完敗したコロンビア戦の“勉強代”を払うため、主将の中山が選手間ミーティングを開催

 森保一監督率いるU-22日本代表は28日、トランス・コスモススタジアム長崎でU-22ジャマイカ代表と対戦し、9-0の大勝を収めた。交代選手も含めて前線に入った全6人がゴールをマーク。11月の国際親善試合コロンビア戦(広島)では0-2で完敗したが、連動した守備から素早い攻撃へとつなげ、終始相手を圧倒した。1カ月で見事な“変貌”。試合後に出た選手の証言から実現できた理由を探る。

 来年に東京五輪を控え、2019年のラストゲーム。気温6度のなか、試合は開始直後から熱さを増した。前半5分にキャプテンマークを巻いたDF中山雄太(ズウォレ)が直接FK弾を叩き込むと、日本の攻撃は一気に活性化。バルセロナBでプレーするMF安部裕葵や、1トップに入ったFW前田大然(マリティモ)、2得点のMF旗手怜央(順天堂大)に加え、途中交代の前線3人もゴールを決め、最後は9得点の大勝で締めくくった。

 何より光ったのが前線からのプレスだ。前の3人は積極的にプレスをかけて、取り切れなくても素早い切り替えで後ろから追った。そして、相手へ前線に運ばれる前に奪い返し、ショートカウンターで再び好機へ。豊富な運動量による献身的な守備で終始ペースを握る圧倒的な戦いぶりだった。

 1カ月前、広島でのコロンビア戦ではA代表のMF堂安律PSV)やMF久保建英(マジョルカ)を招集。初めて五輪代表との融合を図ったが、連係面を含めて手探り状態だった。A代表と兼任で指揮を執っていた森保監督が五輪代表の練習を見ることができたのは1日だけ。監督自ら戦術を深める時間はなく、本大会へ不安が残った。

 だが、その不安を払拭しようと選手が動いた。今回の合宿ではメンバーが大きく変わったためコロンビア戦に先発出場したのは中山とDF岩田智輝(大分)だけ。まず主将の中山が立ち上がり、選手ミーティングを開いた。そして、6月のコパ・アメリカ南米選手権)などでA代表に招集された経験を生かして五輪代表で足りない“甘さ”を指摘した。

「自分の思っていることを遠慮せずに言い合うことを伝えた。その意識から習慣を付けたい。でも、これはコロンビア戦の敗戦から考えたのがきっかけで、僕は幸いA代表の活動に何回か参加させてもらって、A代表の選手はそれ(言い合うこと)が当たり前になっていたので、まず始めようと」

安部が“バルサ流”プレスを周囲に説明 「自分の意見も出して…」

 自分たちには何が足りないのか――。まずはA代表の先輩が見せていたように、ピッチ外で徹底的に話し合うことから始めた。そして話は守備について及ぶことになる。これを強く主張したのは3か月ぶりの招集となった安部だった。スペインの強豪バルセロナでトップチームに混じることもある安部は、プレスの掛け方について落とし込んだ。

「選手として自分の意見も出して、周りの意見も聞いて、充実したものになった。(守備は)奪われた瞬間に前に走るのが大事だと思っている。イレギュラーが発生した時、上手くいかなかった時の対応をすごく話していたし、それが良かった。守備も攻撃も90分で何十回もミスはあるけど、それをカバーしあってやれたと思う。練習中から距離を意識しようと」

 大事なのは前線の3人で共通意識を持つこと。そのうえで、連動性を持つこと。安部は前田と旗手にプレスの掛け方を細かく説明。奪われてから6秒間は後ろから追い続けるというスペインでの“ルール”を話し、周囲に5日間の練習期間で体に染み込ませた。試合前日にも選手間ミーティングをして、自分の考えを浸透させた。逆サイドシャドーを組んだ旗手が証言する。

スペインのルールを自分と大然にすごい話してくれた。前から行ってかわされても後ろから追いかけて行った方がいいと裕葵は言っていた。昨日の夜も選手だけでミーティングした時に、そういう掛け方をしたいと。自分的には『どうなのかな』と思ったけど、今日みたいに、相手にプレスをかけて(ボールを)取れるのなら、めっちゃ楽。これまでは前に行くだけだったけど、自分たちで後ろから行って取れれば楽。そういうのは今回の合宿で凄さを感じた。今回いろいろ話してタメになった。あまり選手個人と話してタメになることないけど、やっているチームが自分たちのJリーグとは全然違うので、それは凄いと感じた」

「プロセスという部分はこだわってやっていった」

 結果的に9-0という大勝を収めることができたが、今回で一番の収穫だったのは選手が自主性を持って積極的に声を上げたこと。一歩でもA代表に近づくためにやるべきことを明確にした過程が大事だった。「この悔しさを無駄にしてはいけない」。コロンビア戦後の試合後、選手たちはそう発した。そして、翌月の合宿では早速行動に移した。中山は言う。

「今回、プロセスという部分はこだわってやっていったし、1試合だけですけど、結果が出たことについては、やってきたことは間違いではなかった」

 五輪イヤーとなる来月には公式大会のAFC U-23選手権が待ち受ける。中山も安部も招集されていないが、今回“レガシー”を受け継いだ選手が再び新たなチームに落とし込むはず。競争が激しくなるなかでも、確実に積み上げているものがあると証明した2019年ラストゲームだった。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

ジャマイカ戦のU-22日本代表先発メンバー【写真:Getty Images】