作るのは難しい。電動ろくろを使いこなすのもまだまだ時間がかかる。

喜美子「勝った負けたでいえばうちの負けですか」
八郎「誰と勝負してるの?」
喜美子「陶芸の神様」
八郎「陶芸の神様 えらい人に勝負挑んでるなあ」

八郎は絵付けのときのようににこにこ穏やかに作るように言う。

「作っている人の気持ちが作品に伝わる」
「心は伝わるで」(八郎)

このときの八郎のきりっとした顔がいい。
八郎はあくまで誠実に、理屈で陶芸に向き合っていて、喜美子はどこか感覚で陶芸に惹かれている。“陶芸の神様”という無邪気さや無謀さが案外強かったりすると、真面目に自分を律してコツコツ修業してきた人はたまらないだろうなあ。勝手な想像だが、今後、天才と秀才の違いみたいなものが描かれるのかなという気がする。

今日は帰らない
八郎が作品と向き合い、喜美子がコーヒー茶碗と格闘しているときの曲も美しかった。まだ下手くそかもしれないけれど、純粋な情熱そのもののようで。

喜美子は徹夜で茶碗を作り続ける。引かれたばかりの家電に電話して、会社に泊まると報告、マツ(富田靖子)はあっさり了解するが、常治(北村一輝)は心配でならない。その横で、百合子福田麻由子)が常治の顔の福笑いをしている。パーツがへんに並べられた顔は、父のもやもやした感情を代弁するようにも見える。

常治がやきもきするところを、直子(桜庭ななみ)が自分の話題にすり替える。年明けから副班長になって給金が上がるのでパーマをあててもいいかと聞く。なんだかんだ反抗的だがそこはちゃんと父の許しを得るところが真面目だ。
喜美子が陶芸の神様に勝てないことを悔しがっている間に、意外にも直子のほうが自分の仕事で進歩しているのであった。

常治「ぶさいくになるなよ」
直子「マリリン・モンローみたいになったる」
なんとも微笑ましい父子。

マツが様子を見に来ると、八郎は床に転がって寝ていて、喜美子は黙々と作業していた。

朝になると、10個完成。早っ。

それにしても、年末の夜中に床に何も敷かずに寝ているなんて、寒くないんだろうか。喜美子もいつもと同じセーターだけで寒くないのか。窓もたくさんある作業場で(天井も窓になっているし)、カーテンもなく、冷気が半端なさそう。京都の寒さが有名だけど滋賀県もすごく寒い。手がかじかんで作業もままならないような気がするけれど、会社は暖房がものすごく効いているのだろうか(ストーブはどこにあるんだ?)。手先を使っているから手は自然にあたたまるんだろうか。それもこれも、劇伴の素敵なムードに流されてすべてが気にならなくなる。ものすごい魔法。
(木俣冬 タイトルデザインまつもとりえこ)

登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。中学卒業後、大阪の荒木荘に女中として就職。三年働いた後、信楽に戻り、丸熊陶業初の女性絵付け師となるが、絵付け火鉢が下火になり、陶芸の勉強をはじめる。陶芸の先輩・八郎を好きになり結婚の約束をする。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。口は悪いが、娘たちを溺愛し、喜美子の結婚に猛反対するも、結局、しぶしぶ容認する。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったが常治と駆け落ちして結婚。体が弱く家事を喜美子の手伝いに頼っている。ぼんやりして何をしているのかよくわからないながら、なぜかなくてはならない存在感を放っている。

川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。東京の熨斗谷電機の工場に就職する。新人教育係に恋をする。

川原百合子福田麻由子 幼少期 稲垣来泉→住田萌乃 末っ子でおとなしかったが、料理もするようになり、直子が東京に行くと気丈になっていく。家庭科の先生になるため大学進学を目指す。

