両親を亡くし、病気の弟を支えるため一日に約30円の生活を続けていた中国の女性が栄養失調となった末にこのほど死去した。女性は昨年にメディアで大きく報じられ、中国の慈善団体が彼女のために募金を呼びかけ多額の寄付が集まっていたが、生前に女性が受け取った寄付金はほんの一部だったことが判明した。『South China Morning Post』『Global Times』などが伝えている。

貴州省の大学に通っていた当時24歳のウー・ファイエンさん(吴花燕)が病院に運ばれたのは、昨年10月のことだった。彼女は両親を亡くし、頼りにしていた祖母も他界した。たった一人の家族である弟は精神的な病気を抱えており、その治療費を賄うために奨学金で大学に通いながら2つのパートをかけ持ちし、さらに自分の生活費を切り詰めて一日約30円で生活していた。

ウーさんは朝はほとんど食べず、お昼か夕方には蒸しパン、もしくは唐辛子をかけたご飯を口にするだけの生活を5年も続けてきた。そのため彼女は体重21キロ、身長は135センチほどしかなかった。病院に運ばれる以前も体調に異変があったが、決して病院に行くことはなく「自分の治療費にお金を使いたくない」と話していたという。

しかしついにウーさんの体に限界がきてしまった。呼吸困難に陥り、搬送先の病院にそのまま入院することになったのだ。中国メディアはウーさんの成人女性とは思えない体型に衝撃を受け、こぞって彼女のことを報じた。そして多くの人が彼女を支援するために、あちこちで募金の呼びかけが行われた。

特に多額の寄付を集めたのが、中国の子供達を支援する慈善団体「中華少年児童慈善救助基金会(China Charities Aid Foundation for ChildrenCCAFC)」だった。CCAFCではウーさんの同意を得て募金を呼びかけ、最終的には100万元(約1600万円)を上回る金額が集まっていた。入院中のウーさんは当初、治療費としてCCAFCから2万元(約32万円)を受け取ったそうだ。

当時のウーさん栄養失調の他に心臓や腎臓などにも疾患があり手術が必要だったが、30キロに満たない体重を増やしてから手術をする予定だった。ところが治療の甲斐なくウーさんは今月13日、病気の弟を残したままこの世を去ってしまった。彼女が亡くなったという一報は、中国の貧富の格差を浮き彫りにすることになった。

ところがSNS上で「ウーさんの寄付金はどこへ行ったの?」という話題が持ち上がった。CCAFCでは今月14日の声明で、2万元をウーさんに渡したものの、残りの98万元(1570万円)はウーさんの心臓などの手術費用に充てるために保持したままだと明かした。

この声明に対して、SNS上では「ウーさんを利用していただけでは?」と非難の声があがった。『South China Morning Post』によると、ウーさんの身内はCCAFCが集めた募金についての詳細を知らなかったという。さらにCCAFCの元職員の女性は「団体が利益を得るためにウーさんを利用した」と話しており、次のように証言した。

「団体の創業者兼責任者は、寄付金の受け渡しをわざと遅らせて利息分を懐に入れていたのです。これはウーさんに限ったことではなく、団体はわざと危篤にある患者を選んで募金を呼びかけていたこともありました。そして患者が亡くなるのを待って、手に入れた受取利息は法律に従ってスタッフのボーナスとして支給されていたのです。」

CCAFCではこの元職員の女性の告発に応じることはなかったが、ウーさんの残りの募金については彼女の親族と話し合い、その内容を公表する予定でいるとのことだ。

ちなみに亡くなったウーさんは生前、病院で「春節(旧正月)の連休には家具をいくつか買って、弟と一緒に良い年を過ごしたい」と話していたそうだ。

画像は『South China Morning Post 2020年1月15日付「China charity fails to transfer funds raised for woman who later died of malnutrition」(Photo: Weibo)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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