あるときは兵庫県の山間部を、またあるときは東京湾岸の高速道路を―――。

全国各地で引っ張りだこの忙しい自動運転バスが、地元に戻ってまた新しい仕事に駆り出された。

埼玉工業大学の自動運転AIバス。新しい仕事は、最寄り駅の高崎線 岡部駅と大学を結ぶスクールバス。

一般車が走る公道で、学生や教職員の送迎用に自動運転バスを導入するのは、全国で初めてのこと。

埼玉工業大学 自動運転AIバスは、毎週木曜日を中心に、大学と岡部駅の間、1.6kmを自動で行き来する。途中には、信号のある交差点、ない交差点を自動でいったん停止をはさんで自動で走る。また、大学構内や岡部駅前のロータリーも自動で走る。

この埼玉工業大学の自動運転AIバスの最大の特長は、既存のマイクロバスに後付けできる自動運転システムパッケージ。だからこの日野リエッセIIに実装した自動運転AI(AIPilot / Autoware)の実績が認められれば、マイクロバスや小型バスにかんたんに実装できるようになる。

人間の足によるブレーキングをめざして

埼玉県が将来の事業化をめざすスマートモビリティ実証支援「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」(テーマ:公道走行可能な自動運転バスの実験車両とAIの実用化・市販化)に2019年度採択され、国や県、深谷市などといっしょに実証実験を重ねている、埼玉工業大学 自動運転AIバス。

兵庫県の播磨科学公園都市で12月初旬に行った自動運転公道実証運行「スマートシティ・ラボ@播磨科学公園都市」では、最高速度50km/hで走行。今回の地元スクールバス実験では最高速度40km/hで走る。

既存のマイクロバスに後付けできる自動運転システムということで、もともとある油圧ブレーキを制御するところに難しさがある。

とくに停止直前。人間が運転する場合は、クルマが停止する直前に、ブレーキペダルを踏む足をすっと抜くことで、前後衝撃を感じずに止まれる。埼玉工業大学の自動運転AIバスも、この自動制御に悩まされてきた。

ことし8月の完成当時から、実証実験を重ねてくるにつれ、マイコンやソフトウェアの改善が重ねられた。12月23日に試乗してみると、この油圧制御部分も「おっ進化したな」と感じる。

ディープラーニングによる処理量を増やし高速化

この自動運転AIバスを開発・統括する埼玉工業大学 工学部情報システム学科 渡部大志 教授は、「ブレーキングの精度を高めて、停止がスムースになった」と。また、いま実証実験を重ねるほかの自動運転車両よりもAI処理率が高いことについて、こう語っていた。

「LiDARやカメラなどの画像解析に、ディープラーニング(AI)系ソフトウエアによって処理する量が増えた。8割以上の画像解析にAIが適用されるようになって、画像データ解析がより高精度・リアルタイムで処理できるようになった。こうした進化が、今後のさらなる高速走行実験に結実していく」(渡部大志 教授)

―――誕生からわずか4か月で、スクールバスという仕事を任され、また実用化へむけて一歩前進した埼玉工業大学の自動運転AIバス。

内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期『自動運転(システムとサービスの拡張)』東京臨海部実証実験」をはじめ、国内各地の自動運転バス実証実験で、埼玉工業大学 自動運転AIバスが駆り出される日が、2020年も続く。

<出発式テープカット登壇者>
埼玉県議会 神尾髙善 議長
深谷市 小島進 市長
埼玉県議会 木下高志 議員
東京大学 吉本堅一 名誉教授
国土交通省自動車交通局技術安全部 宮嵜拓郎 元部長
埼玉工業大学 松川聖業 理事長
埼玉工業大学 内山俊一 学長
株式会社ミクニライフ&オート技術品質部 技術課 齋藤征道 係長
埼玉工業大学学生代表 学生会 松本直樹会長
埼玉工業大学自動運転技術開発センター 渡部大志 センター長

<埼玉工業大学>
http://saikocar.sit.ac.jp/