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。喜美子とは幼いときキスした仲。京都の短大を卒業後、婿をとり、身ごもり、出産する。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。娘には甘い。昭和34年、突然死。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母。敏春を戦死した息子の身代わりのように思っている。
熊谷敏春…照子の婿。 京都の老舗旅館の息子。新商品開発に意欲を燃やす。先代の突然の死により
社長となり、八郎に期待を賭ける。

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の幼馴染。子供の頃は心身共に虚弱だったが、祖母の死以降、キャラ変しモテるように。高校卒業後、役所に就職する。

大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。大手雑貨店の影響で雑貨店からカフェに商売替えする。

大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。マツの貯金箱を預かったことで離婚の危機に直面するが一件落着。カフェ準備を楽しんでいる。

●信楽の人たち 
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
保…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

所沢…牛丸裕司 信作の上司
黒岩次郎…上野俊介 幼少期 溝上空良  信作の幼馴染 お見合い大作戦に参加する。

田畑よし子…辻本みず希 お見合い大作戦に参加、信作に好意を寄せる。

●信楽 丸熊陶業の人々
城崎剛造…渋谷天外 丸熊陶業に呼ばれて来た絵付け師。気難しく、社長と反りが合わず辞める。
加山…田中章 丸熊陶業社員。
原下…杉森大祐 城崎の弟子。
八重子…宮川サキ 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
緑…西村亜矢子 丸熊陶業で陶工の食事やお茶の世話をする。
西牟田…八田浩司 丸熊陶業の中堅社員。

深野心仙…イッセー尾形  元日本画で戦後、火鉢の絵付け師となる。喜美子を9番目の弟子にする。
若社長の代になり、長崎の若手陶芸家・森田隼人に弟子入りすることにする。
池ノ内富三郎…夙川アトム 深野の一番弟子。深野組解散にあたり、京都に就職。
磯貝忠彦…三谷昌登 深野の二番弟子。深野組解散にあたり、大阪に就職。

藤永一徹…久保山知洋 陶器会社で企画開発をやっていて、敏春に雇われる。
津山秋安…遠藤雄弥 大阪の建築資材研究所にいて、敏春に雇われる。

十代田八郎…松下洸平 8人きょうだいの末っ子。父母は亡くなっている、京都の美術大学出身。丸熊陶業の新商品開発の仕事に携わり、その合間に陶芸の修業をし、陶芸展で入賞したら喜美子と結婚することを目標にしている。真面目で几帳面な性格。

森田隼人…長崎の陶芸家。深野が弟子入りを申し込む。

●大阪 荒木荘の人々
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者だったが、不況で、尊敬する上司・平田が他紙に引き抜かれたため、退社。女性誌の記者となり、琵琶湖大橋の取材のおり、信楽の喜美子を訪ねる。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。

●大阪の人たち 
マスターオール阪神 喫茶店マスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。

ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。
草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいて、帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道(草間流柔道)を教える。大阪に通訳の仕事で来たとき喜美子と再会。大阪には妻が別の男と結婚し店を営んでおり、離婚届を渡す。東京に住んでいたが、台湾に貿易の仕事に行くことに。

あらすじ
第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。
第六週 昭和31年 喜美子、信楽に戻り、丸熊陶業で働きはじめる。
第七週 昭和31年 喜美子、火鉢の絵付けに魅入られ、深野心仙の弟子になる。
第八週 昭和34年 喜美子21歳 「信楽初の女性絵付け師ミッコー」として新聞に載る。
第九週 昭和34年夏、丸熊陶業の社長が亡くなり深野組解散。秋、喜美子の絵付け火鉢が完成する。
第十週 昭和34年秋、喜美子、十代田八郎に陶芸を習いはじめ、彼に恋をする。
第十一週 喜美子と八郎、結婚を誓う。昭和34年年末、陶芸展出品作づくりに八郎は励む。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト戸田恵梨香北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ福田麻由子佐藤隆太大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌Superflyフレア
制作統括:内田ゆき
連続テレビ小説「スカーレット」68話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます