Alan Wake』や『Quantum Break』などを手掛けた、フィンランドに拠点を置くゲーム開発会社Remedy Entertainmentによる最新作がこの『CONTROL』だ。ドラマティックなストーリーかつ超能力を駆使した豪快なアクションシーンが満載で、筆者は発売前から楽しみで仕方がなかった。どのくらい楽しみだったかというと、全難易度で周回プレイするほど『Alan Wake』の大ファンだったので、「どうしても書きたい!」と編集部に懇願してしまうほど。Remedy新作であればプレイしない訳にはいかないし、この魅力をみんなに伝えたいし……となったわけである。海外ゲームは輸入版を買って英語のままプレイすることもしているが、本作はせっかく日本語版が出るということで海外版はグッとガマン。ついに日本語版を綿密にプレイすることができた。気がつけば、権威のあるThe Game Awards 2019とGame Developers Choice Awards 2020のそれぞれでゲーム・オブ・ザ・イヤーにノミネートするほど話題になっている本作、筆者の期待にどこまで応えてくれているのか、じっくりとチェックしてみたい。

文 / mktn

◆オールデスト・ハウスに潜入するところから物語はスタート
まずはゲームの概要を説明しておこう。本作はいわゆる三人称視点のアクションシューティングアドベンチャーで、謎解き要素もあるストーリー重視のゲームだ。

主人公ジェシー・フェイデンが、アメリカ・ニューヨークの機密機関の本部ビル「オールデスト・ハウス」で起きた怪奇現象に巻き込まれるところから物語はスタートする。彼女は突如として新たな指揮官として任命され、オールデスト・ハウス内を探索し、不可解に包まれた謎を解いていく。

ジェシーは17年前に失跡した弟を探している。彼女がまだ幼いころ、機密機関の連邦捜査局(FBC)に突然弟が連れ去られてしまい、姿を消してしまった。一体何の目的で、弟は連れ去られてしまったのだろうか。ジェシーは弟を探すため、機密機関に潜入する。

建物に入って少し進むと怪しさ満載の男性の人影が……!? 恐る恐る近寄ってみると、彼は清掃員のアーティだと言う。どうやらオールデスト・ハウスの管理人らしい。一見、普通ではなさそうな感じがしたが敵ではないと認識、ひとまずホッとする。話を聞くと、「面接」という試練を与えられ、ジェシーは彼の部下という扱いをうける。アーティはこのオールデスト・ハウスの秘密を教えてれる重要人物なのだが、それはまた後の話となるのでここではとくに気にしないでおこう。

アーティとの会話が終わって通路を進んで行くと、局長室から銃声が鳴り響く。これはもう、嫌な予感しかない。中に入ると案の定、局長が血を流し倒れていた。こめかみを撃ち抜かれ、傍らに一丁の拳銃が落ちている。いったい何が起こったのか。彼は自殺を図ったのか。それとも……?

落ちている銃を拾うと突然、異空間の「アストラルボード」へと連れて行かれてしまう。この場所では、「ボード」と呼ばれる存在が支配しており、特殊な力を持ったオブジェクトを通じて訪れることができるようだ。

いまこれを読んでいる読者のみんなもそうだと思うが、ここまでの急な展開に筆者も戸惑いまくる。

謎が深まる中、異空間から戻って来た主人公ジェシーは「サービス・ウェポン」という拳銃を手にした。このサービス・ウェポンは形を自由に変えることが可能で、弾はある一定の時間が経つと自動的に補充(リロード)されるシステム。なんて万能なんだ! 彼女はこの銃を手にし、下されたミッションと共に先へと進む。

ストーリーが進むと不気味なうめき声が聞こえてきた。この戦いの舞台でもあるオールデスト・ハウスを支配した「ヒス」という敵が登場。赤く光るコントラストの人影が、美しく、そしておぞましい。ヒスの影響で空間は歪み、侵食されたエージェントたちがジェシーの前に立ちふさがる。

果たして彼女は連れ去られた弟を非現実的なオールデスト・ハウスから見つけ出せることができるのか。そして、このオールデスト・ハウスで起きている事態を解決することはできるのだろうか……!

