iPhoneをはじめとするスマートフォン(スマホ)に活躍の場を奪われた携帯オーディオプレーヤーデジタルカメラ、ポータブルナビ(PND)、電子辞書などの専用機のうち、ICレコーダーだけは影響が最低限にとどまっている印象だ。会議や講演、演奏の録音は長時間に及ぶ場合もあり、スマホではなく、専用機を使いたいというニーズがあるからだ。特に乾電池対応モデルの引き合いが高い。

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 実際、家電量販店・オンラインショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」によると、ICレコーダー(リニアPCMレコーダー含む)の2018年の販売台数前年比は95.0%。19年も、1~11月までの累計で前年同期比91.4%と一桁減にとどまっている。急激にシュリンクしたデジタルカメラに比べると(19年11月10日掲載「デジカメ販売、8年で7割縮小 岐路に立つカメラメーカー」を参照)、市場縮小のスピードはだいぶ緩やかだ。

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 19年1~11月におけるICレコーダーのシリーズ別販売台数1位はオリンパスのICレコーダー「VN-541PC」で、2位がソニーリニアPCMレコーダー「ICD-PX470F」、3位がオリンパスのICレコーダー「V-862」だった。直近の11月に限っても、VN-541PCとICD-PX470Fのトップ2は変わらず、3位に安価なパナソニックの「RR-QR220」が食い込んだ。

 メーカー別では、オリンパスソニーがシェア30%台で競い、8月・9月がソニー、10月・11月がオリンパスと、月ごとにトップメーカーが入れ替わっている。1~11月の累計でも、オリンパスが36.0%、ソニーが35.1%と拮抗。12月の結果次第で、逆転もあり得る状況だ。

 上位メーカー間のシェアが接近していると、その年の年間シェア1位を目指して家電量販店で販促合戦が起きる。目玉商品としてワゴンセールで売られたり、ポイント還元率がアップしたりする。

 11月に1位を獲得したオリンパスの「VoiceTrek VN-541PC」は、Amazon.co.jpでの販売価格が税込み3477円。この製品を店舗で購入し、最大10%還元や初回10%オフといったキャンペーンを実施中のスマホ決済サービスで支払うと、実質負担は還元分だけ下がる。業務にICレコーダーが欠かせないビジネスパーソンは、2社が激しく競うこの年末、買い替えのチャンスだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

スマホの録音アプリではなく、専用機を使いたいというニーズが売れ行きを支えている