名優ソン・ガンホ主演、ポン・ジュノが監督し、第72回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』より、セットで撮影された“半地下”や“豪邸”などの裏側が映し出されたメイキング映像が公開された。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』セットで作られた豪邸など&コンテ画像

 本作は、『殺人の追憶』『母なる証明』『グエムル ‐漢江の怪物‐』などを手掛けたポン監督の最新作。全員失業中の貧しい一家とIT企業を経営する裕福な社長一家という相反する2つの家族を軸に、貧富格差を痛烈に批判しつつ、コミカルさやサスペンス感なども交えた作品となっている。

 韓国では動員1000万人、フランスで動員160万人をそれぞれ突破し、全米でも昨年の外国映画興行収入第1位、歴代ランキングでも8位になるなど、各国で動員記録を塗り替える盛り上がりをみせている。先日発表されたゴールデン・グローブ賞では外国語映画賞受賞し、これまで世界各国で120以上の賞を受賞。第92回アカデミー賞での受賞も有力視されている。

 公開された映像は、映画『哭声/コクソン』や『バーニング 劇場版』など、日本でも人気のある作品を多く手がけている撮影監督のホン・ギョンピョと、映画『ハウスメイド』など話題作を多く手掛けるベテランプロダクション・デザイナーのイ・ハジュンのインタビュー映像やコメントを交え、主人公家族の暮らす半地下や家庭教師先の豪邸の裏側に迫ったもの。

 物語は、日の当たらない“半地下”と、高台にある“豪邸”を中心に、豪華キャストのアンサンブルで展開していく。撮影についてギョンピョは「本作は一人の登場人物についての話ではないので、全ての役者の間で本当のエネルギーが生み出され、私たちはたくさん笑いました」と、撮影は活気のあるものだったと振り返る。そして「セリフの多い人物中心の映画なので、レンズは執拗に役者の顔を映しているのです」とこだわりを明かし、「ソン・ガンホは膨大な数の映画に出演してきていますが、この映画で彼が見せた顔はまた新しいものでした」と、名優ソン・ガンホがさらに新しい表情を見せたことに驚いたと語った。

 “半地下”や“豪邸”など、撮影に使われた多くがセットで創られているという本作。デザイナーのハジュンは、「最初に私たちが思いついたコンセプトは、高い場所にあるパク家の邸宅と、低い場所に広がる半地下アパートのギテクの家族の家のコントラストでした」と、格差を立地で表現したこだわりを明かした。

 さらに「空間にリアリティを求めました。多くの時間を費やして、ソウルの再開発が予定されている古い町並みや、歴史ある集合住宅を歩き回りました。パク家の邸宅は映画の中では有名な建築家によって設計されたものという設定だったので、モダンだけれどエレガントなオープンセットを建て、家具や小物など内装にもこだわりました」と、物語の設定に沿ったよりリアリティのあるセットを創ることができたと自信をのぞかせた。

 そして、街の細部まで精密なコンテを描いて形作った半地下住宅街については、「ハエや蚊も実際に飛ばしました。地下特有のカビ臭さを出そうと意識した」と、映像では映らない“匂い”や雰囲気への強いこだわりをもって挑んだ裏側を披露した。

 交わることのない2つの家族の出会いで猛烈に加速していくストーリー展開の面白さもさることながら、さまざまなこだわりが隠れた撮影法やセットにも注目だ。

 映画『パラサイト 半地下の家族』は公開中。

映画『パラサイト 半地下の家族』撮影セットビジュアル (C) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED