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  • 哺乳類で卵を産むのはカモノハシハリモグラのみ
  • 乳首が無いのでお腹から汗のようにお乳を出して子どもを育てる
  • クチバシには電気を感じる神経があり、それを利用して獲物を捕らえる

カモノハシは、ビーバーのような毛に覆われた体にカモみたいな平たいクチバシ、そして手足には水かきを持った獣と鳥が合わさったような外見の動物です。

哺乳綱単孔目カモノハシ科に分類されるカモノハシは、オーストラリアの川や湖に生息している固有種で、成長すると全長50cmほどの大きさになります。

ワシントン条約で保護されているので、日本では残念ながらその姿を見ることができません。

その奇怪な見た目は昔の科学者たちの頭を大いに悩ませていたようで、カモノハシの標本を「誰かが毛皮を継ぎはぎして作った偽物に違いない!」と縫い目が無いか確認したという逸話が残っているほど。

学者さえも首をひねった珍獣カモノハシ。その不思議な見た目と同じように、彼らは他の動物とは一線を画すような面白い生態も持っているのです。

哺乳類なのに卵から産まれる

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卵を産む生き物といえば、鳥類や爬虫類などをイメージしてしまいますよね。しかし実は、哺乳類の中にも卵を産む種類が存在しているのです。

卵を産む哺乳類と分類されているのは、今のところカモノハシハリモグラの2種類だけ。

カモノハシは繁殖期になると巣穴の中に卵を産み、その卵をメスがお腹と尻尾で包み込むようにして温めて孵化させます。

ちなみにカモノハシは卵を産むのも糞や尿をするのも全て同じ「総排出腔」と呼ばれる一つの孔から行います。この孔を持つことがカモノハシが単孔目に分類される要因なのです。

卵はおおよそ10日ほどで孵化し、中からはまるでネズミやモグラの子どものような毛の生えていないツルっとした可愛らしい赤ちゃんが出てきます。

乳首は無いけどきちんとお乳で育てる

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カモノハシ哺乳類に分類されているので、子どもにはお乳をあげて育てていきます。しかし驚くことに、カモノハシには乳首がありません。

乳首が無いなら、赤ちゃんはどうやってお乳を飲むのでしょうか?

カモノハシには乳首はありませんが、お腹の辺りに乳腺は存在しています。その乳腺から汗のように滲み出るお乳を舐めて、子どもたちは大きくなっていくのです。

先述した、卵を産む卵胎生で総排出腔を持つことや乳首が無いことから、カモノハシは大昔からその姿が変わらない、かなり原始的な生き物であるとされています。

シーラカンスのような「生きた化石」と呼ばれる生き物の仲間ですね。

どうしてカモノハシが太古からほとんど姿を変えず生きてこられたかという謎には、カモノハシが住んできたオーストラリアという環境が密接に関わっていると考えられています。

オーストラリアは大陸から切り離され、島として独自の生態系を築いてきました。コアラカンガルーに代表されるオーストラリアの固有種がその最たる例でしょう。

また、カモノハシ水の中に適応したこと他の動物とあまり住処を争わないで済んだとも言われています。

独自の進化を遂げることでそもそも生存競争に参加しない抜け道を見つけたのですね。

島という外部から他の生物が入って来ない環境と競争相手の少ない水の中に適応したことで、カモノハシは今日まで大きく姿を変えることなく安定して生き延びてきたとされています。

名前の由来にもなったカモのようなクチバシ

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カモノハシの名前の由来はカモのクチバシに似ているからカモノハシとされており、四肢のある体に生えた平たくて大きなクチバシは思わず目を奪われてしまいます。

このカモノハシのクチバシですが見た目が似ている鳥のクチバシが固いのに対し、触ってみると弾力があってゴムのようなやや柔らかい触感なのです。

カモノハシはこのクチバシを使って食べ物を探すのですが、その方法も実にユニーク。

なんとカモノハシのクチバシには生き物に流れる電流を感知できる神経があり、それを活用して川底に隠れた小さな魚やエビ、貝などの獲物を捕らえるのです。

そのため、水の中に適応したカモノハシですが泳いでいる最中は目を開けることはありません。

また、カモノハシにはクチバシの中に歯が生えていません。これは電流を感じる神経を発達させるために、歯が邪魔になったので退化したからと考えられています。

小さな生き物なら殺すことのできる毒を持つ

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ずんぐりむっくりの愛らしい姿で、危険なイメージはないカモノハシ。しかし実は、犬程度の大きさの動物なら死に至らしめるほどの強力な毒を持っています。

カモノハシが毒を持っているのは後ろ足で、蹴爪と呼ばれる鋭い爪が生えている部分です。

足にある胞状腺で作った毒を蹴りつけた際に爪を喰いこませることで、相手の体に毒を入れるのです。

この毒はオスしか持っておらず、メスのカモノハシでは確認されていません。

外敵から身を守る目的でも使われますが、縄張り争いや繁殖期にオス同士でメスを巡って戦う際にも利用されています。

カモノハシの毒で人間が死亡した事例はまだ報告されていませんが、もし毒を注入されてしまうと非常に激しい傷みに襲われてしまいます。

タンパク質性の毒はモルヒネを使っても傷みが治まらず、酷い時は数ヵ月の間傷みが続くこともあるのですよ。

オーストラリアに行けばカモノハシに会える!

いかかでしたでしょうか。鳥と獣が合わさったまるでキメラのような不思議な生き物カモノハシは、独自の面白い生態をたくさん持っています。

実物を見るためにはオーストラリアまで行かなければいけませんが、気になった方は是非現地まで足を運んでみてくださいね。

 

written by ナゾロジー編集部
なぜ鳥じゃないのにクチバシがあるの?不思議な珍獣カモノハシの生態