かつて電機メーカーとしてトップを走っていたパナソニックが“迷走”している。というのも2019年11月、経営陣が「不採算事業」と位置付ける半導体事業と液晶パネル事業の撤退を立て続けに表明したものの、その一方で企業の稼ぎ頭となる主力事業がいまひとつ明確でないためだ。

 それを裏付けるように10月パナソニックが発表した’19年9月中間決算の売上高は、前年同期比4.1%減の3兆8444億円、純利益は同11・2%減の1009億円と苦しい経営状態が続く。

 なぜ、パナソニックは迷走してしまったのか。まず半導体事業の撤退を決めた経緯を解説する。

「戦後日本の高度成長の波に乗り、テレビ洗濯機、エアコンなどの日本製家電は国の統計を見ても毎年10%ぐらいずつ急成長した。その家電には精巧な半導体が導入され、半導体生産も右肩上がりで伸びました」(電機メーカー関係者)

 ところが、当時のアメリカは日本の半導体の躍進に脅威を抱き、’86年に日本へ「日米半導体協定」を強要した。
「協定の中身は日本国内で生産する半導体規格を米規格に合わせる、日本市場で米半導体シェアを2割に引き上げるなど、一方的な内容でした」(同)

 結果、日本の半導体は大きく後退。規制のない後発の韓国メーカーが売り上げを伸ばしアメリカも息を吹き返す。
パナソニックは自社製のテレビビデオデッキ半導体を使うことでなんとか業績は伸びていたが、AV機器の売り上げ減少で長期低迷。’19年の売上高はピーク時の5分の1に落ち込み、さらに赤字続き。’21年度までに黒字転換が見込めないとして、今回の売却を決断したのです」(同)

 半導体とともに赤字事業の液晶パネルも撤退、苦戦の続く太陽光事業も一部売却が決まったという。
パナソニックの津賀一宏社長は11月に開いた記者会見で、半導体などの撤退にからめ、記者会見2021年までに不採算事業の撤退を宣言。また、今後は家電などの製品を売るビジネスモデルからサービスを軸としたモデルへ転換すると、“脱家電宣言”をしたのです」(経営アナリスト)

 赤字事業にピリオドを打ったパナソニックだが、経営アナリストはこう疑問視する。
「暗礁に乗りかけているとささやかれるテスラとのEV用電池事業はどうするのか」

 テスラとはイーロンマスクにより、シリコンバレーに’03年に設立された電気自動車のベンチャー企業。’10年、パナソニックは、テスラとEV用電池の共同開発をスタートさせ、’14年には、米ネバダ州に大規模電池工場「ギガ・ファクトリー」を建設。パナソニックは、その建設費として2000億円以上を投じた。
「EV車製造では世界最先端を走るテスラ。もちろん、テスラの計画が予定通りならパナソニックはEV電池事業で一気に世界トップに躍り出て、稼げる新事業を手中にする大チャンスです」(同)

 ところが、テスラの事業は何度も大きく軌道修正。’17年に生産開始されたEV車「モデル3」の当初の生産予定台数は1500台(’17年7〜9月)だったが、実際は260台。’18年にはFBI(連邦捜査局)が、「生産台数の見通しで虚偽があったのでは」と、捜査に動いたとも言われている。そのため「モデル3」は’19年7〜9月期で7万9600台と販売台数が公表されるも、いまだテスラへの信頼性は定まらない。

 しかも、肝心のEV車は、全世界の年間販売台数で、いまだ200万台未満だ。
「販売台数が伸びないのは、EV電池の航続性や充電スタンドの数が少ないのが原因です。それと、EV車両価格がガソリン車より高額なこと。だからEV車が浸透しないんです。津賀社長は’19年11月の会見で『テスラはEVの中でもっとも高い可能性がある』と擁護する。一方で、テスラが’19年、上海に新たに稼働させたEV工場の電池事業は中国・韓国企業が担うという情報が飛び交っています。どちらにせよ、パナソニックのEV電池事業に期待はできません」(同)

 赤字事業から撤退し、EV電池事業でも足踏みが続くパナソニックは、どの事業を柱にするのか。
「結局、家電です。パナソニックは’21年操業を目指し、中国・浙江省に45億円を投じて電子レンジなどの調理家電工場を新設予定。14億人の人口を抱える中国での家電販売に大きな期待を抱いているのです。’19年4月の組織改編では、新たな社内カンパニー『中国・北東アジア社』を新設したほどです。サービスを売りにするビジネスモデルを模索するパナソニックですが、やってることはちぐはぐです」(前出・関係者)

 迷走するパナソニックが復活するには、まだ時間が掛かりそうだ。