山のような家事、手のかかる子どものお世話で毎日バタバタ。夫は仕事で家を空けがちのため、妻がワンオペ子どもに向き合う。自分の時間など満足にとれるはずもない。

 ママたちが直面する厳しい日常に密着した映画『ママをやめてもいいですか!?』が、2020年2月に公開される。

 監督は、映画『うまれる』(2010)シリーズの豪田トモさん。「一人でも多くのママに笑顔で幸せな育児をしてもらい、一人でも多くの子供達が笑顔になるように」とのメッセージが込められている。果たしてどんな内容なのか?試写会に参加した筆者が、中身をちらっと紹介する。

◆8割が「ママをやめたいと思ったことがある」と回答
 「ウワーン!」「ギャアギャア!」静まりかえった夜の寝室に響く赤ちゃんの泣き声。ママたちは、眠い目をこすりながら赤ちゃんをあやしている。映画『ママをやめてもいいですか!?』は、そんなシーンからスタートする。

 隣で寝ているパパは、いっこうに起きる気配がない。どんなに疲れていようが、夜泣き対応はママが一手に担う。これが毎日続けば睡眠不足になり、イライラするのは無理もない。

 子育てでは往々にして思い通りにいかないことが多く、ママたちを疲れさせる。公園でちょっと目を離したすきに、子どもが大きな石をかじろうとする。自我が芽生え、何にでも反抗するイヤイヤ期の子どもを相手にすると、着替えや髪をとかすにも時間がかかる。

 映画のタイトル『ママをやめてもいいですか!?』は、一見するとショッキングな単語だ。しかしいつも育児に追われているママたちは、こんな本音を抱いている。

「ママをやめたいと思ったことは、これまで幾度となくあります」
子どもかわいいです。愛しいんです。でも、離れたいんです。めちゃくちゃですよね」

 我が子への愛情を持ちつつも、可愛いと思えなかったり、距離をおきたいと思ったりする。自分でもわからない感情に苦しむママたちの姿がある。

 映画制作側が実施した調査では、なんと約8割のママが「ママをやめたいと思ったことがある」と答えている。そのうち12%のママは「毎日そう思っている」という。

制作サイドが実施した調査では、約8割の母親が「ママをやめたいと思ったことがある」と答えている

◆「ママだからこうすべき」というプレッシャーが苦しい
 現在3人目を妊娠中の女性は、過去2回の出産で、2度の産後うつを経験。女性は当時の心境を次のように振り返る。

子どもを持つ前には、自分が子どもに対してネガティブな気持ちを抱くとは思いませんでした」

 産前には「自分の子なら可愛いに決まっている」と思っていても、満足に睡眠を取れなかったり、家事や育児で余裕がない日々を送ったりしていると、子どもに対して「可愛くない…」との思いが頭をよぎってしまうことも。産後うつはママの10人に1人がかかると言われており、最悪の場合は虐待や自殺に発展するリスクがある。

 お母さんたちをここまで苦しめる要因は何なのか。映画の撮影に協力したママたちは、

お母さんになったら自分のすべてを捧げる。それが母親。そこまでの覚悟がありますか?と問われることが重荷」
「仮免とった状態(編注:子育ての十分な訓練も受けていないのに)で家にきて、赤ちゃんの命を守るのはプレッシャー

と苦しい胸の内を明かしている。

 本当は休みたい、もっと自分の時間がほしいと思っても「自分がママである」ことを理由に頑張り続けてしまうのだ。

◆非協力的な夫にイラっ!じゃがいもを投げつけた
 子育ての当事者でありながら、家事と育児を妻に任せっきりの夫へ怒りを爆発させるママもいる。

子どもが夜泣きしているのになぜ起きないのか?」
イライラしすぎて、じゃがいもを投げた」

 こうして本心をぶつけることで、夫が家事と育児に協力的になる可能性はある。しかし、「ママなんだから、自分がしっかりしないといけない」という気持ちや、仕事をして疲れて帰宅する夫への遠慮から、「助けてほしい」の一言が伝えられないことも。こうした葛藤に悩むママは、決して少ないない。

 一方で、パパたちも家庭と仕事のバランスに悩み、葛藤している。妻に任せっきりで申し訳ないが、家計のことを考えると仕事に向き合わざるをえないというパパなりのつらさがある。

◆つらいのは、一人じゃないよ
 試写会のスクリーンを見ているうちに、涙がこぼれた。「子どもは愛しい、でも大変すぎて離れたい」との矛盾した気持ちを抱えることのつらさが痛いほどわかるからだ。

 思い出すのは、妻が産後うつになったときのこと。息子が生後3か月のころだった。妻に療養してもらいながら筆者が育児をほぼ一手になった時期があるが、時間的にも精神的にも余裕がほぼなかった。「パパをやめたい」と何度思ったかわからない。

 また子育てのため家にこもる日々が続くと、なんだか自分が社会から隔離されたかのような感覚に陥ったこともあった。

 映画『ママをやめてもいいですか!?』では、子育ての様々な悩みに直面しながらも、向き合っていこうとするママ、パパたちの姿がある。この映画を見ることで、「つらいのは自分だけではないんだな」「もっと力を抜いていいんだな」など、ちょっとでも気持ちが楽になったら良い。筆者はそう感じた。

<文/薗部雄一>

【薗部雄一】
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。