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そもそも都市高速とはどんな高速道路?

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

首都高速に代表される都市高速は、都市の交通を円滑にするために作られた有料の自動車専用道路である。

都市計画法で規定されており、現在、以下6地域で供用されている。

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旧道路構造令で設計された道路の合計は約95kmで、首都高速総延長(約338km)のおよそ3分の1弱。

首都高速(東京・神奈川・埼玉・千葉)1962年
名古屋高速(愛知)1979年
阪神高速大阪府・京都・兵庫)1964年
広島高速(広島)1997年
北九州高速(福岡)1958年
福岡高速(福岡)1980年

利用したことがある人ならわかると思うが、都市高速はどこもだいたい道路幅が狭い。

首都高速は基本が3.25mだ。

いっぽう、東名など一般の高速道路の道路幅は基本が3.5mで、新東名など設計速度120km/hの新しい路線では3.75m、またごく一部に3.25mの道路もある。

さらにその差が大きいのは左側路肩の幅である。

高速道路の路肩は2.5~3.25m以上と十分な広さが設けられているのに対して、首都高速では現行構造令(昭和45年~)で設計された湾岸線中央環状線などの新しい路線でも1.25m、昭和33年の旧道路構造令で設計された都心環状線1号羽田線2号目黒線3号渋谷線はわずか0.5m(以上)なっている。

旧道路構造令で設計された道路の合計は約95kmで、首都高速総延長(約338km)のおよそ3分の1弱となる。

設計速度や規制速度も首都高は区間によって30km/hから10km/h刻みで設定されており、主流は50-60km/h、新しい区間は70-80km/hとなっている。

首都高には追い越し車線がない?

設計速度や規制速度に独自の規定がある都市高速だが、実はもう1つ、大きな違いがある。

それは、都市高速には「追い越し車線がない」ということだ。

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一部の都市高速では便宜上、最右車線のことを「追い越しのための車線」と呼ぶこともあるそうだが、高速道路の「追越車線」(路面上に記されている表記)とは、少し意味が異なるという。

片側2車線以上の道路では、最も右の車線は「追い越し車線」に定められている。最も左の路肩側の車線は第1車線、その右側が第2車線となるが、片側2車線なら第2車線、同3車線なら第3車線が追い越し車線になる。

追い越し車線は追越しのためだけに使われるべき車線なので、追越しを終えたら速やかに走行車線に戻らなくてはならない。

「煽られ」防止のためにもこのルールは遵守すべきである。

しかし、追い越し車線がない都市高速では、追い越し車線を走り続けることによる「車両通行帯違反」での取り締まりもない。

「速く走らなければ」というプレッシャーを感じる必要もない。

なぜ都市高速には追い越し車線がないのだろうか?

首都高湾岸線のように片側3車線あり最高速度が80km/hに設定されている路線でも設定されていない。

ちなみに、一部の都市高速では便宜上、最右車線のことを「追い越しのための車線」と呼ぶこともあるそうだが、高速道路の「追越車線」(路面上に記されている表記)とは、少し意味が異なるのだそう。

都市高速独特の構造に理由がある?

首都高速道路株式会社の広報担当者に、「追い越し車線がない理由」を聞いてみたところ、以下のような回答を得た。

「東名や新東名、名神、中央道などのいわゆる高速道路は原則として左側に出入口がありますが、首都高速では出入口は左もあれば右もあります」

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右車線から合流してくるクルマもあるため、右車線を一律に追い越し車線に設定することは安全性の観点からも、できない。

「右車線から合流してくるクルマもあるため、右車線を一律に追い越し車線に設定することは安全性の観点からも、できないのです」

首都高速においては片側三車線の広い道路で、出入口が左側に設定されているところでも、追い越し車線は存在しないのです」

確かに、都市高速は全般的に短い区間の間に合流/分流が存在する。出入口間あたりの距離もとても短い。

例えば、東名高速横浜青葉~首都高3号線渋谷の区間を例にとると…‥

御殿場~大井松田間→25.8km
厚木~横浜町田→15.3km
川崎~東京間→7.6km
となる。

これに対して、首都高3号線では用賀~池尻間→6.1km、池尻~渋谷間に至ってはわずか1.2kmしかない。

都心に近づくほど、出入口間の間隔が短くなると言えるだろう。

この状況で首都高に入ってくるクルマが右からだったり左からだったり一定しないとなると、確かに右車線を一律に追い越し車線に設定するのは危険である。

区間距離が短いということは、合流や退出のための車線距離も全般的に短めだ。

なぜ首都高の出入口は統一されていない?

追い越し車線の設定がないのは首都高に限った話ではない。

右側にも出入口が設定されるケースがあり、分岐や合流が多く、複雑に入り組んでいることなど、他の都市高速も同様だ。

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とくに首都高速では右側に出入口が多い。 出典:首都高のミカタ

首都高速道路は、とくに密集市街地の中、公共用地を利用しながら建設されてきた経緯がある。そのため、区間の距離も短く、構造的にもカーブが多くなっているのだ。

そしてとくに首都高速では右側に出入口が多い

画像は「首都高のミカタ」が公開する首都高の出入口を示した地図である。

ここからわかるのは全線開通が2001年と、比較的新しい湾岸線においては、横浜~千葉間にあるすべての出入口が一般高速道路と同じく、左側入口&左側出口となっている。

しかし混雑した市街地に設置される3号線や4号線、都心環状線は右側入口&右側出口が多い。

これはスペース効率を考えた設計となっているためで、右側合流の方が料金所を含めた出入口全体をコンパクトにできる。

用地買収の観点からも必要最小限ですむ。一般道から首都高に入る場合も誤進入も少ないそうだ。

首都高を走るのは難しい! 怖い! と思う初心者ドライバーも多いようだが、出入口のルールを知って利用する路線の番号を見失わないように走ればそれほど難しくはない。

近年は路線標示も分かりやすく表示されているので、交通量の少ない年末年始にチャレンジしてみてはいかがだろうか?


【いったいなぜ?】首都/阪神/名古屋高速 都市高速に「追い越し車線」がない理由とは