アメリカ・オレゴン州にある2つのコーヒーショップ、『ムーンライトコーヒーハウス』と『ザ・ローカルコーヒーカンパニー』。同じ町にあるそれぞれの店の距離はわずか1.6㎞しか離れておらず、商売敵といえます。

ところが実際には両店のオーナーは親しい友人同士でした。『ザ・ローカルコーヒーカンパニー』のオーナーを務めるデイヴ・マクアダムスさんと妻のティナさんは、『ムーンライトコーヒーハウス』を経営するピクシーアダムスさんの隣に住んでいるため、3人は同業者として親しくなったといいます。

2019年12月8日ピクシーさんは店のInstagramにある告知をしました。

内容は同月11日に自分の店を閉店して、『ザ・ローカルコーヒーカンパニー』で働くというお知らせです。

実はデイヴさんが末期がんのためにホスピスでケアを受けることになったのです。

このような場合、ビジネスチャンスだと思う人もいるかもしれません。しかしピクシーさんの考えは違いました。

彼女は「こういう時こそ友人を支えたい」と思い、1日だけ自分の店を閉めて、デイヴさんたちの店を無償で手伝うことにしたのです。

ピクシーさんは「この日のチップを含む売上げのすべてはデイヴさんとティナさん夫妻に渡されます。ぜひコーヒーを買いに立ち寄ってください」とソーシャルメディアで呼びかけました。

海外メディアFOX5』によると、ピクシーさんは自分が彼らの店を手伝うことによって、ティナさんに少しでも長くデイヴさんと一緒に過ごしてほしいと思ったのだそう。

実はピクシーさんは乳がんを克服した経験を持ち、病気と闘う人や支える家族の気持ちがよく分かっていたのです。

この彼女の提案をティナさんもありがたく受け入れたといいます。

こうして12月11日ピクシーさんの呼びかけによって『ザ・ローカルコーヒーカンパニー』には大勢の人たちが訪れ、イベントは大成功。

『The Washington Post』によると、ドライブスルー形式のこの店には1日中、車の列が途切れることなく続き、お客さんたちはチップ入れに次々と寄付金を入れてくれたのだとか。

その結果、この日の売り上げは過去最高となったということです。

そして年が明けた2020年1月5日、『ザ・ローカルコーヒーカンパニー』のInstagramにはデイヴさんが旅立ったという報告が投稿されました。

12月ピクシーさんが店を手伝いたいという提案をした時、デイヴさんは感激して涙を流していたといいます。

夫妻のために店を手伝った後、ピクシーさんは『The Washington Post』の取材にこう語りました。

いつだってビジネスより友情、競争より地域のつながりを大切にしたいんです。それこそが私たちのようなスモールビジネスがずっと営業し続けていくための方法なんです。

The Washington Post ーより引用(和訳)

商売をする上で同業者がいると、足を引っ張り合うこともできれば、お互いに協力し切磋琢磨し合う、よきライバルになることもできます。

ピクシーさんの優しさはきっと、天国のデイヴさんにも、妻のティナさんの心にも一生温かい思い出として残ることでしょう。


[文・構成/grape編集部]

出典
moonlightcoffeehousethelocalcoffeecoFOX5The Washington Post
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