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大幅に向上されたパフォーマンス

text:Toshifumi Watanabe(渡辺敏史)
photo:Stoshi Kamimura(神村聖)

ジャガーランドローバーのスペシャルビークルオペレーションズ=SVOは、同社のプロダクトをより魅力的なものにしたいという貪欲なユーザーの希望に応えるために用意された社内部門だ。

【画像】ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVR【ディテール】 全30枚

その仕事は単にスポーティネスの向上だけでなく、ビスポーク的な内外装の演出にも及んでいる。

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カーボンファイバーコンポジット製ボンネットが採用されている。

そのSVOがトータルプロデュースしたプロダクションモデルとして用意されるのがSVRシリーズだ。

コンセプトはベースモデルとは一線を画するパフォーマンスの大幅な向上、それに合わせてインテリアやエクステリアは世界観を統一した設えとしている。

現在日本で買えるSVRシリーズはジャガーFタイプと同じくジャガーFペイス、そしてこのレンジローバースポーツの3つになる。

SVOシリーズに搭載される強心臓

レンジローバースポーツSVRの名を一躍有名にしたのは、その速さをニュルブルクリンクで可視化したことだろう。14年、ノルドシュライフェで計測されたタイムは8分14秒台。当時SUVカテゴリーではニュルを開発の舞台にはしていたものの、タイムをプロモーションのために用いることはなかった。

現在はポルシェアルファロメオメルセデスAMGなどがそこに加わり、タイムは7分50秒を切るところに達している。

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575ps・71.4kg-mを発揮するパワーユニットは、0-100km/h加速は4.5秒を達成した。

なんだかなぁ……と思わないでもないが、要はSUVカテゴリーがそれだけ多様な魅力を訴求しなければならないほど飽和化してきたということかもしれないし、一方でSUV的なものを長年手掛けてきたランドローバーとしては、ぽっと出とは違うところを全方位で証明する必要があったともいえるだろう。

レンジローバースポーツSVRは現在、その過剰なラップタイムバトルとは一線を引いているが、確実にポテンシャルアップは果たしている。

エンジンは同じAJ−V8スーパーチャージドながらそのパワーは発売当初から25psアップの575ps、トルクは2.0kg-mアップの71.4kg-mとなり、それを受け止めるべくタイヤは更に低扁平&ワイド化。併せて足まわりはセットアップの変更を受けた。

外装回りでは新たなクーリングチャンネルを設けたボンネットが特徴的なカーボンエクステリアパッケージの設定や、上下二段のワイドモニターを用いたUI及びインフォテインメントの刷新など、スタティックな商品力も向上させている。

レンジローバーらしい乗り味

ボルスターの張り出しがいかにもオンロード志向であることを伺わせるヘッドレスト一体型のシートに座る。豊富な調整機能が用意されており、見た目のいかつさの割には窮屈さは感じない。

そして視界はレンジローバーのそれらしく、気持ち高めで前端見切りがよく、左右方向の抜け感も心地よい。

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21インチアロイホイールを標準装備するが、オプションで22インチも選択可能。

エンジンをスタートすると響き渡るドスの効いたV8サウンドにちょっと身構えるが、その走り出しは実に繊細だ。

適度な重みのアクセルペダルにゆっくり力を込めれば路面を優しく掴みながらじんわりと速度を上げていく。同様にブレーキも効きの立ち上がりが穏やかで、踏力にリニアに反応する。

悪路では一発のスリップが命取りになることをよく知る彼らならではの見識ある設えのおかげで、レンジローバースポーツSVRは低速域でも速度調整がのしやすく、街中でも所作麗しく乗員にも優しい加減速が容易に引き出せる。

また、オプションの22インチに件の極太低扁平タイヤを合わせていながら、低中速域での乗り心地が努めて穏やかなところもレンジローバーブランドらしさといえるだろう。

さすがに鋭い凹凸になるとタイヤの縦バネ特性が入力のインパクトを強めるが、路面のパッチや目地段差などでいちいち不快な思いをすることはない。

車体を大きく揺すられるうねりなどでのたっぷりしたサスのストローク感や支持剛性もまた、悪路耐性を土台にした足まわりの余裕を感じさせる。

見事なシャシーの味付け

低回転域からゆとりあるトルクを供してくれるスーパーチャージドV8は、回転の高まりと共にサウンドの凄みを増しながらグイグイとパワーを立ち上げてくる。

0〜100km/h4.3秒という数字などどうでもよくなるほど全開時の瞬発力は強烈だ。もちろんこれに類する、或いは上回るSUVもある。

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室内にはパフォーマンスシートやSVRステアリングなどの専用装備が採用される。

が、レンジローバースポーツSVRはそれら仮想敵に比べると、シフトアップの瞬間に車体をグイッと前に持っていく押し込みの強さがある。

283km/hの最高速は完全に空気の壁に圧されたものだろうが、広域で駆動力をダイレクトに感じられるのは、この使い込んだエンジンならではの持ち味だと思う。

ともあれ悪漢ぶりが際立つ音質や音圧に高揚感が奪われがちだが、スポーツドライビングにおけるレンジローバースポーツSVRの一番の見どころは、2.4tの車重を見事に手なづけたシャシーの味付けの巧さだろう。

ピッチング方向の動きを巧く規制しながら自然なロール姿勢を作り出し、タイヤをベタッと路面に落ち着けて重量や重心を巧くなだめながら弱アンダー傾向で曲げていく。

路面状況に応じて駆動配分やサスレートなどを最適化するテレインレスポンス2にはワインディングのモードも設けられており後輪側の駆動力を最大化、さすがにオーバーステア方向に転ぶほどではないが、この車格としては破格にニュートラルなハンドリングを楽しむことも出来る。

このクルマではタイトコースを走り込んだこともあるが、サーキットには似つかわしくない視点に違和感を覚えつつも、見事なコーナリングマナーを備えていることに驚かされた。

ランドローバーらしいチューニングモデル

もちろん、このクルマでそんな場所を走ろうとすること自体、まったくイレギュラーなことだ。が、単なる火勢の力任せではないことを証明するために、それは然るべき行為でもある。

レンジローバースポーツSVRは極限までオンロードのドライバビリティを高めつつも、それを気品ある立ち振る舞いと両立させた、いかにもランドローバーらしいチューニングモデルだと思う。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVRのスペック

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専用のアクティブスポーツエグゾーストを標準装備。

価格:1723万円
全長:4880mm
全幅:1985mm
全高:1800mm
最高速度:283km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:7.6km/L(JC08モード)
CO2排出量:-
車両重量:2450kg
パワートレイン:V型8気4999ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:575ps
最大トルク:71.4kg-m
ギアボックス:8速オートマティック


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