昨年9月から続くオーストラリアの森林火災は、これまでに約6万3000平方kmの土地を焼き尽くしています。
数え切れないほどの動植物が死に絶え、数百万人が煙による呼吸器疾患にかかり、すでに20人近くの死者が確認されました。
かつてない絶望的な状況を迎える中で、一筋の光が差し込んでいます。
先週月曜日、荒廃した焼け野原から草木が新たに芽を出している様子が、地元の写真家マレー・ロウ氏(71)によって撮影されました。
ロウ氏の写真はたちまち世界中に拡散され、生命の再生に人々も希望を抱いています。
生命の再生
写真が撮影されたのはニューサウスウェールズ州にあるダラグ国立公園です。
ロウ氏は地元の被害状況を調べるために出向いたところ、灰で埋め尽くされた地面から緑や赤色の草が生え始めているのを発見しました。全滅していると思われた焼野に、生命再生の兆しが見つかったのです。
イギリス・シェフィールド大学のキンバリー・シンプソン教授は、火災後の植物再生について次のように説明しています。
地球上の植物は、過去数千万年の間に幾度となく森林火災に遭ってきましたが、その中で火災後に再生する能力を発達させてきました。
その方法は、主に2通りあります。
1つは、断熱による再出芽です。
オーストラリアに生える木々の多くは、最も普遍的なユーカリも含めて、芽が分厚い樹皮の奥深くに隠れており、幹には断熱性があります。また、多くの低木や雑草は、土壌の断熱層によって守られます。
そのおかげで、中心部が火から守られ、新たな芽を生やすことができるのです。
2つ目は、耐熱性の種による再生です。
火災から生き延びた種は、十分な日光と灰が含む栄養分によって成長できます。しかし、この2つ目の方法は、今回のケースに当てはまらないでしょう。種の成長には降雨による水が不可欠ですが、同地では、火災以降、一度も雨が降っていません。
そのため、今回のケースは、焼けた樹木の中心部から再生したものでしょう。
こうした植物の生存力が地元民の希望となっている一方で、まったく安心できない事情もあります。深刻化する気温上昇が、オーストラリア各地で干ばつを引き起こしており、それが今回の森林火災の原因ともなりました。
干ばつと降雨量の減少が今後も続くならば、再生した植物もすぐに枯れてしまいます。地球は今、自然壊滅の危機に立たされているのです。
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