……とまあ、序盤のゲーム展開を早足で説明したわけだが、とにかく最初から怒濤の情報量で、しかも展開が早い。筆者のように周回プレイをすれば、序盤のシーンも2周目のプレイ時には「あ、なるほど、そういうことか!」なんてわかったりもするが、最初はやっぱり戸惑うだろう。

このあたりでプレイすることをいったん止めてしまう人もいるかもしれないが、ぜひとも続けて最後までプレイしてほしい。なぜここまで世界中で話題のゲームとなったのか、最後までプレイすればわかるはず。

◆アクションシーンは爽快! 敵との戦いは駆け引きも重要なポイントに
ジェシーはストーリー進行やサイドミッションをクリアすることによって、多彩な能力(いわゆる超能力的な)を手にすることができるのだが、この能力による豪快な破壊表現がとにかく気持ちいい。「近接攻撃」はもちろん、近くの物をサイコキネシスで引き付けて敵に投げ打つ「投擲」、敵の攻撃を瞬時に交わすことのできる高速移動の「回避」、瓦礫を身に纏って攻撃を防ぐことのできる「シールド」、高所へ登ったり空中を自由に移動することが可能な「空中浮遊」などなど、もうこの気持ちよさは病みつきだ。

ただし、敵の攻撃もかなり強力なので注意が必要だ。シールドを持っていたり、空中を舞って瞬間回避するヒスも存在する。ダメージを受ければ一気に体力を奪われてしまうので、隠れながら投擲で敵に物を当て、一瞬ひるんだ隙などをみながら一気に攻撃するのがベストだろう。また、体力を弱らせた敵を洗脳し、味方につけることのできる技も覚えることが可能なので、ぜひ「洗脳」を取得して戦闘を有利に導こう。

◆カスタマイズ可能なサービス・ウェポンを育て、そして愛でる!
サービス・ウェポンは、武器フォームで自由に性能を変えることができる代物だ。ショットガンのように粉砕するタイプや、強力なチャージショットを放つ貫通タイプなどが存在する。武器のフォームによっては効果抜群な敵もいるので、いろいろと試してみよう。

武器フォームのレベルを上げれば強化スロットがアンロックされ、強化アイテムをセットすると基礎ダメージを増加させるようなこともできる。サービス・ウェポンが成長する姿は、まるで子供が育っていくかのようでもある。気がつけば可愛くて可愛くて仕方がなくなった。筆者はこの拳銃にポンちゃんと命名した。

◆独特な芸術的アートの世界に魅了される!
そして本作のさらなる見どころは、ズバ抜けたセンスで磨き上げたアートワークにあると言っていいだろう。サイコキネシスを駆使し、物体は破壊され、飛び散る瓦礫、そして舞い上がる書類など、そのエフェクトはとても幻想的だ。また、ヒスによって支配されたオールデスト・ハウス内は、万華鏡のような規則正しい空間や、コントラストで明暗を分けた独創的な世界観で包まれている。

上にある写真のシンメトリーすぎる部屋は、不気味なまでの美しさを感じさせられた。個人的に印象に残ったのは時計だらけの部屋だ。明るい室内ではあるものの、あまりにも大量の時計の数に、この先何が待ち受けているのか……とぞくりとした。恐怖と不安がドドドっと押し寄せてきたのだ。ただ時計があるだけなのにそんな気持ちになるとは!

