ドイツ発コラム】ハノーファーで新境地を開拓中、シュツットガルト戦でも好プレーを連発

 “ボランチ原口”のポテンシャルは、凄いのではないだろうか。

 攻撃的なポジションで起用されることが多かったし、これまでは本人もそこでのプレーを望んでいたが、今所属クラブのハノーファーでは2ボランチの一角として出場することが増えている。ここ最近は実際にチームとしての安定感は間違いなくアップしており、攻守両面で好影響を及ぼしているのだ。

 今年最終戦となる21日のブンデスリーガ2部第18節シュツットガルト戦(2-2)でも、ハノーファーの日本代表MF原口元気ボランチでフル出場。本人はチーム内での役割を、どのように捉えているのだろうか。

「もう全部ですね。最近は6番のポジションが多い。ボールを受けたがらない選手が多いなかで、ボールを受けて、ボールを運ぶことと。あと、もちろん守備ですね、守備でボールを奪いに行くってところ。奪いに行きすぎずに上手くバランスを取りながらっていうのは、僕自身も新しいポジションなので、いろんなプレーを見たり、勉強しながらやっています」

 この試合でも、原口のところでボールを奪いきるシーンが多かった。先制点はシュツットガルトでスタメン出場していた日本代表MF遠藤航が、自陣でボールをトラップした瞬間に原口が一気に距離を詰めてプレスをかけに行ったところが起点となった。伸ばした足でボールを弾くと、一緒にプレスをかけていたMFリントン・マイナが拾って持ち込んでいく。守備組織を整え直す前にゴール前までボールを運ぶと、最後はFWマルヴィン・ドゥクシュがゴールを決めた。

 前半23分には、原口が中盤で果敢にスライディングタックルを仕掛けていく。届かなくてもすぐに立ち上がり、連続でタックルを仕掛け、シュツットガルトMFサンティアゴ・アスカシバルから見事にボールを奪い取る。後半25分にも中盤でボールを受けてターンをしようとするMFダニエル・ディダヴィに猛然とプレスをかけて奪い取ってしまう。スペースがある状態で飛び込むと、かわされてしまうリスクが高い。だが、それすらできないほどの勢いでプレスをかけて、相手の動きを制限してしまうのが素晴らしい。

日々ボランチのプレーを研究「守備のポジショニングとかは結構行き過ぎて…」

「僕自身、今すごいそこを勉強していて、週に1回分析ミーティングをしたり。新しいポジションなので、余計そういうことが大事になってくる。 まだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんあるんですけど、勉強したこととか結構ピッチで出たりとか。まだ、たぶん守備のポジショニングとかは結構行き過ぎて、ボールを取りに行き過ぎてちょっと空けちゃうシーンとかもあるので。そこらへんも勉強しながら、でもある程度は表現できているかなと思いますね」

 攻撃面でも貴重な働きを見せる。相手に寄せられても慌てずにボールをキープし、味方へとつないでいく。この日、ハノーファーの同点ゴールは、中盤で上手く相手の背中を取るポジショニングでボールを引き出した原口が、右サイドのMFエドガー・プリプにパスを展開したところから生まれた。

「今までのようにサイドに張っていて裏を取ったりとかというプレーだけじゃなくて、360度からプレッシャーが来ますし。どこが空いているのかっていうのを常に考えながら。そういうのが2点目のアシストだったりとかに出たのかなと思います」

 原口にはインテンシティーの高い動きを何度も繰り返せる持久力、1対1で優位になれる力強さ、プレスを受けながらもブレない技術、攻撃にバリエーションを加えるセンス、そしてチームのために走り続けられるメンタリティーがある。

 今後はさらにゲームコントロール、ボランチにおけるポジショニングの原則を身につけ、様々な試合展開におけるプレーの優先順位を知っていくことが必要になってくるが、今積み重ねているこの経験は、原口の持つポテンシャルをさらに広げる扉になっていくのではないだろうか。

 新境地を開きつつある原口の、今後の成長が楽しみだ。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

ハノーファーでプレーをするMF原口元気【写真:Getty Images】