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日テレ・G+、NASCAR16年間に幕

text:Kenji Momota(桃田健史

日本テレビのCS放送「G+(ジータス)」は2019年12月上旬、2020年NASCARの放送予定がないことを明らかにした。

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2004年から続いてきた、G+NASCAR放送が終わった。2020年から日本テレビに変わり、どの放送局が日本でNASCAR放映をするのか、現時点では未定だ。

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アメリカのモータースポーツを主題とする国内番組は減少傾向にある。

筆者はこの16年間、同番組の解説者を務めてきた。また、それ以前には関西系のテレビ局が日本でのNASCAR放送権を持っており、同番組でも解説をしてきた。

日本ではマイナーなアメリカンモータースポーツを、日本のレースファンだけではなく、エンターテインメントとしてより多くの視聴者の方に楽しんで頂こうと、自分なりの工夫をしながら放送に参加してきたつもりだ。

しかし、現実は厳しい。NASCARが日本でブームは一度もなく、有料放送として収益性の高いコンテンツとなるまでには育たなかった。

NASCARと共に、アメリカを代表するインディカーレースについても同様だ。

日本テレビが放送権を持ち、「ツインリンクもてぎ」で遠征レースを中継し、また毎週レギュラー番組でアメリカンレース情報を流したが、結局大きなムーブメントは起こらなかった。

アメリカモータースポーツは邪道!?

日本でアメリカンモータースポーツがウケないのは、日本とアメリカの国民性の違いが大きい。日本人とって、エンタメ性が強過ぎるように感じるからだ。

そもそも日本人は、F1やルマン24時間など、ヨーロピアンレースに対する憧れが強く「ヨーロッパが王道」が一般常識になっている。

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フォーミュラカーレースにおいては、F1が頂点であり、インディカーは邪道、または二流というイメージが日本人の中から抜け切れていない。

フォーミュラカーレースにおいては、F1が頂点であり、インディカーは邪道、または二流というイメージが日本人の中から抜け切れていない。

実際、F1レーサーとしてピーク期を過ぎたレーサーがインディに転向するケースが多い。

それでも、インディカーの場合、車体の製造メーカーは長年に渡りヨーロピアン企業が主流であるなど、技術面では欧州色があり、日本人としてもF1つながりとしてインディカーを理解しやすい環境にある。

一方、NASCARとなると、日本人の理解の枠を超えてしまうのかもしれない。

ショートオーバルコースでは周回数が数百回にも及ぶこと。近年はレーサーの平均年齢は若くはなってきたが、それでもトップレーサーは30代後半から40代にかけてが主流なこと。車体の性能はGTカーと比べると高くないこと。

また、荒々しいピット作業の風景など、日本人にとっては異質な存在に見えるはずだ。

モータースポーツ好きのはずのアメリカ人が……

そんな独自色が強いNASCARだが、近年はアメリカ本国でも人気低下に歯止めがかからない状況だ。NASCAR中継を見ても明らかなように、観客席で空席が目立つレースが増えている。

理由は、いくつかある。

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空席が目立つレースが増えている理由の第一は、ブームの反動。第二は、レース自体の荒々しさが少なくなってきたこと。

第一は、ブームの反動だ。

NASCAR80年代まで、アメリカ人にとってもマイナーな存在だった。それが、エンタメ性を強調したテレビ中継が奏功し、90年代中盤に人気が急上昇。レース場の運営企業は集客増を狙って観客スタンドの増設を進めた。

収容人数2~3万人程度から5万人、10万人と規模の拡大が続いた。また、90年代後半から2000年代にかけて、全米各地に新設の大型オーバルコース建設ラッシュとなった。

こうした拡張路線が行き過ぎてしまい、観客数が減少することで、空席が目立ち、それを目にする観客やテレビ視聴者がNASCAR人気低下を実感してしまうという悪循環に陥った。

第二は、レース自体の荒々しさが少なくなってきたことだ。

2000年代までは、チームやレーサーの技量差が大きく、レース中の故障やアクシデントが多数起こり、それがエンタメ性とうまくバランスが取れていた。

それが近年になり、チーム運営はさらにプロ化し、レーサーの技量も高い水準で横並びとなり、結果的にレース中のアクシデントが減った。

ガンガンにぶつかり、レース終盤に大どんでん返しが起こるのがNASCARの当たり前、と思っていたファンにとって、物足りなさを感じるようになった。

もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由がある。

アメリカでも、クルマばなれ!?

もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由が、クルマばなれだ。

クルマ社会のアメリカで、クルマばなれは起こっていない、と思うかもしれない。

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もう1つ、NASCARを含めたアメリカンモータースポーツがアメリカで人気減少になっている理由が、クルマばなれ。

確かに、移動手段としてのクルマに対する需要は健在だ。90年代まではC/Dセグメントセダンが市場の主流だったが、2000年代からSUVピックアップトラックなどライトトラックへと移行した。

そうした中で、アフターマーケット市場もある程度の規模で存続している。

だが、いわゆる「クルマ好き」の高齢化は日本と同様だ。「クルマ好き」の多くが「モータースポーツ好き」であり、モータースポーツファン数の減少とファンの高齢化が顕著となってきた。

日本でのNASCAR放送が1つの区切りとなったいま、改めてアメリカンモータースポーツの将来あるべき姿について、深く考えさせられる。

テスラなどEV需要が今後さらに伸びことで、EVであるフォーミュラeがアメリカでも定着するのか。それとも、実車ではなくヴァーチャルEスポーツがモータースポーツの主流になるのだろうか?


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