- 地球磁場は地球の中心にあるコアの流動から発生しているもので、常に磁極は変動している
- 最近北磁極は非常に頻繁な移動を起こしていて、世界磁気モデルは前倒しで更新を余儀なくされている
- 磁気反転は地球ではわりと起こっている現象だが、新たな磁気反転が近づいている予兆の可能性もある
最近、地球磁場が激しくゆらいでいるようです。
北磁極は特に近年加速度的に激しい移動を行っており、その原因は不明とのこと。
磁極の変化はナビゲーションシステムのポジショニングに影響します。特に磁極の近くでは方位磁石が役に立たなくなってしまうため、こうした情報を正確に更新していくことは重要となります。
現在世界には、米国国防総省、英国国防省、北大西洋条約機構、国際水路機関(IHO)で利用されている「世界磁気モデル(WMM)」というものがあり、民間のナビゲーションシステムは、これを元にして安全な航行が保証されています。
通常世界磁気モデルは5年おきの更新で問題のないものでしたが、最近の北磁極の移動は、想定を上回る大きな物となっており、この更新を前倒しで行うことが余儀なくされています。
これはひょっとすると、地球の歴史上何度も起こってきた磁気反転(ポールシフト)の前触れの可能性もあるかもしれません。
地球は大丈夫なんでしょうか?
このちょっと不安になってしまう磁極の変動については、世界磁気モデルの前倒し更新とともに、アメリカ海洋大気庁(NOAA)のサイト上で12月10日に報告されています。
https://www.ncei.noaa.gov/news/world-magnetic-model-2020-released
地球の磁場
地球の中心には鉄とニッケルからできているコア(核)が存在しています。これは固体となった内部コア(内核)と液体の外部コア(外核)に分かれています。
地球磁場は、外核の流動から発生しています。太陽表面とほぼ同じ温度の5700度近い核の流動は、激しい電子の移動を伴うため、ここで発生する電流が地磁気を生んでいるのです。
こうした流動が原因であるため、地球の磁場は常に変動しています。地球を棒磁石のように例えたモデルは、この複雑な磁場の変動を極めて単純化させたものです。
そのため、磁極が移動すること自体は自然なことで、驚くべきことではありません。南磁極の変動をプロットすると下の図のように大きく移動していることがわかります。
しかし、北磁極が近年非常に速い速度で移動を行っています。下の図は毎年の北磁極の移動をプロットしたものです。黄色い点が新しい磁極の位置になりますが、点同士の距離が大きく開いており、1年間の移動量が大きくなっているのがわかります。
磁極の変動は、コアの流動の問題です。この活動は完全には理解されていないため、どういった要因で変動が起こっているかを正しく説明することは困難です。
しかし、現在北磁極が大きく動いているのは、地球の磁場が弱まっているためと考えられています。現在磁極はカナダの北極地方からシベリア方向へ向けて移動しているといいます。
正確な予想は難しいものとなりますが、米国環境情報センターや、英国地質調査所の最新モデルによる報告では、しばらくこの磁極の極端な移動は続くだろうが、今後は減速していくだろうと予測されています。
磁極反転は起こりうるのか?
磁極の大きな移動と聞いて気になってくるのが、磁極反転(ポールシフト)と呼ばれる現象です。
これは地球のN極とS極が反転してしまう現象です。
この現象は、たびたび大量絶滅と結びつけて語られることが多いため、大変な出来事のように考える人が多いかもしれませんが、最近の研究によると、実際は地球上でかなり頻繁に発生している現象で、もっとも最近起きたポールシフトは78万年前です。
その上でポールシフトを地球の歴史から見ると、生物学的には目立った影響は確認できないと言われています。
ただ、現代の私たちの生活はナビゲーションシステムに依存したものになっており、このシステムには北磁極が重要な役割を果たしています。
生物学的な意見はともかく、人類にとってありがたいことでないのは明らかです。できれば予想通り磁極の移動は減速して大人しくなってくれることを願いたいものです。
なんにせよ、直ちに影響はないのでご安心ください。
タイトルに一部不正確な点があったため、修正して再送いたしました。
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