先日ストリーミング解禁が大いに話題となった嵐だが、ここにきてますます面白い展開を見せるようになった。先日はなんと米津玄師とのコラボレーションを行うことを発表。なんとも大胆なことを企画したという印象が強い。

 というのも、嵐の前作のシングル「BRAVE」は米津のシングル「馬と鹿」との同日発売であり、フィジカルこそ嵐が圧勝したが、トータルのポイントでは米津に軍配が上がったのだ。本来なら共演NGとなってもおかしくないくらいなのに、そこに敢えて飛び込んでコラボを行うという嵐の余裕ある態度は恐るべし。この余裕感は、新曲「Turning Up」の動きにも現れている(【表1】)。今週のHot100では20位だが、すでに7週目を迎えてロングヒットとなりつつあるからだ。

 嵐に限らずフィジカルをメインにしたジャニーズ系で、ここまで上位をキープすることは稀だ。もっとわかりやすく比較するために「BRAVE」の動きを見てもらいたい(【表2】)。初週の9/23付は2位、9/30付は5位と上位をキープしているが、早くも3週目以降は20以内から外れている。結局フィジカルのCDを買うファンがメインであり、その動きが止まるとチャートも降下していくというのがこれまでの図式だった。

 しかし、「Turning Up」はデジタルオンリーの強みを生かし、ダウンロード、ストリーミング、動画再生数といったフィジカル以外の楽曲再生がずっと上位で継続している。とりわけこの楽曲は洋楽的な色合いが強いこともあり、コアな彼らのファン以外からの評価も高い。そこがうまくストリーミングやYouTubeなどと連動し、いい形の再生ローテーションが生まれているのではないだろうか。これは長い目で見ると、さらなる音楽的評価へつながる可能性も高く、ファン層がこれまで以上に広がる可能性を持っている。

 嵐のチャートアクションは、瞬発力の強さが特徴だったが、今回は完全にロングセールスのパターン。ジャニーズがこれまでとは違った新たな戦略へと切り替えていくのなら、ますますチャート争いが多様化し、激化も避けられないだろう。そして、そのことによってさらに音楽シーンが活性化するならば、今はJ-POPの売れ方そのものが大きな分岐点に立っていると言えるのだ。Text:栗本斉


◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。

売れ方はほとんど別モノ?! 「Turning Up」における嵐の劇的な変化とは【Chart insight of insight】