11月23日から24日にかけて、青海でカードゲームボードゲームなどのアナログゲームを取り扱う同人イベント「ゲームマーケット2019秋」が開催され、今回も大盛況だった。2日目の24日には12月20日に新版が発売される『クトゥルフ神話TRPG』著者のひとりであるゲームデザイナー、サンディピーターセン氏のトークステージが行われ、立ち見が出るほどの人気となった。この記事ではアナログゲームの解説と、ピーターセン氏へのインタビューをお届けしよう。

取材・文 / 早川清一朗


今、アナログゲームが人気の理由

11月23日から24日にかけて、東京ビッグサイト青海展示棟で国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2019秋」(以下、ゲームマーケット)が開催された。近年はボードゲームカードゲームといったアナログゲーム市場が活況を呈しており、今回も2日間でのべ2万9300人の入場者を集めるなど、注目のイベントとなっている。

なぜ今アナログゲームが人気を集めているのか。スマホのアプリゲームや家庭用ゲーム機と比較すれば、アナログゲームはなにかと面倒だ。一緒に遊ぶ仲間と時間と場所を決めて集まる必要があるので、それだけでもひと苦労。ダウンロードですぐ手に入るというものでもなく、実物をショップで購入する必要があるし、売り切れてしまったらしばらく入手できなくなる。

それでもアナログゲームが人気を集めるのは、休みの日に同じ趣味を持つ人間同士が集まる理由として機能しているのが挙げられるだろう。忙しい現代人は予定を合わせて集まるのも難しい。ひと昔前であれば一緒に映画を見に行ったり、買い物に行くという理由で集まることも多かったが、ネット通販や配信の普及により回数は減少している。

もちろんネット越しでもゲームをするのは楽しいが、同じ場所に集って同じ空気を吸い、同じルールの中で試行錯誤を繰り返して勝敗を決め、勝っては笑い負けて悔しがる、プリミティブな楽しみをアナログゲームは与えてくれる。アナログゲームをプレイする人の集まりに参加する中で、大人になってからではなかなか難しいとされる「新たな友人」を獲得することもできるのだ。

アナログゲームが持つ教育効果やコミュニケーション能力の強化力も見逃せない。対戦型のゲームでは目の前の相手に勝つために知能を振り絞り、協力型のゲームでは仲間と助け合う。柔軟かつ幅広い能力を養うことができるため、教育の一環としてアナログゲームが授業に取り入れる試みも進められている。

もし自分の中に新たなアイディアが生まれたら、ゲームを自作することも可能だ。ゲームマーケットでは個人レベルで製作されたゲームが数多く販売されている。近年はスマホアプリの開発会社が、人材育成の一環としてゲーム作りを上流から下流まで学ぶためにボードゲーム作りに乗り出してすらいる。ひとつの物を作り上げる難しさと喜びを知るためにもアナログゲームは大いに活用されているのだ。

クトゥルフ神話TRPG』著者、サンディピーターセンのステージは満員御礼

そんなアナログゲームの中に、テーブルトークRPG(以下、TRPG)というジャンルがある。これは主にゲームマスターと呼ばれる進行役とプレイヤーと呼ばれる人間がキャラクターを演じながら冒険や探索、戦闘を行うタイプのゲームだ。

作品タイトルごとに様々な世界観が存在し、ドラゴンなどの怪物と戦い宝を手に入れるものやロボットのパイロットになって敵と戦うものなど、趣味や好みに合わせてプレイする作品を選ぶことも可能だ。

つまりTRPGとは、テレビゲームで言うところの「RPG」を「紙と鉛筆とサイコロと会話」で行うものとなっている。細かい話をするとそもそもRPGとはテーブルトークRPGのことを指していたのだが、そういう歴史まで話し出すときりがないので今回はこの辺にしておく。

