U-23アジア選手権はグループリーグ敗退が決定 「ただただ実力不足」

 森保一監督率いるU-23日本代表は12日、タイで開催されているU-23アジア選手権のグループリーグ敗退が決定した。“背水の陣”で臨んだ第2戦シリア戦は1-2で屈辱的な敗戦。第1戦のサウジアラビア戦(1-2)に続いて2連敗となり、同大会史上初めて決勝トーナメントに進出できなかった。今大会唯一の欧州組として2試合連続で先発出場したMF食野亮太郎(ハーツ)は、苦しかった胸の内を激白した。

 背番号10を背負った食野は、ただただ自身を責め続けた。東京五輪イヤーの公式大会で2連敗を喫し、アジアの舞台でまさかのグループリーグ敗退。突き付けられた現実はあまりにも受け入れがたいものだった。試合終了後、食野は表情を曇らせたまま、必死に答えを探しているようだった。

「ただただ実力不足。チームのことを言うのは簡単だけど、自分のところでもっとマークを外せるか、個で打開できれば違ったと思う。そこを反省して、成長できると感じたのが収穫だと思う」

 敗れれば敗退が決まる崖っぷちで迎えた一戦。序盤からいきなり苦境に立たされた。前半5分、ペナルティーエリア内で相手選手に対し、DF町田浩樹(鹿島アントラーズ)が遅れて蹴ってしまい、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の判定。これによってPKを献上し、同9分に先制点を許した。

 対する日本は同30分、左サイドからカットインしてミドルシュートを放ったMF相馬勇紀(名古屋グランパス)が、相手DFに弾かれてこぼれたボールを拾って再びシュート。この強烈な一発がニアサイドを破ってゴールに吸い込まれ、1-1の同点に追いついた。後半は膠着した状況が続くなか、試合終盤にカウンターを受け、失点。2戦連続して終盤の失点で敗れ、ショッキングなグループリーグ敗退となった。

 今大会初めて10番を付け、唯一の海外組として参加した食野。ガンバ大阪・下部組織時代の同期MF堂安律PSV)や、MF久保建英(マジョルカ)、MF三好康児(アントワープ)ら五輪本番の中心となることが予想される選手は、シーズン中のため招集できず。食野もメンバー発表時からグループリーグの3試合限定で選出された。

「自分としては海外組1人で来て…」

 “唯一の海外組”――。今大会、食野に付いた枕詞は、自身へ大きな重圧を与えた。シリア戦後、何度も言葉を詰まらせながら、本音を吐露した。

「正直……自分としては海外組1人で来て『他の海外組がいなかったから』とは言われたくなかった。だから、悔しさが残った」

 感じずにはいられなかった“海外組”の重圧。今大会ではこれまで同世代を支えてきたMF中山雄太(ズウォレ)が不在で、リーダーシップをとる選手がいなかった。初戦のサウジアラビア戦では一時同点弾を挙げるなど、「海外組」としてプレーで牽引しようとした食野だったが、シリア戦では無得点。「なんとかしよう」と大会期間中はもがいていた食野も結果が出なかったことで猛省した。

「今回は(中山)雄太くんもいなくて、リーダーシップはなかったとは言わないけど、強く発信するところを自分含めてもう少しできたら、もっといい方向にいけたかもしれない。それぞれが覚悟を持って集まってきている。まとまりは必要だし、クラブと違うからコミュニケーションが合わない部分もあるけど、それを補えるだけの選手が来ていると思うので、そこは言い訳したらいけない。自分が一番大事なところで結果を残せなかったのが悔しい。苦しい時に点を取れる選手になりたいので」

 G大阪の下部組織時代は同学年に堂安がいた。“飛び級”でトップ昇格を果たした同期とは違い、食野はプロ3年目の昨年、J開幕時はG大阪U-23チームの一員としてJ3からスタートした。それでも、這い上がって半年後の昨夏には欧州移籍を実現。10月にはU-23日本代表に招集され、今大会では10番を付けた。

昨年はJ3チームの一員も1年で成長…「サッカーに対する気持ちもより密になった」

「僕はそうやって下から突き上げてきた選手なので。ジュニアユースの時から。その気持ちは海外でも忘れずに上がっていくハングリー精神を持ちたい。それをなくしたら自分ではないので。(この1年で)人との出会いもあったし、人の言うことも素直に聞けるようになったのは成長。サッカーに対する気持ちもより密になった。そういう思いで去年からやってきたので、残り半年でまた世界も変わる。あの気持ちを忘れず這いあがりたい。意地見せます」

 今大会で感じた悔しさと重圧。この思いは必ず食野を強くさせる。あと半年だが、半年もある。五輪本番では「食野がいたから」と言わせるような存在感を放って欲しい。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

U-23代表MF食野亮太郎【写真:Getty Images】