ぶどう色のアーチが連なる美しい回廊。床には薄紫色のぶどうモチーフのタイルがランダムに埋め込まれています
埼玉県宮代町にある「コミュニティセンター進修館」は、数々の個性的な建築物を手がける建築家集団・象設計集団によって設計された、知る人ぞ知る隠れた名建築。家族と共によく訪れるという工房イサドの本田淳さんが、その魅力を紹介します。
象設計集団が設計した名建築。埼玉県宮代町「コミュニティセンター進修館」を訪ねる人々が行き交う活気あふれる公民館
宮代町の隣の杉戸町に暮らす本田さん。 休日は子どもたちと近隣の図書館をハシゴすることもよくあるそう。
「図書館のカードは4枚持っています(笑)。なかでも宮代町の図書館は写真集やDVDなども充実しているので、よく利用しています。図書館で本を借りた後、コミュニティセンター進修館の喫茶室でお茶を飲んでのんびりする、というのが休日の定番コース。凝ったつくりの建物で過ごすこと自体、ちょっとしたイベント感があるんですよね。遠出しなくても豊かな気持ちになれる、ここは僕にとってそんな場所なんです」。
大ホール前の光路。富士山と筑波山を結ぶ軸、という意味を込めて設計されている
東武動物公園駅から徒歩5分の場所にあるコミュニティセンター進修館は、昭和54年に開館。地域活動の拠点として、発表会やサークル活動、会議などに幅広く利用されています。
取材当日はちょうど文化祭の準備中で喫茶室の利用は叶わなかったのですが、 たくさんの人々が行き交い、活気に満ちていました。また近年は、コスプレイヤーたちの撮影場所としても大人気なのだとか。
気になる!ぶどうモチーフ3選
ガラス玉を埋め込んであるドアの取手、鮮やかな薄紫色のタイル、テーブルの天板など、建物のあちこちで見かける、ぶどうをモチーフにしたディテールはどれも凝ったつくりです。
すりばち状の中庭にはぶどう棚があり、季節になるとたわわに実がなるそう。2000年に行われた補修で、北側の外壁もぶどう色に塗り替えられました。
象設計集団による設計。何度来ても発見がある
喫茶室のテーブルと椅子。テーブルの天板にはぶどうモチーフのガラスがはめ込まれています。館内の椅子には「ロミオ」と「ジュリエット」、「いざなぎ」と「いざなみ」など、名前がつけられているそう
設計は、ユニークな建物を数多く手掛ける象設計集団。ここ進修館は同事務所の代表作のひとつでもあります。
「しっかりとしたコンセプトがあって、誠実につくられていると感じます。家具ひとつとってもすごく手が込んでいて、建築家の強い意思のようなものが伝わってきます。何度来ても、常に新しい発見が ありますね」(本田さん)
食堂は調理設備や食器類も充実。きちんと整理整頓されていて、手入れをしながら大切に使い続けられていることが分かります。「ところどころに、フランク・ロイド・ライトの影響なのかな? と感じさせるディテールがあって、興味深いです」と本田さん
レトロ、という言葉では到底表現しきれないような力強さを感じるフォント
石のように見えますが、実は木製のタイル。使い込まれることで、なんともいい色合いになっています
埼玉県南埼玉郡宮代町笠原1-1-1 telephone*0480・33・3846
※この記事は「リライフプラスvol.27」掲載時のものです。
1968 年東京都生まれ。埼玉県北葛飾郡杉戸町在住。「工房イサド」として家具や木工品を製作。無垢材のテーブルや椅子などの家具から、器やスプーンなど暮らし回りの道具、古材の額やオブジェまで幅広い。
撮影/林紘輝
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