「いたしません!」

【写真を見る】やっぱり未知子(米倉涼子)は手術着姿が一番“映え”る!(ほか、白衣姿など全19枚)

どんな権力者や目上の人、美しい広報さんに対してもはっきりとそう言えるのであれば、こんなに毎晩毎晩深夜にカタカタPCをいじってないのに。そう言えない美徳もあるっちゃあるが、ないっちゃない。いや、ない。

美徳どうこうの前に、ただの小心者としては「いたしません!」と言うことこそ「いたしません!」

ただ、この国で働く人のほとんどが言いたいことをはっきり言えない小心者だろう。だからこそ、自分にはない者を持つ人間に強烈に引かれるのだ。

それは、今さら説明するまでもないが、「いたしません!」「私、失敗しないので」でおなじみのあの女医のこと。2年ぶりに復活した連続ドラマシリーズももう最終回。早過ぎる…。

各局で放送されているドラマバラエティーなどを事前に視聴して、独断と偏見とジョークに満ちたレビューで番組の魅力を紹介する、WEBサイト・ザテレビジョン流「試写室」。

今回は、12月19日(木)に放送される米倉涼子主演ドラマドクターX~外科医・大門未知子~」(夜9:00-10:14、テレビ朝日系)の最終回を取り上げる。

ドラマは、かつてないほどの大赤字に見舞われた倒産寸前の白い巨塔「東帝大学病院」を舞台に、米倉演じる天才フリーランス外科医・大門未知子が孤高の戦いを繰り広げる人気シリーズの最新作。

最終回となる12月19日放送の第10話では、「東帝大学病院」に幼き天才ピアニスト・吉行和十(城桧吏)が入院。

ニコラス丹下(市村正親)の支援を受けジュリアード音楽院に進んだ和十は、現在重病に侵されており、ピアノが弾けなくなるかもしれない危機に瀕(ひん)していた。

手術を拒む和十は、未知子の「必ずまたピアノが弾けるようにする。私、失敗しないので」という言葉を信じ、手術を承諾。そうして臨んだ手術だったが、未知子はその最中に突然術式変更する。未知子の勝手な判断にぶ然とする原守(鈴木浩介)。さらに和十の術後の経過も芳しくないのを見た原は、「手術は失敗だった」と未知子を責め立てる。

一方、修正大血管転位症、という先天性の心疾患があることが判明した丹下は手術を拒否していた。しかし丹下は拘置所で意識を失い昏倒する――というエピソードが描かれる。

■ 主観強めのレビュー

「痛快です!」

あるベテランTV誌ライターが、数年前に「ドクターX」の魅力について聞かれて放った言葉だ。

確かに、“失敗しない女医”が難度の高い手術を涼しい顔でやってのけるさまは、見ていて痛快そのもの。このドラマを「ある種の時代劇のよう」と評した人もいたが、それも何となく分かる。

ただ、最近の「ドクターX」はヒューマンドラマ色が強いというか、未知子(米倉)の感情があらわになる場面も多い気が。

特に第9話のおでん屋台での“本音”吐露シーンには驚いた。やっぱり未知子も人間なのだなと思ったし、「私、失敗しないので」に込められた決意、それに加えて晶さん(岸部一徳)以外にこんなことを言うんだ、という驚き。エモい音楽と相まって、恥ずかしながら涙が堪えられなかった。

それを受けての最終話。ちょっと抽象的な表現をすると、未知子って外科医としては当然超A級だが、実は旧態依然とした医師たちにメスを入れるというか、“対医師”のドクターとしても優秀な人なんじゃないだろうか。

はっきりとした言葉で指導するわけではないし、決して模範的な行動をする医師でもないが、絶対的な腕と“雄弁な背中”で医師とはこうあるべきであると示し、結果的に医師たちを正しい道へ導く。

これまでもそういう部分は描かれてきたが、最終話を見てはっきりと確信した。

特にあるシーンでまたもやあのエモいメロディーが流れたときの未知子の言葉、動き、このシーンは何度見ても鳥肌がたつのを抑えられそうにない。

とにもかくにも、どんなに厳しい局面でも「私、失敗しないので」とあの眼力で言われたら、誰だって絶大な安心感が得られる。どこまでだって付いていきたい背中がそこにはあるし、睨まれたらすぐ「御意!」って言いたくなる。

一方で、どんなにスーパードクターだったとしても1人で全部できるわけではない、ということも学ぶことができる。ある意味で人生とは、というところまで教えてくれるドラマだ。

その他、最終話ドクターXらしいシーン満載。居酒屋での海老名(遠藤憲一)、加地(勝村政信)、原(鈴木浩介)の不毛なやりとり。これは何時間でも見ていられるし、ここだけノーカットで特典映像つけてほしいくらい。

なんだかんだ言ってこの3人は「ドクターXシリーズの“脇の功労者”であり、この3人がいるからこそドクターXドクターXでいられるのだろう。というか、大のオトナを捕まえて言うことでもないが、3人ともかわい過ぎる。

そして、蛭間院長(西田敏行)と鮫島(武田真治)の悪代官越後屋のようなやりとりも、初めてのはずなのに長年見てきたような安定感。

西田の御大の場合、どこからどこまでが台本でどこからアドリブなのか分からないくらい、芸が細かいというか、自由なのが魅力的なのだが、武田もしっかり呼吸が合っていた。

そんな武田はあるイベントで「服を着ている僕にそれほど価値はないんだなと…」と自虐気味に言っていたが、自慢の筋肉を見せなくても演技で魅せてくれた。もし次のシーズンがあったとして、ぜひ何らかの役で出てほしいところだ。

あとは、天才ピアニスト・吉行和十(よしゆき・かずと)を演じる少年。執事だったら給仕したくなるような名前だな…って、それはさておき、演じているのは誰かと思えば映画「万引き家族」(2018年)で世界に絶賛された俳優・城桧吏。

「僕自身はピアノの経験がなく、どのようにすればいいのか分からないという不安がありました。ピアノを弾いている方や、監督から頂いたアドバイスを参考に沢山練習し、少しでも和十に近付けるように役作りを行いました」とコメントしていたが、いやいや、長年ピアノをやっている人のような美しい指の動き、ピアノを前にした佇まいも素晴らしい。彼のピアノ演技を見て、こたつスタンディングオベーションをしてしまったほど。

さてさて、またもや長くなってしまったが、始まりがあれば終わりもある。こんな素人レビューはとっとと終わるべきだが、いろいろなことを教えてくれる「ドクターX」はいつまでも終わってほしくない。

テレ朝クールの定番となりつつあるが、正直1クールとはいわず、2クール3クール、もう「科捜研の女」並みに1年間やってくれたらいいのに…と思うほど、毎回心地よい「痛快」が味わえる本作。

でも、恐らく未知子に軽い気持ちで1年間やってくれと打診したとしてもこう言われてしまうんだろうな。

「いたしません!」(ザテレビジョン・文=人見知りシャイボーイ

「ドクターX~外科医・大門未知子~」で主演を務める米倉涼子