ガンダムを巡る議論は尽きることがない

30代の僕にとって『機動戦士ガンダム』は子どもの頃からずっと身近な作品だ。学校では、頭のいい子も、足が速い子も、当然のようにガンダムの話をすることができた。そしてそういう環境で、よく議論になるセリフがある。

それがファーストガンダムで、巨大モビルアーマー(MA)のビグ・ザムに搭乗したジオン軍ドズル・ザビ中将が発した「ビグ・ザム量産の暁には、連邦などあっと言う間に叩いてみせるわ」という言葉だ。(文:松本ミゾレ)

大型MAの量産はナンセンス……ジオンのどこにそんな底力が(涙)

劇中ではほとんどのMSが量産されて登場していた。ザクIIはもちろん、当初はかなりの強敵として描かれたグフ、ドムも量産化されて続々立ちはだかる。

さらに終盤では高性能機のゲルググまでが多数配備され、対する連邦はジムというMSを大量生産し、戦線に加えさせた。

ただ、MAの量産についてはジオンも連邦もあまり重きを置いてはいない。一部、ビグロなどが劇中で複数登場していたが、トクワン機以外の具体的な活躍までは描かれておらず、どれほど活躍したかは不明だ。

「量産の暁~」発言のあるビグ・ザムも、戦後になってみれば実は複数作られていたとする"外伝"はあるが、基本的にはソロモン戦に間に合ったのはドズルの乗ったあれ1機だけと思われる。

ドズルは自分がいる宇宙要塞ソロモンに連邦軍が集結する直前、通信で長兄ギレンに援軍を差し向けるよう要求した。この際に「戦いは数」と主張している。基本的にはMSの受領を望んでいたようだ。

しかし実際に送られてきたのは試作MAのビグ・ザムであった。これについては恐らくドズルも失望をしたことだろう。

一応ビグ・ザムは要塞防衛用のMAだし、実際に稼働時間こそ宇宙空間では20分程度しかないという弱点を抱えつつも連邦のティアンム艦隊に大打撃をあたえた。

というか出撃直後には連邦の量産機ジムとボールの混成軍も文字通り蒸発させる活躍も見せている。さらにビグ・ザムには、遠距離からのビームを減衰させる機能も試験的に導入されていたが、これが大いに役立った。まさに動く鉄壁砲台だ。

だけど、やっぱりジオン公国は宇宙の片隅に浮かぶ小さなコロニーの集合体でしかなく、資源には限りがある。オデッサを占領していた短い期間に、マ・クベが相当数の資源を本国に送った痕跡こそあるが、その少ない資源を有効活用するなら、MSを大量生産するべきだろう。

MAが非常に高コストで、実際ビグ・ザムなどはムサイ級軽巡洋艦2隻分のコストがかかっていると設定されている。これまで実に多くのガンダムファンやガンオタが主張してきたとおり、やっぱりビグ・ザムを量産するぐらいなら、その分ムサイかMSを量産したほうが戦線拡大には役立つはずだ。

「もっと使い勝手の良いゲルググを大量生産したほうがよくないか?」

ではここで、ネット上に見受けられる意見なんかも紹介させていただきたい。ヤフー知恵袋にもビグ・ザムの量産化の是非を問う質問が複数あった。

ビグ・ザムは1機あたり戦艦2艦分以上という高コスト兵器です。こんな高価な兵器が量産できるのなら、確かにジオンは勝てるでしょう。ただ、もっと使い勝手の良いゲルググを大量生産したほうがよくないか? という疑問はあります」
量産型がどの段階でどれだけ投入されるかによります。一年戦争の緒戦から中盤までだとジャブローを攻略できたでしょうが、ソロモン戦やア・バオア・クー戦に至っては防衛だけなら可能だったでしょう」
「物資がなくなってジオンは早期に負けてたでしょう。太平洋戦争の日本で言えば戦艦大和ばっかり建造するようなもの」

こんな感じで、ネット上では賛否両論のようだ。僕としても、ビグ・ザムは量産には不向きと考えている。開戦当初、ジオンあの世界で史上初のMS戦を行い、戦闘機と戦艦しかない連邦を一気に追い詰めた。

ついで今度は連邦がジムを開発して大量に生産し、やっとこれまで物量で押すしかできなかった状況に光明が差した。ここでパワーバランスが大きく変動する。

さらに連邦は地球圏各地に拠点があり、資源も都度まかなえる。だがジオンはそうは行かない。既に重要拠点のオデッサは奪還されていたのだから。となると、ビグ・ザムには後ろ髪を引かれつつも、ここはザクⅡリック・ドムゲルググあたりを増産するほうが、やっぱりいいという判断になるはずで……。

でも、ビグ・ザムソロモンに送られてきた際は一度分解された状態になっていて、防衛線が始まってからもしばらくは組み立て途中だったという話もある。だから、もしもギレンがもっと早くビグ・ザムを送っていて、連邦軍との戦いの当初から戦陣に加わっていれば、ひょっとするともう少し評価も違ったのかも。

ジムやボールが既にソロモンに肉薄してからようやく出撃しても、もう陽動ぐらいしか使い道がないもんなぁ。そういう意味ではビグ・ザムコスト面でも冷遇され、劇中の末路もまた哀れなものに感じる。