12月21日最終回となった土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」(テレビ朝日系)で黒澤武蔵を演じた吉田鋼太郎。「おっさんずラブ」出演以降、世間的には“ちょっと可愛いおじさん”というイメージが定着してきた。そんな吉田の本質は、テレビで見ていてもリビングを“劇場化”させるほどの“芝居筋”にある。(以下、「おっさんずラブ-in the sky-」のネタバレがあります)

【写真を見る】「好きになってもいいですかーーっ!」春田(田中圭)に絶叫告白の黒澤(吉田鋼太郎)!!

吉田は2020年1月19日(日)より放送開始のNHK大河ドラマ麒麟がくる」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか※初回は75分)では、荒々しくしたたかな戦国武将・松永久秀役を演じる。

早くも「これは見たい」「似合いすぎ」「松永目当てで見始めることにした」などといった声が集まっているのだが、吉田には、ボーっと見ていたテレビを一瞬にして演劇の舞台へと変えてしまう力がある。

演じている目や身体の動き、声の出し方などに“芝居用の筋肉”とでも呼ぶべきものが備わっており、若手俳優が一朝一夕に出来ることではない芝居を見せてくれるのだ。

■ 当たり役となった「おっさんずラブ」の黒澤武蔵

先日最終回となった土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」(テレビ朝日系)では、主人公の客室乗務員・春田(田中圭)に恋をするパイロット・黒澤武蔵役を演じきった吉田。

黒澤武蔵というヒロインは、単発ドラマ(2016年)と連続ドラマ(2018年)、さらに2019年8月に公開された劇場版すべてに出演する、「おっさんずラブ」に欠かせない人物。中年男性でありながら、心の中は乙女全開で、春田の行動に一喜一憂しながらドキドキの毎日を送るキャラクターだ。

相手の様子をうかがいながら全力で愛を告白し続ける武蔵が、初恋を味わう女子のように可愛い一方で、上司として厳しく春田を叱るシーンでは、頼りがいのある凛々しさが格好良かった。

コメディもバッチリの武蔵がファンから愛された

武蔵のシーンは、手のひらサイズの“ミニ武蔵”が机上でちょこまかと暴れるなど、コメディ要素も多かった。春田と武蔵、そして副操縦士の成瀬(千葉雄大)と整備士の四宮(戸次重幸)が一堂に会し、本音をぶつけ合うために行われた「黒澤杯卓球大会」や「相撲大会」は、互いに愛を叫びながらポンポン飛び出すセリフと、男同士の激しいぶつかり合いが、まるで即興コントのようだった。

劇場版でも、五角関係にこじれた男5人で入ったサウナシーンで「どこまでアドリブ?」と感じるコミカルな乱闘を見せ、このシーンは「おっさんずラブ」公式Twitter内で発表されたファンが選ぶ劇場版おっさんずラブ好きなシーンベスト3」の第2位に選ばれている。

キュートさと凛々しさ、笑いのセンスも抜群の武蔵のキャラクターが、ファンから愛されていたのである。

「―in the sky-」のラストヒロインの名にふさわしく、思い焦がれた春田との恋を成就させる形で幕を閉じたが、武蔵ファンからは「まだいろんな武蔵できそう」と、「―in the sky-」の後も学校編の校長役、病院編の院長役、動物園編の園長役などを「見たい見たい!」との要望が上がっていたりする。

■ 助演男優賞に輝いた「カラマーゾフの兄弟」の怪演

ところで、6年前に放送されたドラマ「カラマーゾフの兄弟」(2013年フジテレビ系)を見て、吉田の芯のある“芝居筋”を感じた人はいるだろうか。

ロシアの文豪・フョードル・ドストエフスキーの名作をドラマ化した心理ミステリーで、吉田が演じたのは、市原隼人斎藤工、林遣都が演じた三兄弟の父で資産家の黒澤文蔵だ。

奇しくも…なのか、制作サイドの遊び心からか「おっさんずラブ」と同じ黒澤であり「武」と「文」の一文字違いの役だが、その人柄もまるで正反対。文蔵は人への愛を微塵も感じられない暴君親父で、息子を怒鳴り散らし、暴力を振るい、怒り狂っていた。

画面から飛び出して殴りかかってくるようなその熱量といったらとてもテレビサイズに収まるものではなく、吉田が数多く出演してきた蜷川幸雄演出の舞台を見ているかのようだった。

立派な調度品が並ぶお屋敷に飾られた文蔵の眼光鋭い肖像画は、ひときわ存在感を放ち、この作品で吉田は、第76回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の助演男優賞に輝いている。

朝ドラで女性ファンが急増!

それから1年後、吉田鋼太郎の名を一気に広めたのは、NHK連続テレビ小説花子とアン」(2014年)で仲間由紀恵演じる伯爵家の娘・葉山蓮子の夫を演じた嘉納伝助役だろう。

九州の石炭王である伝助は、金の力で若く美しい蓮子を妻にしたが、教養の無さと横暴さで蓮子の信頼は得られず、絶縁状を新聞に掲載されてしまう。恥をかいた伝助だったが、蓮子を好いていた気持ちに偽りはなく、金を使うことでしか愛の表現ができないただ不器用な男であったことが描かれていた。

別れた伝助と蓮子が再会したシーンでは、去り際に伝助から蓮子のおでこにキスをした。実はそのキスは、吉田のアドリブだったことが明かされ、大きな話題となった。最後の共演シーンであり、撮影的にも最後だったため、吉田から台本にないキスをしたそうだが、仲間由紀恵も大層驚いたに違いない。しかし、結果として伝助の男らしさや未練を表現する、とても人間味のあふれるシーンになっていた。

悪役として登場した伝助だが、蓮子への一途さが「切ない」との声が徐々に高まり「お金持ちがフラれるの切ない」「丸出しの九州弁可愛い」「鋼太郎さんの色気がすごい」と回を重ねるごとに伝助ファンを増やしていったのである。

2020年も吉田鋼太郎は挑戦し続ける

芸能人の中には、画面に登場するだけで「何かしてくれる」と期待される人というのが存在する。

芸人ならば「この人がいるなら、もう絶対面白い」と思わせてくれる人。役者であれば、ドラマや映画の制作陣に「この人ならお願いした以上の芝居を見せてくれる」と信頼されているのだなと想像できる人だ。吉田鋼太郎は、多くの人にとってそんな存在だからこそ、注目作に次々と起用されるのだろう。

NHK大河ドラマ麒麟がくる」の前にも、12月28日(土)には伝説の料理番組「料理の鉄人」を“料理×科学”という新たなテーマで復活させた番組「料理の神様」(昼1:30-2:55、フジテレビ系)では、支配人に扮して初めて料理番組のMCに挑戦する。

2020年4月11日(土) 夜9:00-10:29、NHK BSプレミアムでは、萬屋錦之介が主演を務めて話題となった映画「柳生一族の陰謀」(1978年)のドラマ化作品に主演することが決定している。

また「おっさんずラブ-in the sky-」のDVDBlu-ray2020年4月15日(水)発売予定だ。

現在60歳の吉田は、誰にも真似できない“芝居筋”を使って、これからも様々な作品で新しい顔を見せ続けるだろう。(文=ザテレビジョン ドラマ部)(ザテレビジョン

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