―[シリーズ・駅]―


 さまざまなお店や施設などで実施している誕生日特典。名称はそれぞれ異なるが、誕生日を迎えた人を対象に割引やプレゼントなどを受けられるお得なサービスだ。

 2020年1月現在、JRグループで唯一、JR四国だけが『バースデイきっぷ』という四国管内の特急を含む、3日間乗り放題の切符を9680円(普通車自由席用)、1万3240円(グリーン車用)で販売。これは誕生月にのみ購入できる切符だが、同行者3名まで同じ料金で買えるため、家族旅行や友達とのグループ旅行にも利用でき、思った以上に使い勝手がいい。

 しかも、JR四国の路線だけでなく、窪川駅~宿毛(すくも)駅、後免(ごめん)駅~奈半利(なはり)駅の土佐くろしお鉄道、海部駅~甲浦(かんのうら)駅の阿佐海岸鉄道、さらにJR四国バスの一部路線も乗り降り自由なのだ。

◆きっぷのコスパは、JRグループの中でも間違いなく上位

 昨年、筆者はプライベートでこのバースデイきっぷを使って四国のJR線乗り潰しの旅を実施。ちなみに消費税増税前だったので、料金は普通車自由席用で9500円だった。

 出発前日、飛行機で高知入りして、1日目は高知駅からスタート。JRの周遊券などのお得な切符は、出発前日までの購入が必要なものも多いが、バースデイきっぷは購入したその日からの利用が可能。駅のみどりの窓口などで買うことができるが、その際に運転免許証など身分証明書の提示が必要となる。

 この日はまず高知駅から「特急しまんと」に乗車。残念ながら曇り空だったが、車窓からの太平洋を眺めながら四万十川の近くにある窪川駅へ。同駅からは四万十川に沿って宇和島駅に向かったのだが、ここは全国でも有数の絶景路線で「しまんとグリーンライン」の愛称で呼ばれている。

 しかも、乗ったのは初代新幹線の0系にソックリな「鉄道ホビートレイン」。車内にも歴代新幹線鉄道模型ショーケースに並んで飾られており、鉄道ファンたちが写真を撮りまくっていた。

 一応、観光列車ではあるが扱いは普通列車。そのため、仮にバースデイきっぷを持ってなかったとしても特急券も指定席券も不要だ。

 窪川駅を出発したホビートレインは、四万十川に沿って北上。途中の江川崎駅での30分弱の長い停車を挟み、約2時間40分で終点の宇和島駅に到着。

◆四国は絶景駅、絶景路線が多い

 宇和島では名物の鯛めしに舌鼓。次の列車まで30分弱しかなく、急いで食べてダッシュで駅に戻るハメになったが、鯛の刺身と生卵のバランスが絶妙でわざわざ来た甲斐があった。

 その後、宇和島駅始発の「特急宇和海」に乗って伊予市駅で下車。実は、伊予市駅の隣の向井原駅~伊予大洲駅の区間は、海側と内陸側を通る2つの路線に分岐している。筆者を乗せた特急が通らなかった海側ルートを走る列車に乗るために降りたのだが、これは単に四国の路線を乗り潰すという目的だけではない。

 この海側のルートには、高台から瀬戸内海を一望できる下灘駅という絶景駅があり、ここに行きたかったのだ。だが、天候は曇りどころか雨が降り始め、楽しみにしていた絶景を拝むことはできなかった。悲しいがこればっかりは運なので仕方ない。

 結局、下灘駅で下車せずに伊予大洲駅まで行き、再び「特急宇和海」に乗って今度は松山まで向かい、この日は道後温泉で1泊。曇りや雨で景色はイマイチだったが、温泉にゆっくり浸かっていると憂鬱だった気持ちも癒される。

 2日目は松山駅から「特急しおかぜ」で瀬戸大橋手前にある香川県宇多津駅へ。ここで「特急南風」に乗り換えて高知へ。はりまや橋や坂本龍馬記念館は着いた日に観てしまったので、あくまで目的は乗り潰しのため。とはいえ、香川から徳島、高知へと険しい山々を走ると抜ける土讃(どさん)線は渓谷沿い走る箇所もあり、それを堪能するのも目当てのひとつ。景勝地として全国的に有名な大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)もこの沿線にある。

 車窓を眺めながら高知駅に着いた後は、折り返しの「特急南風」で阿波池田駅へ。ここで徳島行きの「特急剣山」に乗って徳島駅まで移動し、2日目はここで終了。

◆やはりコスパは最高だった

 最終日の3日目は、徳島駅から「特急むろと」で終点の海部駅へ。しかし、現在この特急は1日1往復のみで、それも手前の牟岐駅止まり(※乗車したのは減便になった昨年3月のダイヤ改正の直前)。

 海部駅からはわずか8.5キロの第3セクター線の阿佐海岸鉄道で終点の甲浦駅まで行ったが、同路線は今年中に線路と道路のどちらも走行可能な「デュアル・モード・ビークルDMV)」を日本で初めて導入することをすでに発表している。筆者が訪れたときはまだ普通の電車だったが、DMVは車輪付きのバス型の車両が走るのでこれはかなり貴重。詳しい導入時期はまだ未定のようだが見た目のインパクトも大きいし、乗る価値はあるはずだ。

 甲浦駅からは再び北上し、徳島駅を経由して鳴門駅に移動。名物の渦潮を見た後は徳島駅を離れ、池谷駅で「特急うずしお」に乗り換えJR四国管内で唯一本州側にある児島駅で下車して乗り潰し完了。特急が乗り放題だったこともあり、ほぼ日中の移動だけで四国のJR線を完全制覇することができた。

 調べたところ、高松~高知は特急自由席利用で片道4990円で往復分よりもバースデイきっぷのほうが安い。松山~高知は途中乗り換えが必要だが全区間特急自由席の場合、片道9390円とほぼ片道分に相当し、改めていかにお得なきっぷか理解できたはずだ。

 誕生月限定との縛りはあるが、四国内をアクティブに観て回りたい人にはうってつけ。自分や家族、友人の誕生月に合わせ、バースデイきっぷを利用した旅行を計画してみるのもいいかもしれない。<取材・文・撮影/高島昌俊>

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。現在、自腹ビジネスクラス世界一周(3周目)の旅を実践中。旅の模様は日刊SPA!にて随時配信

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特急むろと