◆物語の謎を解き明かす、キーアイテムが豊富!
本作にはマップ各所に収集物が存在する。その数は本当に膨大だ。重要な情報が書かれている資料は、文書の一部が黒塗りで消されていたりもして、そのあたりはいかにもSCP財団っぽい。SCP財団とは、「Secure(確保)」「Contain(収容)」「Protect(保護)」の頭文字を取った名称で、奇怪なオブジェクトや現象に関する投稿を集める架空組織の共同創作コンテンツのこと。詳しく説明しはじめるともう1記事必要になるので詳細な説明は避けるが、世界中の人が共同で創作しているお遊び的な極秘資料のようなもので、本作はSCP財団からインスパイアされていると感じる部分もある。

資料にはオールデスト・ハウスで異変が起きる前に、何が起きていたのか記されるものがある。それまでストーリーで不可解だったものが、そういった収集物によって少しずつ明らかになることも。解決すべき謎を追うため、資料を収集するのも楽しくなって行き、ついつい寄り道をしてしまいがちなのも本作の楽しいところだろう。

また、SCP財団と聞いてピンとくる人なら、思わずニヤリとするポイントがたくさんある。このゲームはオールデスト・ハウス内にある変貌アイテムやパワーオブジェクトを確保・収集・保護しなければならないのだが、SCP的に言うと「Keter」クラスといった、極めて危険なオブジェクトも存在している。物語を進めていると、ある有名なSCPの資料とリンクするようなミッションもあったり!? 気になる人は、ぜひ「SCP財団」で検索してみるといい。

また、『Alan Wake』をプレイしている人なら、「あっ!」と気づくであろう収集物も存在する。ファンの人はぜひ見つけてほしい。筆者はこれを見つけて飛び上がるほど興奮した。

ゲーム・オブ・ザ・イヤー候補になるのはワケがある
本作はメインストーリー以外にもサイドクエストがいくつかあったり、収集物の回収、オールデスト・ハウス内の隠された場所を探したりなどゲームクリア後も楽しめるものが用意されているので、やり込み要素は十二分。収集品などは目に留まる位置にあり、比較的回収しやすいのも嬉しいポイントだ。敵と対峙する戦闘シーンは過去のさまざまなTPSと比べて五本の指に入るほどの格好良さだと感じた。

ストーリーは固有名詞が多く、ジェシーの一人語りや仲間との会話だけで構成されているので何が起きているのか戸惑ってしまうが、その難解さがさらなる恐怖を掻き立ててくれると言ってもいいだろう。目の前の敵をやっつけてストーリーを進めていく中で、収集物を回収することにより物語や過去の謎がどんどん明らかになっていくのが少しずつ快感になってくる。

気になる点として、フロア内での階層がわかりづらく、必要なときにすぐマップ表示できるものの、いつの間にか同じ部屋をグルグルと回っていることがたまにあった。コントロールポイントを浄化すればファストトラベルにより目的の場所まで簡単に移動が可能になるので、こうした混乱も後半はなくなるのだが……。

また、難易度の選択ができないため、敵と撃ち合う場面などアクションシーンは難しいと感じる人もいるだろう。攻略ポイントは、無視できるヒスもいるのでそこはサクッと通過しつつ、能力アップやサービス・ウェポン強化でどんどん強くさせていくこと。そこを意識するだけでちょっとはラクになるはず。

アクションゲーム好き、SFサイコホラー好き、そしてRemedy Entertainmentのゲームを過去にプレイしたことあるなら、ぜひ『CONTROL』をプレイすべきだ。ゲーム・オブ・ザ・イヤーノミネートは伊達じゃない。筆者はそのストーリー展開に、鳥肌が経つほどの失望と希望を味わった。多くの人に体験してほしい。

Developed by Remedy Entertainment, Plc. Published by 505 Games. Licensed to and published in Japan by Marvelous Inc. The Remedy logo and Northlight are trademarks of Remedy Entertainment Oyj, registered in the U.S. and other countries. Control is a trademark of Remedy Entertainment Oyj. 505 Games and the 505 Games logo are trademarks of 505 Games SpA, and may be registered in the United States and other countries. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

SCP財団って!? アラン・ウェイクが出てくる? PS4『CONTROL』は物語も映像も新感覚なホラーアクションだった!は、【es】エンタメステーションへ。
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