過去2作品が大ヒットを記録した「カイジ」が、オリジナルストーリー&シリーズ最終回『カイジ ファイナルゲーム』として9年ぶりにスクリーンに帰ってくる。 映画は2020年1月10日(金)より全国東宝系にて公開。本作で藤原竜也演じるカイジとゲームで対峙する首相主席秘書官・高倉浩介を演じるのは、福士蒼汰。クセが強すぎる登場人物たちやカイジ独自の世界観の中で、悪役としての魅力を存分に発揮している。映画の撮影秘話や役への思いについて、福士蒼汰が語ってくれた。

【写真】強いまなざしをカメラに向ける福士蒼汰

■ 「ここまでやらなきゃカイジ(藤原竜也)に負ける」と思いながら演じていた

――高倉はカイジと対峙する悪役として登場しますが、福士さんは高倉という役をどのように捉えて演じられたのでしょうか?

福士蒼汰】 高倉は自分がしていることが正義だと思っていて、彼なりに信念を貫いているのだと感じました。ただ、カイジの思う正義とは真逆なので、結果的に高倉は悪役として描かれています。僕自身はあまりそこを意識せず、“自分の正義をただ貫こうとしている青年”という意識で演じていました。

――劇中にあるオリジナルゲーム「ドリームジャンプ」で、人が飛び降りるシーンのライブ配信を見ながらニヤリと笑うシーンがありました。

福士蒼汰カイジの世界は普通の尺度では測れない人間ばかりなので(笑)、カイジ含めて全員。おそらく高倉はゲーム感覚で楽しんでいるのではないかと。少し子供っぽさも感じさせる一コマです。自分が生きている世界とは別のところで起きている出来事というか、現実と切り離した感覚であの配信を見ているのだと思います。それを表現したくてニヤリとしてみました(笑)。

――藤原さんと共演するのが夢だったそうですが、本作のお話をおただいた時の心境をお聞かせいただけますか。

福士蒼汰】 まさか「カイジ」でご一緒できるとは思ってなかったのでとても嬉しかったです。それはもう二つ返事で“やらせていただきます!”と(笑)。藤原さんがどんな風に「カイジ」の現場作りをされているのか、そして僕はそこにどんな風にいたらいいのかをすごく考えましたし、思い切り藤原さんにぶつかっていくことができたらいいなと撮影を楽しみにしていました。

――現場での藤原さんはいかがでしたか?

福士蒼汰】普通は本番に向けて徐々にテンションを上げていったりするのですが、藤原さんは最初の段取りの段階のテンションが一番高く、もの凄い勢いでやられていて、「逆に徐々に抑えてるんだ」と驚きました(笑)。前作・前々作があったので、最初から「ここまでやらなきゃカイジに負ける」と思いながら演じていましたが、藤原さんが“お芝居の振り幅”を見せてくださったおかげで高倉をどのぐらいのテンションで演じたらいいのかが掴めて、やりやすい環境でできました。

――競技場のグラウンドでカイジと高倉が対峙するシーンはとても見応えがありました。

福士蒼汰】 最初はあそこまで激しいシーンではなかったんですが、監督が“胸ぐらを掴んで押し倒すぐらいまでやって欲しい”とおっしゃったんです。なので、そこに一番のピークを持っていこうと決めたのを覚えています。実際にスタジアムをお借りして撮ったので、声の反響がもの凄くて。自然と感情も鼓舞されて、ああいったお芝居に繋がったのだと思います。対峙するというシーンがあったおかげで、仲間という役では感じられなかったであろう藤原さんの魅力を感じることができ、自分が思った以上の収穫がありました。

■ 若者やさまざまな世代に向けたメッセージが感じられる映画に

――本作には弱者を容赦なく切り捨てる描写もありますが、同時に人を信じることの大切さも描かれています。福士さんは本作をご覧になってどのようなことを感じられましたか?

福士蒼汰】 前2作は香川照之さん、伊勢谷友介さんといった大人のメインキャストの方々が演じるキャラクターとカイジが対峙していましたが、本作は僕や新田真剣佑くん、関水渚さんといった年下のキャストがたくさん出ているので、そこがすごく面白いなと思いました。カイジは本作で若者たちと争うのではなく、彼らを諭したり大事なことを教えたりします。そういったカイジの変化を原作者の福本(伸行)先生は意識して書かれたのではないかと。カイジのような人がみんなから求められているというのも興味深いですよね。

――若者に希望を与えたりと、さまざまな世代の方に届く作品ですよね。

福士蒼汰】 そうですね。10代、20代の方たちは僕や新田君演じる廣瀬、関水さん演じる桐野に共感してくれるかもしれないですし、30代、40代の方はカイジが気持ちを代弁してくれたと感じるかもしれない。50代、60代の方も、吉田鋼太郎さん演じる黒崎の言葉に「なるほど」と納得するかもしれません。いろんな世代に向けたメッセージが感じられる映画になったと思います。

――新田さんとご一緒されてみて、いかがでしたか?

福士蒼汰】 彼と一緒のシーンはほとんどなかったのですが、撮影の後、24時近かったにも関わらず“今からご飯行きましょうよ!”と新田君が誘ってくれたのを覚えています。でも、翌日も撮影があったので丁重にお断りしました(笑)。

――最近は福士さんより下の世代の俳優さんと共演される機会も多いと思いますが、彼らに対してどんなことを感じてらっしゃいますか?

福士蒼汰】 最近ですと新田君や志尊淳くん、横浜流星くんと共演させていただきましたが、みんな面白いですし、ちゃんと地に足をつけて、俳優という仕事を深く理解しながら挑んでいるように思います。3つか4つくらいしか年は離れていませんが、ものすごいエネルギーを持っているなと。僕はエネルギーが弱いので余計にそう感じます(笑)。これからもいろいろな作品で共演の機会があると思うので、すごく楽しみです。

■ 常にマックスでアクセル、「“それでもいいんだ”という許しを自分に与えられた」

――作品選びに対するこだわりなどがあれば教えていただけますか。

福士蒼汰】 役柄もそうですけど、一番は作品が面白いか面白くないのかとか、自分が好きか嫌いかとか、そういう部分を大事にしています。こんなキャラクターを演じたいというのは僕自身はあまりなくて、「この作品は面白い」と思うかどうか。作品が面白ければ出てるだけで得なので(笑)。

――チャンスをつかむ準備をしておきたいとおっしゃっていましたが、いま何かされてることは?

福士蒼汰】 アクションや動くことに関して意識を持っていますし、あとは興味を持ったことを少しずつ勉強もしています。令和になって、何か革新的なものを求めている人が多くて、この5年ぐらいで日本が大きく変わる気がするし、知識の幅を広げることは意味があると思います。

――お芝居では「常に魂を100%燃やしてる感じ」にこだわっていたとのことでしたが、最後に、本作に出演されたことで何か気付いたことがあれば教えてください。

福士蒼汰】撮影期間中は常にマックスでアクセルを踏みこんで、エンジンもかかりっぱなしの状態で挑んでいたのですが、“それでもいいんだ”というある種の許しを自分に与えられたのは大きかったです。それはカイジという作品に参加できたからこそ気付けたことだと思います。

(C)福本伸行講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会(東京ウォーカー(全国版)・奥村百恵)

映画『カイジ ファイナルゲーム』と自身について語った