山本耕史がゲストの女優とともにつくりあげる即興ドラマ「抱かれたい12人の女たち」テレビ大阪、毎週土曜1:26〜、TVerおよびひかりTVにて配信あり)が先日最終回を迎えた。

バー「Y'zoo」のマスターである山本耕史のもとに、毎週違う女優が客として訪れる。決まりごとは、最後に山本が彼女のためのカクテルをつくり、差し出したときに女性が「私を抱いてくれませんか」と言って締めること。女優たちはこのラストに向かって、それぞれに奮闘する。

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山本耕史を翻弄する女優たち
改めて12人の女性たちを見てみよう。

第1話 高橋メアリージュン:浮気されたセックスレスの女
第2話 若月佑美(元乃木坂46):女優…恋愛経験ゼロの女
第3話 MEGUMI:昔、男だった女
第4話 筧美和子:100人斬りの女
第5話 中村ゆりか:殺してきた女
第6話 松本まりかアロマオイルを売る女
第7話 岡本玲:売れないパンクロッカーの女
第8話 三浦理恵子:年上の女
第9話 佐藤江梨子:ストーカーの女
第10話 奈緒:漫画家になりたい女
第11話 高橋ひとみ:霊媒師の女
第12話 剛力彩芽:芸能記者の女

5話までのレビューは以前書いたが、それ以降も癖のある女優が並んだ。
第6話では「怪演女優」として注目を集める松本まりかが高額でアロマオイルを買い取らされて販売している女を熱演。「イケてなさ」を出し、山本に説教させるという展開にもっていった。第7話の岡本玲はふだんのイメージとは真逆のパンクロッカーに扮し、バーカウンターの上に座ってタバコをふかしたかと思うと、最後にはふわふわした女性に変身してギャップを見せつけた。三浦理恵子は子供を育て上げ、お見合いで結婚した夫との離婚届を提出する直前に初めてバーに来た主婦。ストーカーの佐藤江梨子、霊媒師の高橋ひとみには山本が押され、翻弄されるかたちに。奈緒は漫画家志望として早口でしゃべり倒し、また別のやり方で山本を振り回した。

女優たちは、おそらくはほかの11人を意識しながら、自分の回でいちばんのインパクトを残し、山本との掛け合いを成立させるという命題を背負ってバーの扉を開ける。バーカウンターという狭い空間の中で、数十分で初対面から「抱いてくれませんか」まで持っていくため、奇抜な演技もしてみせる。
そんな中でどうしても心に残るのが、山本のさまざまな顔を引き出した回だ。
前回のレビューで「歌や殺陣も見てみたい」と書いたが、第10話の奈緒は「自作の漫画キャラそっくりの人を見つけてしまった」という設定から山本にさまざまなポーズや殺陣を要求。山本も今聞いたばかりの「赤とんぼ」というキャラを自在に演じきった。
第7話の岡本玲はいきなり山本にギターを弾かせ、歌詞を与えて即興で曲を作らせるという無茶を仕掛けた。ノリノリの山本は曲調の違う曲をどんどん歌い出すばかりか、岡本の告白にBGMをつけはじめる始末。番組後半の反省会パートで「すげえ名曲いっぱいできた」「ずっとやってられる」と山本に言わしめた。しかも岡本は最後には自分のかわいさを見せつけるところまで盛り込むしたたかさ!
キャラクターを演じきり、その存在で山本を翻弄する女優は魅力的だ。その中で引き出す側にまわった彼女たちに拍手を送りたい。

剛力彩芽のドキュメンタリー?
最終回に登場したのは、一年半ぶりのドラマ出演となる剛力彩芽だ。彼女はそれまでの誰とも違うアプローチをした。「女優Aを追う芸能記者」として登場したのだ。山本に差し出した名刺には「週刊大砲 大須賀あや」。大須賀あや、おおすかあや、オスカーあや!
なぜか所属事務所をもじった名前をもつ彼女は、「ここにショートカットの女優A、来たでしょ?」と探りを入れる。
「もうちょっと大人しくしたほうがよくない?」「どう見たって世間から浮かれてるようにしかみえない」「浮世離れしたような、写真とかあげちゃったりして」「最初のイメージが元気で明るくて」「そういうイメージから全く違うとこいっちゃったから、なんでそこをうまく器用にできなかったかなって」
どこまでいくのか、観ているこちらが胆を冷やすほどの赤裸々ぶりをみせる。そして、女優Aカップルを追っていたこの女性は、彼氏に電話でフラれてしまい、泣き崩れる。
もちろん、これはあくまでも芝居だ。彼女が話す女優Aは架空の存在だ。バラエティ番組などではなく、ドラマでここまで語ることで、彼女は彼女なりに女優として改めて歩んでいく意志を見せたのではないか。さんざん女優Aをこきおろしていた芸能記者はさらっと言う、「彼女はお芝居好きだって」。

「抱かれたい12人の女たち」は12人の女優の魅力も、山本の過剰さも見える番組となった。最後には剛力の思い切った演技によって、現実とドラマの入り混じるさまさえ観ることができた。
唯一心残りがあるとすれば、あの女優が出なかったこと。最終回のエンディングで山本がこぼした「奥さんが最終回に来るんじゃないかと思って」の言葉がいつか実現する日は来るだろうか。

最終話12話はテレビ東京で今夜3:50〜放送される。ドキュメンタリーのような演技のような剛力彩芽と、対峙する山本耕史を見てほしい。
(釣木文恵)

抱かれたい12人の女たち
監督:平岩憲和
出演:山本耕史ほか
プロデューサー:岡本宏毅
チーフプロデューサー:金岡英司
オープニングテーマ:加藤ミリヤ「PARADE」
エンディングテーマ:Teresaざくろ
制作:テレビ大阪dainaRI製作著作:「抱かれたい12人の女たち」製作委員会

イラスト/まつもとりえこ