膨大な数のタイトルが存在するTRPGの世界で、特に世界的に有名な作品として挙げられるのが、アメリカ発祥の『クトゥルフ神話TRPG』(以下、CoC)だ。1900年代前半にハワード・フィリップス・ラヴクラフト氏が発表した怪奇・SF小説を題材としており、人間が神々や怪物がもたらす恐怖と戦いながら生き延びようとする内容となっている。

日本でも1980年代から遊ばれており、近年は動画でリプレイが公開されることも多く、TRPG愛好家たちの間では象徴的なタイトルとなっている。この『CoC』の製作を1981年から現在に至るまで担当しているのが、ゲームデザイナーのサンディピーターセン氏(以下、ピーターセン)だ。ゲームマーケット2日目となる24日に、今回が初来日となるピーターセンがKADOKAWAによるステージイベント「『新クトゥルフ神話TRPG』 on the Stage 2019」に登壇し、同作の魅力や開発秘話について語ってくれた。

ピーターセンは『CoC』開発の際に特に苦労したのが「恐怖感の演出」だったと語ってくれた。TRPGはプレイヤーがキャラクターを演じるのだが、キャラクターが感じている恐怖感をプレイヤーに伝え、演技に反映してもらうのは難しい。この問題の解決に3か月悩んだ末、奥様が正気度の数値化というアイデアを出してくれて無事解決に至ったとのこと。

CoC』では神々や怪物、その他なんらかの恐怖をもたらす存在に遭遇すると、正気度判定が行われ、失敗すると徐々に正気度を失い、発狂してしまう。シナリオ中にキャラクターが感じる恐怖が、プレイヤー側からはキャラクターロストの恐怖へ直結している。この秀逸な構造こそが『CoC』が長く愛されるタイトルとなっている。

この日のステージでは『CoC』のショートセッションも行われ、もちろんピーターセンも参加。製作者による公開プレイを披露し会場を埋め尽くした『CoC』ファンを楽しませてくれた。

サンディピーターセン氏 ミニインタビュー

ステージ終了後、ピーターセンがインタビューで日本の『CoC』に対する印象などを語ってくれたので、ここで公開させてもらう。

ーー 初来日ですが楽しんでおられますか?

楽しんでいるよ! 奈良では鹿に体当たりされたけどね(笑)

ーー ゲームマーケットの会場をご覧になられていかがでしたか?

CoC』のシナリオを個人で書いている人がとても多くて驚いたよ! これが日本での『CoC』の人気につながっているかもしれないね。

ーー 日本のシナリオをご覧になってどう思われました?

表紙のイラストにかわいい女の子が描かれているのが日本だな、と。アメリカだと大きな生き物や神話生物が表紙に描かれているからね(笑)。

ーー 日本では動画制作も盛んです。

アメリカでもセッション動画の録画や配信は行われているけど、動画については日本の方が精力的だろうね。観た感じはすごく面白そうだしカッコいいね。(日本語は分からないので)何を言っているのか分かれば最高だったけど……。

ーー (ステージで)女性プレイヤーの多さに驚かれていました。

アメリカにも女性プレイヤーはいるけど、日本ほど多くはないね。

ーー 12月に発売される新版はどのような変更点が?

基本的には同じゲームだけど幸運に関する技能が新しく増えたよ。

ーー 最後にファンにメッセージをお願いします。

空に気を付けるんだ!

長時間のステージ後にも関わらず、ピーターセンは気さくにインタビューに応じてくれた。インタビュー後には即席のサイン会も行われ、多くの『CoC』ファンが列を成していた。

そんな『CoC』の15年ぶりにリニューアルされた、『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』が、12月20日KADOKAWAより発売される。400ページに及ぶ大ボリュームで、物語を描写するために必要なルールが幾つも追加されている。データを変換すれば過去のシナリオも遊べるので、今まで『CoC』を楽しんでいた方も、これから遊んでみようという方も、ぜひ購入してみてはどうだろうか。

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掲載:M-ON! Press